ぷーこの家電日記

第11回:2013年、秋。母が携帯デビューしました

 私は家電製品も携帯もカメラもパソコンも大好きで仕方がないのだけれど、私の両親はそこら辺にはとんと疎い。デジタルとなると拒絶反応……そんな両親60代後半。

 その根本には、貧乏だったというのもあると思う。全てに「もったいない」「必要ない」なのである。

 とは言いつつも、世の中の流れから少しずつ遅れつつ、電化の波はやってきて、我が家にも徐々には普及していくのだ。電子レンジも少し遅れてきた。ビデオデッキもかなり遅かったと思う。でもビデオが私と兄以外から使われた事があっただろうか……いやおそらくない。そんな家だ。

 私が年頃の10代後半だった頃、世はポケベルの時代。もちろん私も欲しく、「ポケベルが欲しい」と言った。そうすると父は激怒。「そんなもん、何が必要か! いらんやろーが!!!(訳:そんなもの、なんでひつようなのか? いらないだろう!!!)」である。今でもなぜそこまで怒ったのかイマイチ分からないのだけれど、おそらく「娘がよく分からないものを持って恐ろしい世界に巻き込まれるのではないだろうか」という父親の心配だったのだろう。今の「中学生になったらスマホを持たせるかどうか」の考え方に近いのかもしれない。

 自分で買っても激怒するので、バイト代でこっそり買ってずっと秘密にしてたけれど(笑)。

 時代は流れ、2003年。私もポケベルからPHSを経て携帯電話を持っていたし、もうかなり普及していたので、父の中でも「悪」では無くなったのか、番号も知っていたし、用事があれば携帯に電話をかけてくるようにはなっていた。もちろん固定電話か公衆電話から(笑)。そんなある日、ぽろろーーーんと仕事中に私にメールが届く。

 「お父さんもとうとう携帯を持ちましたー(にこっ)早速メールしまーす(メール)女子高生並に親指をくいくいっとね(ぐっど)」

 腰抜かすかと思った。お、おとーさん!!!!!

 携帯を持ったきっかけは欲しかった訳ではなく、会社携帯を付与されたってきっかけだったのだけど、それからも、ちょこちょこ面白いメールを送って来るようになった父親。だが10年経つ今も、メールアドレスは、最初にデフォルトで付与された16桁のランダム英数文字のままである(笑)

 そして遅れる事10年。2013年秋。この度、ついに母親が携帯デビューしました。家の固定電話から電話かけてきて、「お母さんね、今日携帯買いに行って来たの! 最初ね、スマホにしようかなって思ったけど、やっぱり料金見たらガラケーの方が安いんだよね。お母さんさ、そんなに使わないじゃない? だからね、ガラケーでいいかなって思って、ガラケーにすることにしたの」って、非常にテンションが高い(笑)

 母親の口から「ガラケー」って単語が聞ける日が来るとは思わなかった。これまた爆笑しながら、我が家のゆっくりしたデジタル化をひっそりと見守っている私なのです。

 ちなみに、母親が携帯を今まで持たなかったのは「必要がない」というただ1つの理由で、今回買った理由は、「だいぶ歳を取って来たので、何かあったときに誰かと連絡を取れる手段を持っておく事、そしてもう少し先ではなく、今の時点で持って使い方に慣れておくこと」という結構真面目な理由なので、「いつでもメールできるね♪」って喜びもあるものの、過ぎて行く年月と親の高齢化にやや寂しくて複雑な気分にもなるのです。

徳王 美智子