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【ミラノサローネ2008】
欧州キッチン家電、トレンド最前線レポート~前編

~タッチセンサー、中華鍋対応IH、エレベータ付きオーブンなど

 ミラノサローネ初日の新見本市会場は、驚くような混み方だった。唯一の地下鉄路線のホームは人だらけで、乗れずに次の電車を待つ人で溢れている。遠くから「まるで田園都市線のよう」という日本人の声が聞こえてくる。会場最寄り駅の「Rho Fiera」駅から会場の入り口までも人で溢れ、入場登録にも30分超の行列、食べるのにも30分超の行列、そして帰りの電車の切符に30分、乗るのに15分以上の行列、というほど人が溢れている。

 さて、前日レポートでもお伝えした通りミラノサローネは、家具やデザインに関するいくつかのイベントの集合体となっている。毎年行なわれる家具関連の展示のほか、サブイベントでは照明関連とキッチン関連が毎年交代で開催される。今年は、キッチン見本市の年だ。

 このキッチン見本市は、さらにシステムキッチンの提供社が3つの巨大ホールを埋め尽くして行なっている「Eurocucina(ヨーロッパのキッチン)」という見本市とキッチン家電のメーカーが出展するFTK(Future Technology for the Kitchen)という見本市の2つに分けることができる。

 ここではまずFTK会場で目立ったブースを通して、ヨーロピアンキッチンの最新トレンドを紹介しよう。


Electrolux、iPodのようにジョグダイヤルで操作するオーブンなど

 FTKで、もっとも大きなブースを構えていたのが、キッチン家電で圧倒的シェアを握るElectroluxのブースだ。

 同社ブースの目玉はいくつかる。まず1つ目は「Inspiro」と呼ばれるインテリジェントオーブン。シェフが選んだレシピにあわせ最適な温度、最適な調理時間を自動的に選んでくれる。センサーを内蔵しレシピに応じた調理設定を行なうことは、今回のFTK全般を通してのトレンドの1つだ。

 なんといっても目を引くのは「OK」と書かれたボタンを中心にしたジョグダイアル式のインターフェース。まるでiPodのような簡単な操作でレシピを選び、調理を開始できる。


「OK」ボタン+ホイールという簡単操作が魅力の「Inspiro」シリーズ
ホイールの左側がモード選択メニューで、項目を選んで「OK」ボタンを押すと、右側に詳細項目が現れるので、それを選んでもう1度「OK」ボタンを押す。最適な温度や調理時間はセンサーが自動的に割り出してくれる

 2つ目の目玉は「Full Glass」と呼ばれるオーブンのプロトタイプだ。

 同社プロダクトマーケティングディレクターのミナ・イヴァノビック氏によれば、最近、ヨーロッパのキッチンで重要なトレンドの1つがフラットサーフェース。つまり、取っ手などの出っ張りが一切なく、すべてがフラットな面で構成されたキッチンに収まっていることだ。

 白、黒、オレンジと3色のプロトタイプが用意された「Full Glass」シリーズのオーブンも、真横から眺めて一切の出っ張りがなく、切り込み型の開閉用ハンドルがあるだけ(現行プロトタイプは、切り込み部に手を入れて引っ張る形式だが、最終製品では、ハンドル部を引き出せるようにする、ということだった)。

 ちなみにこの「Full Glass」にはもう1つおもしろいギミックがある。オーブンの操作パネルは、開閉式ドアの外側に埋め込まれているが、これがオーブン本体と電波を使ってワイヤレス接続されているのだ。このためドアとオーブン本体の間には一切、配線がなく、開ききった状態でも非常にすっきりとしたデザインになっている。


フラットサーフェースが特徴のオーブン「Full Glass」 取っ手の部分が切り込みになっており、そこに手を入れて開閉する構造になっている(最終製品では、取って部分を引き出せるようになる予定) フラットな正面パネルに埋め込まれた操作系とオーブン本体はワイヤレス通信で接続されている

 Electroluxは、IH関連の調理器具もたくさん展示している。AEG-Electroluxという高級家電のシリーズには、通常の汎用クッキングヒーターに加え、中華鍋用のヒーターや鉄板焼き料利用のヒーターなども一緒にしたソリューションを展示している。

 もっとも、イヴァノビック氏によれば、イタリアは1戸当たりの電気供給量が少ないため、IH調理器具の普及は遅れているという(新首相の下、この当たりは法改正が行なわれる模様だ)。そのため同社ではガスコンロのソリューションも多数展示していた。


AEG-ElectroluxブランドのIH調理器具(コンセプト展示)。通常のヒーター(手前)に加え、中華鍋用のヒーター、鉄板焼き用のヒーターも開発中 シンクとデザインをあわせたIH調理器のプロトタイプ 多くのIH調理器具は表面が黒いグロスの表面仕上げになっているが、メッシュメタルを使って異なる質感を表した

メンテナンスのしやすさに重点を置いたガスコンロ、「FreeSpace」。十徳の部分にガスの通り道をつくることで、ガスの放出口を溝の両端に寄せ、十徳をすべて取り外すと真っ平らな面が現れる構造になっている
 特に目を引いたのは「FreeSpace」というガスコンロ。1辺29cmのガスコンロ4個が横並びになった製品だが、十徳を外すと116cm(29cm×4個)の真っ平らなスペースが現れ、ぞうきんなどをつかって簡単にクリーニングができるようになっている(ガスの放出口などがすべてスペースの両端に寄せられている)。

 これまで業務用とされてきたキッチン用品が次々と一般家庭でも利用できるようになってきているのも重要なトレンドの1つだ。

 Blast Chillerは、調理した直後の味を損なわない(そしてビタミンなどを壊さない)高速冷却をするための小型冷蔵庫だ。

 また、コカコーラと組んで、液晶テレビと一体化したコカコーラのディスペンサーも展示。この横開き式の19インチのワイド液晶テレビは、キッチン用ソリューションとして単体でも提供される予定だ。

 この他でおもしろかったのはお湯とよく冷えた冷水に加え、炭酸水まで給水できる「4Springs」と呼ばれる水道ユニットだろう。欧州では通常のミネラルウォーターに加え、炭酸水も日常的に飲まれるため生まれたコンセプトモデルだ。


調理したての料理を、味やビタミンを崩さず、そのまま急速冷凍して保存するBlastChiller。容量を小さくして冷却効果を高めている コカコーラと共同開発中のコーラディスペンサー。なんと家庭用。上には19インチの液晶テレビを内蔵。写っている女性はプロダクトマーケティングディレクターのミナ・イヴァノビック氏 お湯と冷水に加え、炭酸水もだすことができる「4Springs」。中央に温度調節用のコントロールが。そして蛇口の左右に通常水用と炭酸水用のツマミがついている

学生を対象にしたデザインコンペの受賞作品も展示されていた。2007年1位の「e-Wash」。コンパクトな洗濯機。使用水量が少なく環境負荷が低い
 Electroluxのブースでは、こうした同社の研究開発期間でつくられている次世代のキッチン家電に加え、同社が毎年行なっている学生向けのデザインコンペ「DesignLab」の2007年度の優秀作品も展示。食器洗い乾燥機と一体となったキッチンシンクや環境に配慮した新型洗濯機のモックアップなどが公開された。

 このDeisnLabについて、前出のイヴァノビック氏はこう語る。

 「過去のDesignLabの応募作品のうち、1つが、現在、同社研究開発部門で製品化が進められているが、基本的にDesignLabは製品化を狙ったコンペではない。ただ、Electroluxの先進的家電メーカーとしてのイメージを保ち、常に新しい刺激を受け続けて行こうとする表れだ」という。


2007年2位の「Pebble」。太陽電池内蔵のクッキングヒーターだ
2007年3位の「Go Fresh」。個別に分かれた部屋ごとに温度管理が可能。使わない部屋は電源を切れるので省エネになる
2007年ファイナリストの生ゴミ処理機「Circompo」

2006年第3位の卓上調理器「VESSTO」。冷媒を圧縮して熱交換し、最小限の消費エネルギーで利用できる
2007年5位の「Pure Washer」。シンクと食洗機を一体化したユニークな発想が光る

Whirlpool、タッチセンサーを採用した家電シリーズ

Whirlpool「6th Sense」シリーズのオーブンは食材の重量を検出して、適正な温度と調理時間を算出してくれる
 Electroluxに次いで、大きな存在感を放っていたのが米国資本のWhirlpoolだ。

 同社ではギャラリーと称して、電子レンジやオーブンなどのソリューションを床から隆起した台に埋め込んで展示していた。

 製品は「6th Sense(第六感)」と呼ばれる既存シリーズと、来年までに製品か予定の「emotion(情感)」というシリーズの展示を中心に行なっていた。

 6th Senseは、人間の五感を拡張する第六感をキッチン・アプライアンスの中に埋め込んでしまおう、というコンセプトの製品。例えば同シリーズの電子レンジやオーブンは、中に入れた食材の重さを判別して適度な調理時間を算出してくれる。また、食洗機では、軽く一度試し洗いをした上で、水に混じっている汚れの成分を算出。それを元に、最適な水の量を算出する。

 いずれも、同様の機能は国内メーカーの製品にも搭載されているが、その多機能さそのものの訴求ではなく、感情に訴える形でアピールしている点が特徴的だ。

 一方の「emotion」シリーズは、グロッシーな(光沢のある)黒い反射ガラスの正面パネル、タッチセンサー採用のフラットなサーフェースなどを特徴としたシリーズだ。

 Whirlpoolのラグジャリーキッチンブランド「KithcenAid」はプロの調理人をゲストに招いて、調理のフローがわかる展示を行なっていた。

 これはElectroluxの製品もそうだが、ヨーロッパのキッチンアプライアンスは、すべてほぼ同等の幅や高さの規格に収まりつつあるが、KithenAidでは、この同じ幅に電子レンジ、オーブン、そして暖かい食べ物を保温できるワームドローワーの組み合わせを積極的に提案していた。


来年からWhirlpool社のラインアップに加わるemotionシリーズ
最新のデザイントレンドを取り入れたフラットサーフェースのキッチンアプライアンス
KitchenAidは、統一サイズのコンポーネントを組み合わせたキッチンソリューションを提案。左は電子レンジ+オーブン+ワームドローワーの組み合わせ、右はエスプレッソマシン+オーブン+ワームドローワー

BSH、頭上に設置できるエレベータ式オーブンレンジ

 ドイツからはGaggenau Hausgerate、Bosch、Siemensなどのブランドを抱えるBSH Home Appliancesも出展。

 同グループの展示で一番目を引いたのはSiemensの昇降式オーブンとGaggenauのフラットサーフェースの埋め込み型冷蔵庫だ。

 昇降式オーブンは、これまでのキッチンの悩みの1つ、オーブンの取り回しの不便さを解消する製品だ。容量が大きく巨大になりがちなオーブンは通常床に置かれるが、そのため食材の出し入れにかがまなければならず使いづらいところがあった。

 これに対してSiemensのオーブンは頭上の空きエリアにオーブンを設置しておくと、ボタン1つで、オーブンの底面部分が目の前の高さに降りて来て、調理人の目の前に調理材をさらけ出す。


Siemensの新型ヒーターは壁掛け型。キッチンの高い位置に置いて、底面部分がエレベーターのようにして降りてくる
【動画】上下に動く様子(WMV形式,3.3MB)

Gaggenauのフラットサーフェースな冷蔵庫 壁面にプリントされた写真が、フラットさを強調している ElicaのElica Deep Silenceは、調理場のファンの耳障りな音を35%もカット。Elicaはこの他、照明付きのレンジフードファン(リモコン対応)なども展示していた

 一方、フラット化のトレンドをうまく体現していたのが、Gaggenauの冷蔵庫だ。

 トレントとしてフラットサーフェース型のキッチンアプライアンスを取り入れているのは各社とも同じだが、他社の製品はただ表面が平らなだけで終わっていることが多い。これに対して、こちらの製品は壁全体に描かれた写真や絵のプリントと一体化することで、フラット感を強くアピールしていた。

 FTKのパビリオンには、この他にもレンジフードファンのメーカーとして名高いElica(日本では大阪の富士工業が販売)も出展。ブラジルを代表する建築家、オスカー・ニーマイヤー氏へのオマージュという楽しげなブースでは、通常のファンよりも35%音が小さい静穏型ファンのElica Deep Silenceシリーズ(EDS3)などを展示していた。


 ほかにも、Miele(ミーレ)などの出展もあったが、こちらは後編でお届けしたい。





URL
  ミラノサローネ公式ページ
  http://www.milanosalone.jp/
  ElectroluxDesignLab
  http://www.electrolux.com/designlab/
  ミラノサローネ2008 レポートリンク集
  http://kaden.watch.impress.co.jp/static/link/event_salone.htm

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( 林 信行、編集部 )
2008/04/17 12:37

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