三井ホーム、手を振るとブラインドが開閉する次世代住宅

~11月より実験開始。「ダブル蓄電池」などエネルギー設備も充実
柏の葉実験住宅 次世代スマート2×4 MIDEAS(ミディアス)

 三井ホームは、手を振って家電や家具が操作できるなど、最新の環境・エネルギー技術を搭載した「柏の葉実験住宅 次世代スマート2×4 MIDEAS(ミディアス)」を、千葉県柏市の柏の葉キャンパスエリアに竣工、11月より実証実験を開始すると発表した。


“最新の環境・エネルギー技術を結集した住宅”

 MIDEASは、三井不動産グループが千葉県・柏の葉キャンパスシティにおいて推進している、環境やエネルギー問題に対応した課題解決型の街づくり「柏の葉スマートシティプロジェクト」の一環として取り組んでいるもの。同グループでは、「住宅業界初の創・蓄エネルギー設備を導入するなど、最新の環境・エネルギー技術を結集した住宅」と位置づけている。

 実験住宅は、延床面積168.50平方m(50.97坪)の2階建て。2×4工法(ツーバイフォー。木造の枠組壁工法)が持つ高断熱、高機密性と、木の家の特徴である鉄骨やコンクリートにはないCO2を蓄積する能力をベースに、今後実用化が見込まれるスマート技術を導入。それらを複合的に組みわせた住宅として、2012年11月から実証実験を開始し、その成果を、次世代スマートハウスの開発およびリフォーム事業につなげていくという。

実験住宅の1階の間取り実験住宅の2階の間取り
三井ホーム技術研究所・坂部芳平所長

 「実証実験を通じてできあがった技術から順次商品として出していくことになる」(三井ホーム技術研究所・坂部芳平所長)

 具体的には、現在、研究・開発を進めている「オリジナルパッシブ環境技術の検証」、太陽光発電、蓄電池、アシスト電源による電気エネルギーマネジメントを活用した「エネルギー・スマート技術の最適化」、柏の葉スマートシティプロジェクトにおけるエリアエネルギーマネジメントシステム(AEMS)とMIDEASとの連携接続による「柏の葉スマートシティプロジェクトへの実証実験への参画」という3点があるとする。

 MIDEASは2012年11月9日までを公開期間とし、基礎実験を2012年11月12日~2013年9月30日まで実施。その後、入居実験を2013年10月1日~2015年11月30日まで行なう。入居実験は、三井ホームで建て替えを行なう3~4組の家族を対象に行なわれるという。入居する家族の構成については限定しておらず、「様々な家族が入ることで幅広いデータを収集できるだろう」などとしている。

 なお、実験住宅の建設費用は設備を含めて約8,000万円という。

 

三井不動産グループが千葉県・柏の葉キャンパスシティにおいて推進している街づくり「柏の葉スマートシティプロジェクト」の一環として開設されるMIDEASは、柏の葉スマートシティプロジェクトにおけるエリアエネルギーマネジメントシステム(AEMS)との連携接続も行なわれる街全体のエネルギーを、テレビ画面で確認することも可能
 

XboxのKinect技術を利用して、身振り手振りでカーテンやテレビを操作

 今回の実験住宅では、“業界初”とされる取り組みがいくつかあるが、そのうちの1つに、日本マイクロソフトの家庭用ゲーム機「Xbox 360」のゲームシステム「Kinect(キネクト)」の技術を住宅に応用した点があげられる。

 Kinectの赤外線カメラとマイクによって、身振り手振りによって、カーテンの開閉や、テレビの操作や照明を操作するといったものだ。

Kinect技術を活用した、ナチュラルユーザーインターフェースKinectのセンサーはテレビの上に設置される

ナチュラルユーザーインターフェースで窓のブラインドを下げているところ
日本マイクロソフトのインタラクティブ・エンターテイメント・ビジネスデベロッパーネットワークグループ アドバンストテクノロジーグループ ソフトウェアデベロップメント エンジニアの千葉慎二氏

 日本マイクロソフトのインタラクティブ・エンターテイメント・ビジネスデベロッパーネットワークグループ アドバンストテクノロジーグループ ソフトウェアデベロップメント エンジニアの千葉慎二氏は、「三井ホームには、他社と差別化策の1つとしてKinectに注目していただいた。Kinectによって、自然な動作で、生活に必要とされる道具や、製品の操作が可能になる。人がやっていることを家が理解をして、快適な生活ができるということにもつながるだろう。マイクロソフトは、人の行動を理解したいということで技術開発をしているが、三井ホームも同じ方向で物事を考えており、その点が合致した。他の住宅メーカーからも関心が集まっており、今後は横展開も考えていきたい」とした。


テレビには数値情報とともに魚の数などで、電力使用量などを「見せる化」しているという テレビには各種メニューが表示され、タブレットなどを通じて操作するタブレットの画面の様子

 このほかにも、ディーゼル発電機や軽油燃料によるアシスト電源により、停電時でも2日間の電力供給が可能になる設備を持つほか、リチウムイオン蓄電池を複数台設置した業界初の「ダブル蓄電池」を採用している。

 さらに、IHIとの協業によって、ケーブルを必要としない「磁気共鳴技術」を使ったEV(電気自動車)のワイヤレス給電システムを採用。EVカーへの充電の際にも、金属接触部がないため感電の心配がなく、ケーブル敷設やコンセント接続の必要がないというメリットがあるという。

リチウムイオン蓄電池は2台設置。業界初の“ダブル蓄電池”となるディーゼル発電機や軽油燃料によるアシスト電源で、停電時でも2日間の電力供給が可能になる発電機(左)や、エコキュート(右)も備える屋根の上にはソーラーパネルを設置。自宅でエネルギーを創出する
EV(電気自動車)の充電がワイヤレスでできる、IHIのワイヤレス給電システムEVの電力を家庭に利用するV to Hシステムも用意されている
塀の上にも太陽光パネルを設置している太陽光発電のバワーコンディショナー

 また、室内の温熱環境を向上する技術として、ビルなどの高層建築で用いられている「ダブルスキン」(2層壁)や、センサー技術によって自動的に窓を開閉する「スマートウィンドウ」も採用。年間の電気使用量が約50%削減できるという。加えて、振動や気象、温度や湿度、照度などを計測する住宅機能モニタリングセンサーを利用することにより、耐久性低下の対策が未然にとれるとしている。

窓は高層建築で用いられているダブルスキン(2層壁)を採用センサー技術によって自動的に窓を開閉する「スマートウィンドウ」2階の寝室の様子。シースルーの太陽光発電フィルターも採用
家庭内のいたるところに通信アダプターが設置されていたどこに置いても充電が行なえる、「Qi」規格対応の机が用意されていルーフガーデンに設置されている気象観測モニター
ウォーターウォール。水を流すことで室温安定を図るというおやさい工房。部屋のなかで栽培して食べることができる
ルーフガーデンなど、生活環境にも配慮した家づくりをしているルーフガーデンの様子ルーフガーデンには自動潅水装置を設置
1階の庭では、暑いときには散水する仕組みもある地震センサーは家のなかに配置される家のあちこちにセンサーを置き、異常を早期に発見する

 三井ホーム・長谷裕専務取締役は、「東日本大震災以降、耐震性、断熱性、気密性に対する要望が高まっており、そうした要望に向けた環境住宅を商品化している。今回の実験住宅は創・蓄・省エネにおける環境技術を結集したものであり、競合他社との差別化として、一刻も早く実用化していきたい」とした。

 また、三井不動産柏の葉キャンパスシティプロジェクト推進部・河合淳也部長は、「柏の葉スマートシティプロジェクトは、環境共生都市、健康長寿都市、新産業創造都市という3つの狙いがある。2014年春には柏の葉スマートセンター(仮称)を本格稼働させる考えであり、街区全体のAEMSがスタートする。実験住宅のHEMSと、街全体のAEMSとの連動も図る初めての取り組みになる」と語った。

三井ホーム 長谷裕 専務取締役三井不動産柏の葉キャンパスシティプロジェクト推進部 河合淳也部長




(大河原 克行)

2012年9月11日 00:00