藤山哲人の実践! 家電ラボ
"黒モノ家電から脱却"した三菱液晶テレビ・新「REAL」は誰でも簡単に使えるのに、12月からの4K放送の受信・録画にも対応!
"黒モノ家電から脱却"した三菱液晶テレビ・新「REAL」は誰でも簡単に使えるのに、12月からの4K放送の受信・録画にも対応!
2018年9月3日 06:30
三菱電機の液晶テレビ「REAL」。モデルによってはHDD/Blu-ray Discレコーダーを内蔵し、首を振るオートターン機能がつくなど、AV機器としては異色の存在だ。
その心を三菱のエンジニアに問うと、「黒モノ家電(=AV機器)からの脱却」にあるという。
他社の最新モデルが画質と画面の大きさ、フレームの薄さでハイスペックさを売りにする中、三菱はフツウの人に普段の生活で手軽に使って欲しい「家電」のテレビを目指したという。
先に発表されたRA1000シリーズは、黒モノ家電からの脱却というコンセプトを色濃くした、三菱の考える未来パーソナルのテレビ。発売前ということもあり、京都は東向日駅近くにある三菱の工場にお邪魔して、量産前の試作機を見せてもらうことになった。
従来テレビでは不可能だった!? 「音が前から出る」自然で聞きやすいテレビ
ここで質問! みなさんの家のテレビの音はどこから出ますか? 「テレビからに決まってるだろ!」という答えが返ってくると思いますが、正確にはテレビの下や裏から聞こえてきませんか?
ブラウン管テレビの時代は、テレビの音は前から聞こえてくるのが当たり前だったのに、液晶になってから前面にスピーカーをつける場所をとれず、下や背面につけるのが当たり前になってしまった。おそらく最初は違和感を覚えたはずだけど、見ているうちに慣れちゃって、下や背面から聞こえても違和感を感じなくなってしまったはずだ。
おそらく違和感が払拭できない耳のいい人は、テレビの下に置くバースピーカーなどを別途購入しているはず。
そう、従来のテレビは下部や背面にあるスピーカーから音を出し、壁やローボードに反射した音を聞いていたのだ。テレビ周りがきれいな購入直後はそれでもOK。でも次第にホコリが積もり、テレビの周りに物が増えると、音は拡散されたり、ホコリに吸収されたりで、こもった音になる。改めて自宅のテレビの音を聞いて欲しい。モゴモゴ言ってませんか? せっかくの名作映画も、そんなモゴモゴ音で聞いていたんです!
しかし見ての通りRA1000シリーズは、スピーカーをフロントに配置。高級機がベゼル(フレーム)を薄く見せたくて試行錯誤するなか、デザインより音質を重視した設計となっている。それが三菱のREALなのだ。
先程「黒モノ家電からの脱却」がRA1000シリーズのコンセプトと説明したが、音は音でオーディオアンプ+スピーカー、映像は映像でテレビとして考えてしまう黒モノ家電界に、一石を投じたと言ってもいいだろう。
「テレビだって普通にいい音で聞きたい!」という、ごく一般のユーザーの声に応えた三菱は、まずスピーカーを見せてしまうという禁じ手で、黒モノ家電の枠を1歩踏み出たわけだ。
量販店に行くことがあれば、ぜひ音の違いを聞き比べてみて欲しい。おそらく耳さえ遠くなければ、どんな人でもスピーカーが前面についている音の良さを感じられるだろう。
時間がなければ、手元のスマホで音楽を鳴らし、スピーカーを自分に向けたときと、下や反対側に向けた音を聞けば明らかだ。
ついに登場! 12月から始まる高精細放送に対応
今年2018年12月から衛星放送のBSとCS110度で高精細4K放送が開始する。「地デジ化」のように、テレビで告知をほとんどしていないので、知っている人こそ少ないが、このRA1000シリーズは、この放送の受信だけでなく番組録画もできる。
これまで販売されていた4K/8Kのテレビは、画面自体は4K/8Kを表示できるものの、4K放送の"受信"はできない(2Kの地上デジタル放送は視聴可)。つまり12月からの高精細放送を見たい場合は、別途チューナーという装置を購入する必要がある。録画する場合は、レコーダーも対応モデルに新調しなければならないのだ。
でもRA1000シリーズなら、4K対応チューナーとHDD・Blu-ray Diskレコーダーを内蔵しているので、コンセントとアンテナをつなぐだけで、12月からの高精細4K放送が楽しめる。これまで4Kテレビは、画面自体は4Kでも、表示できる4Kコンテンツがなかったのでほどんと無意味だった(自分で撮影した写真や、4K対応ビデオで撮ったものぐらいしかなかった)が、ようやく4Kテレビの価値を発揮できるようになる。
言い換えれば、2020年の東京オリンピックの高精細放送の受信環境は、REALを買うだけで整うと言ってもいいだろう。
番組表も広く見やすく録画一発、HDDレコーダーいらずの本格録画
また一般的なテレビに搭載されている録画機能は、簡易録画機能なのでたくさんの番組を撮りためられなかったり、撮ったはいいけど行方不明なんてことがよくある。
しかしRA1000シリーズの録画機能は、別売のHDDレコーダー同等、いやそれ以上に便利で使いやすく、本格的なものになっている。まずは一番使う番組表を紹介しよう。テレビとレコーダーが一体型なので、番組表は1つ。セパレートだとそれぞれの操作があり、クセを覚えなければならないが、テレビで番組を見るのも、レコーダーの録画予約をするのも、同じ操作を同じリモコンでできるのがうれしい。
機器ごとの操作を覚える面倒がないので、メカに弱い方やお年寄りでも使いやすいはずだ。さらに便利なのが、広い範囲を見られる番組表だ。一般的なレコーダーの番組表は、通常の2K液晶にも対応する必要があるので、一度に表示できる放送局が数局だったり、番組欄に文字が入らず、選択しないと番組名が分からないこともあった。
しかし4KのREALなら、2Kテレビ4台分の表示エリアがあるので、放送局を何局も表示したり、枠内に表示できる文字数が多いので、一覧で番組名が分かったりと便利。いや、超便利。
録画予約も簡単。上部の大きな赤い四角ボタン「番組表予約」を押して、録画したい番組を選んで決定するだけ。緑ボタンを使うと毎週予約できるので、番組改変期のときにめちゃくちゃ重宝する。また15分番組など、さらに一般的な番組表では隠れてしまう番組まで表示されてビックリする。これなら深夜の15分/5分アニメなども探しやすい。
とにかく番組表が「見やすく・素早く・使いやすい」のが、RA1000シリーズだ。
さらにボタン1発で、現在放送中の裏番組を一覧で見られるのもうれしい。重い番組表を表示させることなく、ザッピング(チャンネルを次々変えること)することなく、面白い番組に切り替え可能だ。
レコーダーに撮りためた番組も、キレイに整理されて一覧が作られるので、番組探しで迷わない。特に優れているのが、番組ごとはもちろん、自分のフォルダを作ってそこに録画できる点。これは録画予約の際に、録画するフォルダを指定(新規作成)できるので、家族で使うテレビでは大活躍するはずだ。
特に12月は音楽番組が多ので、我が家では私が予約した「NHKロボットコンテスト」がどんどんリストから押し出されて、どこかに行ってしまうのが毎年の恒例。そんなお父さんにオススメしたい。
さらに4Kの番組は、通常のBlu-ray Diskには記録できないが、内蔵Blu-ray Diskレコーダーは4K対応。だから4KをそのままBlu-ray Diskに書き込んだり、通常放送レベルに変換して、Blu-ray DiskやDVDに記録することもできる。
2番組同時録画可能で、その間にテレビも見られる。核家族なら同時録画でモメることもなさそうだ。録画時間は通常の2K放送で最大2,160時間、4K高精細放送でも126時間できるので、本格的なHDDレコーダーと比べても、まったく見劣りしない性能だ。「オールインワンだから……」と、みくびらない方がいいだろう。
オールインワンの場合、内蔵ハードディスクの容量が足りなくなる心配もあるだろう。しかし、その心配も無用。テレビ本体のUSBにハードディスクを増設可能なのだ。しかもハブを使うと4台まで接続できる。
はっきり・くっきり! 映画の夜のシーンでも背景が鮮明に見えるHDR
はっきりクリアなのは音だけでなく映像も。マニア向けの高級機ほどではないにしても、価格以上の映像の美しさに驚くだろう。
その秘密のひとつが4Kという解像度。従来のテレビは、1,920×1,080の点(画素)で構成されていた。横の点の数がおよそ2千個なので、2Kと呼んでいたというわけ。RA1000シリーズの4Kは、3,840×2,160の点で構成されている。つまり40インチの4K REALの画面は、40インチの2Kのテレビ4枚分の点で構成されているというわけだ。
だから非常に小さいツブツブもはっきり見えるのが特徴。風景であれば遠くの木々の揺れる葉1枚1枚が見え、サッカーや野球なら選手の向こうに見える観客の表情まで見えるという具合だ。
キレイな秘密の2つ目は、暗い部分から明るい部分まではっきり見えること。一番よく分かるのは映画の夜のシーン。おそらく自宅の液晶テレビで見ていると、背景の暗闇に何かあるのは分かるけど、黒く潰れてよく見えないという経験をしたことがあるはず。
でもRA1000シリーズなら、暗いところから明るい部分まで、くっきり描ける「HDR」という機能を搭載。今まで黒く潰れていた背景が、立ち並ぶ木々だったのか、暗い路地の壁だったのか、もしくは海だったのかが見えるようになる。
美しさに磨きをかけるのは、画面を構成する1点1点の色調整プロセッサだ。実は放送された映像をそのままテレビに映し出すと、人間はそれほど「キレイ」と感じない。そこで各社、プロセッサと呼ばれるコンピュータを使って微妙に色調整をしている。なかでも各社が凌を削っているのが「赤」の発色。赤をやや強くすると、人はキレイと感じるからだ。
でも困ったことに全体的に赤を強くすると、肌色が赤っぽくなってしまい不自然に見え、酔っ払いのように見えてしまうことも。そこでRA1000シリーズは、赤はより赤く、肌色は肌色のままにという具合に、緻密な計算をして色を再現している。
コレばかりはなかなか文章で伝えられないので、実際に発売したら量販店の店頭で見てみるといい。注意して見るところは、黒く潰れた部分が見えるか見えないか? そして赤い部分と肌色の自然さだ。その他、高級機では真っ白と真っ黒の境目がグレーにならない、全体にグレーを表示した場合に画面全体にムラがない、などのポイントもある。これらのポイントを注意して見てみるといいだろう。
震度7でも倒れない! 三菱独自のオートターン機能
三菱独自の機能がオートターンだ。リモコンでテレビの画面を左右に20度、計40度に振れるというもの。作業中にちょっとテレビを正面に向けたくなったら、リモコンで画面を左右に振れる。また西日が画面に当るとき、寝転がってみるときなど、使うシーンはかなり多い。
この「オートターン」は一度使うと便利過ぎて、「テレビにはこの機能がマスト!」と思うほどの中毒性がある(笑)。
RA1000シリーズは58/50/40インチのモデルが用意されているが、なんと58インチまでオートターン搭載。技術屋系の方なら「三菱……無茶しやがって」というのが正直な感想だ。
大型テレビの支持部に稼動部分を作ると、グラついたり強度の問題があると思いきや、次のムービーのようにかなり激しく扱ってもまったく問題なし。
実は三菱には社内に独自の基準があり、国が定める強度の倍近くまで頑丈にしているというのだ。先日、震度6弱の地震が大阪の高槻であったが、工場は3駅しか離れていないのに、倒れたテレビは1台もなかったそうだ。しかも震度7の熊本地震のときも、前のモデルではあるが、量販店の他社製テレビが倒れてすべて破損した中、三菱のテレビだけ無傷で立っていたらしい。
オートターンの稼動部があっても強度的にはまったく問題なく、震度7の地震にも耐えうる安定性と強度を持っているのがRA1000シリーズなのだ。
音がこもらず聞き取りやすい! 新素材スピーカーで音楽も臨場感にあふれる
スピーカーを前面に配置したRA1000シリーズだが、スピーカー自体にもこだわりを持っている。40〜50歳代の方ならご存知の通り、三菱の「ダイヤトーン」スピーカーは高級スピーカーの代名詞だ。
テレビに内蔵されているスピーカーは、専用に開発した「DIATONE NCVスピーカー」というものだ。一般的なスピーカーにはコーン紙と呼ばれる紙が張ってあり、それを電磁石で震わすことで音を出す。しかしDIATONE NCVは、どう見ても紙じゃない。最近スピーカーで使われるようになった、樹脂製でもチタンやアルミ系の金属でもない。その素材は角界で話題になっているカーボンナノチューブ(炭素繊維)。これを特殊な樹脂で固めることで、コーン紙よりクリアなサウンドを実現したという。
実際に録音スタジオのような施設で聞き比べてみると、人の声が浮いたようにはっきりと聞き取れる。音楽を聞くと、静⇒騒、騒⇒静にスパッ! と切り替わり小気味いい。
また、デジタル信号処理での音声強調機能などもついており、聴力が低下している方にもニュースやトーク番組を聞き取りやすくしている。これも試聴したが、スピーカーの性能と相まって、かなりの効果だった。例えるなら、耳に手を当てると人の声がよく聞こえる、あんな感じなのだ。
小さなスピーカーは、高音を担当するスピーカーだ。「こんな小さなスピーカーだと低音が出ないのでは?」と疑問に思うはず。そこで、テレビの音質向上のためによく使われるバースピーカーとかサウンドバーと呼ばれる後付けタイプのスピーカーと聴き比べさせてもらったが、ほとんど遜色がない。
ちょっと難しい話になるのだが、イコライザ(低音高音の調整)を使うと不自然になるうえ、構造的にバスレフ(低音強調のしくみ)を組み込めないため、実際の音に倍音成分を加えて擬似的なバスブーストをしているのだという。さすがダイヤトーンのエンジニア! と感動してしまった。
スピーカーも素晴らしいRA1000シリーズは、テレビの音を無線のBluetoothで飛ばす機能に加え、スマホなどの音をBluetooth経由で受信してテレビで再生する機能もある。DIATONE NCVで聞くと、これまで小さなBluetoothスピーカーでは聞こえなかったコーラスや楽器の音が聞こえてくるだろう。
またテレビの音声を出しながら、同時にBluetoothで音声を飛ばせるので、テレビに近い人はテレビで、耳の遠い家族はBluetoothスピーカーで聞けば、みんなが笑顔でテレビに夢中になれるはずだ。
つなぐ線は2本だけ! 配線すっきり、お掃除らくらく
技術系の人にとって至福の喜び、しかし大多数の人にとっては楽しくないこと、なーんだ? それが配線だ。RA1000シリーズの配線は、アンテナの接続とコンセントの差し込みの2本だけ。
これなら機械に弱い人でも、お店で買って持ち帰りOK。そのまま自分で設置ができるのでラクチンだ。テレビが届くまでに部屋を掃除する必要もないし、自分の空いている時間に設置すればいい。
おそらくB-CASカードの差し込みに始まって、住んでいる地域の設定にチャンネルスキャン、テレビを見られる状態にセットアップするまで30分とかからないだろう。
またテレビやレコーダーの奥はホコリがたまりがち。なぜならたくさんの電線が絡まっていたり、色々な機器が排気するのでどうしてもホコリだらけになってしまう。
でもいざ、お掃除をしようとしても、電線が絡まって掃除機の先っぽが入らず。結局年末の大掃除まで手つかず、なんてことも。場合によっては、次のテレビを買い換えるまで放置のお宅もあるのでは?
でもREALなら電線が2本しかないので、お掃除もラクラク。テレビの裏とは思えないスッキリとした空間に驚くはず。ハウスダストが気になる赤ちゃんのいるご家庭などでは、RA1000シリーズを強くオススメしたい。これ以上にテレビの裏がきれいになるテレビはない!
一体型でもユニット交換で不便ナシ
オールインワンが便利なのは分かっていても、どうしても心配になっちゃうのが故障の問題。昭和の時代にあった、テレビとビデオが合体した「テレビデオ」。テレビかビデオ、どちらか壊れるとゴミになってしまったり、修理するとテレビもビデオもセンターに持っていかれてしまうという不便さがあった。
ブラウン管のテレビが液晶に変わってからは、テレビが壊れるということは少なくなったが、HDDやBlu-ray Discレコーダーには駆動部があるので壊れやすい。だからRA1000シリーズは、レコーダーをユニットとして簡単に交換できるようになっていて、すぐに修理できるようにしてある。
出張修理のその場でレコーダーユニットが交換できるのはもちろん、センター持ち込み修理になってもテレビとして使えるようになっているのだ。もし修理中に録画したいものがあれば、パソコンなどにつないでいたUSBハードディスクをテレビに接続すればいい。
オールインワンの弱点も克服したREALなら、修理に不便を感じることもないだろう。
RA1000シリーズは誰にでも優しく使える家電へと進化した
とかくAV機器と言えば、操作の難しさや配線の多さが機能の高さであり、スペックこそが至上だった。いわば、コンテンツよりテレビそのものを楽しむ趣味なのだ。
しかし三菱のRA1000シリーズは、テレビの先にあるコンテンツを楽しむ手段というポリシーが光っている。テレビの使いやすさはもちろん、レコーダーと一体化したことによる簡単さ、テレビのスピーカーだけで十分楽しめる手軽さ。とはいえ妥協を許さない画質も備え、来るべき4K高精細放送の楽しみ、ドラマやアニメなどを録画した番組を見るワクワク感を提供してくれる道具だ。
オリンピックに向けて高精細放送に備えたいという人はもちろん、地デジ化で買ったテレビがそろそろ寿命という人、操作が難しくてテレビとレコーダーを使いこなせないという人にぜひオススメしたい。