経済産業省は21日、大阪府で改正消費生活用製品安全法の説明会を開催した。製品事故が起こった場合、メーカーや輸入業者に対し、同省への報告義務を課す点など、改正のポイントについて、詳しく解説された。
● 事故情報の収集や提供を義務付け
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説明会の模様
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昨年11月の第165回臨時国会において、「消費生活用製品安全法」の改正法が全会一致で成立、12月6日に公布された。現在、政令および省令の整備を行なっており、公布から6カ月以内に施行されることになる。
今回の法改正のポイントは、製品事故の再発防止を目指して、消費生活用製品に関する事故情報の収集や提供に関する措置が新たに設けられたことだ。これは、ガス機器による死亡事故が相次いだ際、メーカーの事後対応にバラつきがあったことから、製品事故についての手続きおよび報告義務などについて、詳細に規定する内容が加えられている。
主な改正のポイントは、「消費生活用製品の製造事業者または輸入事業者は、重大製品事故が生じたことを知ったときは、当該消費生活用製品の名称、事故の内容等を主務大臣(特別の場合を除き経済産業大臣を指す)に報告しなければならない」、「主務大臣は、重大製品事故の報告を受けた場合等において、当該重大製品事故に係る消費生活用製品の名称、事故の内容を公表する」、「消費生活用製品の小売事業者、修理事業者または設置工事事業者は、重大製品事故を知ったときは、当該消費生活用製品の製造事業者または輸入事業者に通知するよう努めなければならない」の3点。
端的に言うと、メーカーによる事故情報の報告義務、経産省がその情報を公表する義務、販売店や施工業者など消費者に近い立場の事業者が、事故情報を知り得たとき、メーカーおよび輸入業者に知らせる義務、ということになる。
ここで言う「消費生活用製品」とは、「主として一般消費者の生活の用に供される製品」と定義されている。つまり特定業務に使用する業務用製品ではなく、一般生活に使う製品ということだ。しかし業務用として製造された製品であっても、一般消費者がホームセンターなどで容易に購入が可能で、一般家庭でも使用できるような製品は、消費生活用製品と見なされる。
では「製品事故」とは何かというと、消費生活用製品の使用に伴って生じた事故のうち、「一般消費者の生命または身体に対する危害が発生した事故」や「消費生活用製品が減滅し、またはき損した事故であり、一般消費者の生命または身体に対する危害が発生するおそれのあるもの」のいずれかとされている。製品の欠陥によって生じた事故ではない、ということが誰の目にも明らかな事故は、この法律における製品事故には該当しない。
ただし現実には、製品の欠陥によって生じた事故であるか否かについて判断が難しい場合が多いので、以下については製品事故ではないとされる。
(1)自動的に製品事故から除外されるものとして、製品を用いて故意に人体に危害を加えた場合。例えば、包丁を使用して他人を傷つけるなど、当然のことながら包丁の使用による製品事故には該当しない。
また、製品自体は健全に機能しているが、製品外の事故が生じた場合。例えば自転車で走行中に背後から来た自動車に追突された場合などは自転車の使用による製品事故には該当しない。
(2)除外されるかどうかその都度判断が必要なものとして、例えば天ぷら鍋を自動消火装置のついていないコンロにかけたまま、その場を離れたときに発生した火災事故は、消費者の重過失と考えられるので、製品事故には該当しない。一般消費者による製品の目的外使用や重過失と考えられる場合については、本当に製品の欠陥によって生じた事故かどうかの判断を個別に行なう必要があるということだ。
なお、政令で定める「重大製品事故」とは、第四条に、「一般消費者の生命又は身体に対し、次のいずれかの危害が発生したこと」として、
(1)死亡事故。
(2)治療に要する期間が三十日以上の重傷病事故または後遺障害事故。
(3)一酸化炭素中毒事故。
(4)火災。
と定義されている。
● 経産省への報告は10日以内
さて製造事業者にとって関心の高い「事業者の事故報告義務」については、事故の事実を知り得た日から10日以内に経産省へ報告することが基本のルールとなる。
重大製品事故が生じたことを知ったときは、発生の事実を知った日から起算して10日以内に、当該消費生活用製品の名称、事故の内容等を経産省に報告しなければならない。10日以内では詳細が把握できない場合は「調査中」との記述でも構わないので、10日以内の報告を義務付けている。
事故報告の窓口は、報告の迅速性や事業者の利便性を考慮して「経産省商務流通グループ製品安全課」に集約し、効率化を図る。報告の様式は省令で定めるが、報告メディアはFAXでもWeb入力でもよく、土日祭日には関係なく受け付ける。
製品事故の報告を受けた経産省による公表は、第一ステップとして、報告を受理してから原則1週間以内に事故発生の事実を経産省のWebサイトで公表する。今年1月までの説明では、この時の公表項目は「製品一般名、事故概要、受理日、事故発生日」の4項目として、企業名や形式名等は基本的に公表しない、とされていた。しかし2月21日の大阪での説明会からは、「第一ステップでは企業名や形式名を公表しないというのはあくまでも基本であり、基本からはずれるケースも充分にあり得る」と方針変更した。つまり、第一ステップから企業名や形式名が公表される可能性があるということだ。
さらに第二ステップとして、危害の発生や拡大を防止するために必要があると認めたときは、経産省は、製造事業者または輸入事業者に対して再発防止策を求めるとともに、事業者名、機種・形式名、事故の内容、製造事業者または輸入事業者による再発防止策、消費者が再発防止のために留意すべき事項など危険の回避に必要な事項をWebサイトで公表し、記者発表を行なう。
経産省は、製造事業者または輸入事業者が重大製品事故の報告を怠ったり、虚偽の報告をした場合には、当該事業者に対して、事故情報を収集して管理し提供するために必要な社内体制を整備するよう「体制整備命令」を発動する。体制整備命令に違反した場合には、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金に処す。
同省ではこの法の改正により、製品事故についてメーカーと輸入業者の責任を明確にするとともに、事故後のワークフローを整備。被害の拡大を防ぐとともに、消費者への情報伝達をスムーズにする狙いがある。
■URL
経済産業省
http://www.meti.go.jp/
消費生活用製品安全法及び関連法令改正について
http://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/shouan/contents/kaisei.htm
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( 倉増 裕 )
2007/02/22 00:01
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