今回のCESで多く見られたのがモバイルチャージャー、つまり充電器だ。モバイル機器の増加により充電のニーズが増えたのだろう、これまでに取り上げた「パワーマット」もそのひとつだった。
しかしその中には、太陽電池や燃料電池など、いわゆる「クリーンエネルギー」を使って発電し、その電気をモバイル機器に供給するという、新しいモバイルチャージャーも数多く見られた。ここではその中から4製品を紹介しよう。
● 水で電気を発生する「HydroPak」
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燃料電池の技術を用いた「HydroPak」(右)。専用のカートリッジ(左)に水を入れることで電気が発生する
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Horizon Fuel Cell Technologiesのブースでは、水を用いて発電する「HydroPak」を公開している。今年中に発売予定で、価格は約500ドル(約4万5千円)。
HydroPakを使用するには、別売りのカートリッジに水を入れる。すると、水素が発生し、この水素と酸素を反応させ、電気を生み出す仕組みだ。つまり、燃料電池(英語でFuel Cell)の機構を採用している。電源の供給はUSB、AC電源、シガーライトの3通りで、最大50Wの電力が発生する。
カートリッジは使い切りで、1本当たりの電力量は270Wh。使用しなければいつまでも劣化をしないため、非常時の電源には向きそうだ。また水を入れた後も、容量がなくならない限り30日間使用できる。もちろん燃料電池なので、発電中にはCO2など温室効果や人体に悪影響を与えるものを発生しない。そのため、室内での使用も問題がないという。なお、カートリッジに水を入れた後、発電を一時停止したり、再び発電を再開する回数は、合計で10回に限られている。
サイズが本体が300×130×260mm(幅×奥行き×高さ)、カートリッジは235×10(高さ×直径)。サイズが大きめなので、持ち運びにはあまり向かないかもしれない。
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HydroPakの小型版「MiniPak」。HydroPakと同様、水を含んだカートリッジをセットして発電する
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そんなHydroPakの小型版として披露されたのが「MiniPak」だ。これもHydroPakと同様、専用のパックに水を入れて電気を発生するというものだが、サイズが104×25×68mm(同)、手のひらに収まるコンパクトさが特徴。出力はUSBのみで、供給量は200mA。カートリッジ1本当たりの電力量は12Wh。携帯電話や小型音楽プレーヤーの充電を想定している。
会場では「Water-Activated Power System(水で動く発電システム)」というキャッチコピーのもとに、多くの人が足を止めていた。なお、2010年には家庭でカートリッジの燃料が補給できるオプションが販売されるとあった(MiniPakのみ)。ぜひとも来年のCESにてお目にかかりたい。
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HydroPakは、USB/AC電源/シガーライターの3つのコネクタへ給電できる
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「MiniPak」にカートリッジをセットしているところ
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Horizon Fuel Cell Technologiesでは、ほかにも燃料電池で動く模型やおもちゃ、教材などを多数販売している
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写真は「BIO ENERGY KIT」。エタノールを使ってプロペラを動かせる模型だ。発売中
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ブースでは「HMX」なる自転車のパンフレットも配布された。燃料電池で電動アシスト機能を動かすものなのだろうか
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● 電池ケースを押して発電する燃料電池「24-7 Power Pack」
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電池ケースを押して発電する燃料電池「24-7 Power Pack」
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Medis Technologiesのブースでは、電池の箱をして発電する燃料電池「24-7 Power Pack」が展示されていた。発売中で、価格は29.99ドル(約2,721円)
24-7 Power Packは、本体サイズが96×67×56mm(幅×奥行き×高さ)と小型の電源。使い方は、まず本体のテープを剥がし、本体を上から強く押し込むことで、電気が発生する。あとは付属のケーブルを本体に繋ぎ、付属のコネクタを使ってモバイル機器に接続するだけで、充電ができるのだ。供給量は220mA。
しかし、なぜ押すだけで発電するのか。実は、この本体の中には燃料となる液体入りの袋がある。本体を押し込むことでこの袋に穴が開き、本体内部の電極と合わさることで電気が発生するのだ。そのため、本製品は1回の使い切りとなる。燃料電池のため、発電時には人体や地球環境に有害なものは発生しない。
製品のラインナップとしては、Power Packよりも出力を高め、1000mAの供給が可能な「24-7 XTREME Portable Charger」、緊急時用にLEDライトも同梱した「Emergency Power Kit Set Up」も取り扱われている。価格はいずれも49.99ドル(約4,535円)。
ただ単に本体を押すだけで、他に何も使わず電気が発生できるというのは素晴らしい。カートリッジと水が必要になるHydroPakよりも緊急時に役に立ちそうだ。ただし、1個で2千円、4千円という価格はさすがに高い。また、使用後に残ったケースやケーブルの処理にも困ってしまいそうだ。旅行や緊急時用に、バッグに1個だけ忍ばせておくというのが、当面の使い道になるだろう。
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使用方法は、本体に巻き付けられているテープを剥ぎ、電池のパッケージを押す。なお、写真はデモ時のもののため、テープが付いたまま押してしまっている
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後は電池に付属のケーブルをつなぎ、モバイル機器のコネクタと接続するだけで給電できる
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写真はパッケージ内の模型。箱を押し込むことで、電解液を含んだ袋に穴が開き、電極とふれあうことで電気が発生するのだ
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LEDライトを同梱した「Emergency Power Kit Set Up」も発売している
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「Emergency Power Kit Set Up」は、このようなケースに入っている。緊急時の備えとして、家にひとつ置いてあっても良いだろう
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● 風力と太陽光のダブルで充電「K2
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風力発電と太陽光発電で充電/給電する「K2 CHARGER」
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KINESIS INDUSTRIESの「K2 CHARGER」は、風力発電と太陽光発電の両方で発電するモバイルチャージャーだ。価格は99ドル(約8,982円)で、5月に発売する予定。
78×80×236mm(幅×奥行き×高さ)という縦型の本体で、上部には風力発電のためのファンが、胴体部には太陽電池が備えられている。この2つの発電装置をともに使うことで、パワフルに電力をつくり出す狙いがあるのだ。
太陽光と風に1時間さらしておくと、携帯電話なら30分の通話、iPodなら300時間の再生に対応する。また、満充電時は携帯電話を5回分、iPodは10回の充電ができるという。また、電池の残容量を示すLEDのインジケーターも備える。満充電までにかかる時間は不明。
給電はUSB経由で、供給量は1,000mA。本体内には容量3,800~4,000mAhのリチウムイオン電池を搭載する。AC電源での充電も可能だ。
防水仕様も採用しているため、自宅のベランダや縁側に置いておけば、風や太陽の光によって、いつのまにやら電気が充電できていることだろう。光が出ていない夜も、風があれば使えるというのもうれしい。
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USBなどケーブルは底面から接続する
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風力発電のためのファンは、息を吹きかけるだけで簡単に回る
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■URL
Horizon Fuel Cell Technologies
http://www.horizonfuelcell.com/
Horizon Fuel Cell Technologies(日本法人)
http://www.horizonfuelcell.jp/
Medis technologies
http://www.medistechnologies.com/
KINESIS INDUSTRIES
http://www.kinesis.com.tw/
2009 International CES レポートリンク集
http://kaden.watch.impress.co.jp/static/link/event_ces09.htm
( 本誌:正藤 慶一 )
2009/01/11 19:19
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