長期レビュー

三菱電機「霧ヶ峰 ムーブアイFit ZWシリーズ」 その1

~なぜ霧ヶ峰を選んだのか
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「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



三菱電機「霧ヶ峰 ムーブアイFit ZWシリーズ」

 梅雨が明ければいよいよ、今年も暑い夏がやってくる。エアコンの季節の到来だ。

 今回、長期レビューの対象として選んだのは三菱電機の「霧ヶ峰」。1回目の本稿では、今年のエアコン市場全体を概観して、なぜこの製品を選んだのか、グレード選び、設置工事にまつわるあれこれ、そしてファーストインプレッションまでをお届けしたい。

今年のトレンドはセンサー+気流をベースに「多様化」へ

 ここ数年、続いていた高付加価値化の流れもあって、12畳用で実売20万円を超える高級機は、今までになかった新しい機能を次々と搭載してきた。その筆頭となるのが、富士通ゼネラルがいち早く導入し、パナソニックが火を付けた「自動フィルター清掃機能」。2週間に1度行なわなければならないメンテナンスからユーザーを解放したこの機能は、市場から圧倒的な評価を受け、一気に他社にも広がった。今や、多少の方式の違いはあれど、高級機にはどのメーカーにも搭載される、「標準機能」になった。

 その次の技術が、「センサー」だ。エアコンを選ぶ際、比較されるのはなんといっても省エネ性能。しかし、エアコンの基幹部品の改良によるアプローチでは飽和状態に陥っており、さらなる省エネ化には、根本的に運転制御を見直す必要に迫られた。そこで、赤外線センサーなどを使用し、常時同じ強さで冷暖房するのではなく、部屋の中にいる人や、床の温度を感知して、そこだけを効率的に冷やす、暖めるという発想が重要になってきている。

 もう1つ、上位機種に必須となっている機能が「気流制御」だ。簡単に言えば、暖房時は足下に、冷房時は天井に風を送る機構だ。前述したセンサーの検知結果と組み合わせて、より精度が高く、快適な冷暖房を行なう効果がある。

 今年はこのセンサー、気流制御を踏まえつつ、パナソニックやシャープは独自のイオン機能、ダイキンは除湿/加湿機能、東芝は省エネ性能を追求、富士通ゼネラルは暖房に強い、といった具合に、各社が独自の色を加えているのが今年のラインナップの印象だ。

なぜ、霧ヶ峰か

 ではなぜ、三菱電機の霧ヶ峰を選んだのか。それは、センサー技術で他社の一歩先を行っていると判断したからだ。

 霧ヶ峰には、本体中央に赤外線センサーカメラ「ムーブアイ」を搭載している。このムーブアイはその名の通り、運転している間、常時部屋を監視しながら、冷暖房を最適化する機能である。

 「センサーで監視して冷暖房を最適化」。実はここまでであれば、他社の製品とそう差はない。いわゆる、今時のエアコンだね、という印象でしかない。霧ヶ峰を選んだのは、その「センサーで監視」のレベルが極めて高いからだ。

 まず、監視する対象が「人」だけでなく「床温度」「空間」も対象であること。たとえば、冬場の洋室はフローリングの冷えが足に来て辛いが、人と床温度の両方を検知して、すばやく足下を暖めてくれる。

 さらに空間認識では、部屋を8×94(高さ×幅)のエリアに分割し、空間を認識する。冷気や暖気が逃げやすい、ドア、窓の周辺でも快適に過ごせるよう自動制御する。窓のカーテンを閉めれば、温度変化から察知して省エネ運転に切り替えるという気の利きようだ。

 つまり、なにが言いたいかというと、同じセンサー搭載でも、監視している内容の細かさが違うのだ。そんなわけで、今時の「センサー系エアコン」の最先端を行っている霧ヶ峰をレビュー対象として選定した。

100Vか200Vか、それが問題だ

 機種が決まれば、次はバリエーションの選択だ。設置するのは12畳のLDK。従来は10畳用のエアコンを使っていたのだが、決定的な不満があった。パワー不足と、据え付けの食器棚という障害物のせいで、エアコンの風がキッチンに全く届かなかったのだ。ただでさえ夏場がつらいコンロ近辺が、まったく冷えないのが悩みだった。というわけで、適用床面積12畳以上の余裕のある機種を選ぶことにした。

 となると、12畳用か14畳用がターゲットになるが、ここで考えなければならない問題が出てくる。100Vと200V、どちらの機種を選ぶかという点だ。一般的な家庭用電源は100V。それに併せてエアコンも、12畳、メーカーによっては14畳サイズまで、100Vで動作するようになっている。ところが、これより大きい出力を望む場合、電源を200Vに変更しなければならない。霧ヶ峰の場合、12畳以下が100V、14畳以上が200Vという仕様になっている。

 ここまでは、購入前にすでに知っていた。できれば冬の暖房時にも性能の余裕がある14畳タイプを選びたいと考えていた。だが、200Vに変更する工事は、「高いだろう」「集合住宅では無理だろう」と勝手に決めつけていた。ところが量販店で相談していくうちに、こうした思い込みは間違いであることがわかった。店員さんによると、「40Aの配電盤でコンセントに20A来てれば、ちょっとした工事で200Vにできますよ」という。さっそく自宅に戻り、ブレーカーとエアコンへの配電制御スイッチを調べてみると、全体で40A、エアコンに20Aが割り振られていることがわかった。

 こうなればもう、迷う必要はない。200V化し、性能的に余裕のある14畳を選ぶしかない。こうして、「MSZ-ZW409S」を買うことに決めた。本体は179,800円、これに工事実費がかかることになった。

 もし、ネットで購入して、工事の段取りを進めるだけだったら、100Vの12畳用を買っていただろう。エアコンは設置製品。各家庭の環境によってベストな選択は常に変化する。可能なかぎり、リアル店舗に赴いて相談することをおすすめする。

工事は約2時間強。200V化の費用は約3,500円

100V電源を200V化する

 発注の翌日、霧ヶ峰はやってきた。200V化に際して必要となった費用は、配電盤の工事費1,980円と、コンセント口の交換費用1,500円。このほかに我が家の場合、室外機を2段積みにしていたこと、室内外に配管カバーを取り付けていたことなどが影響し、トータルで工事費相当分は2万円ほどになった。

 このあたりは、設置環境によって大きく差が出るところ。購入相談に店舗に行く際は、(1)配電盤、(2)今のエアコンを設置している周辺、(3)室外機周辺の3つをデジカメに収めて店舗に行けば、知識がなくとも話がスムーズに進むだろう。

 工事にかかった時間はおよそ2時間15分。作業はすべておまかせだ。

 

まずは配電盤をチェックここが40A以上であることが条件工事後、「200V」のシールが貼られている
 
我が家は室外機を2段に積んでいたので工費がかさんだ配管のカバーも付けるとプラスの料金が発生する霧ヶ峰の室外機
屋内配管200V化後のコンセント口横向きに指す


「余裕のある機種にしてよかった!!」

 さて、さっそく電源を入れる。正面パネルに表示されている現在の室温は28℃。涼しくする効果を確かめるため、設定温度を26℃にする。

これがムーブアイ風を送り出している場所と、現在運転している状態のエコ度が表示される右側には現在の体感温度を表示。表示は消すこともできる

 まず感じるのは馬力だ。馬力と言っても、「ゴオーーー」という音が鳴るわけではない。むしろ逆で今までのエアコンとは比べものにならないくらい静かなのである。まるで大排気量のクルマで高速を走るがごとく余裕を感じさせながら、およそ5分で目標温度に到達し、省エネ運転モードに切り替わった。

 いよいよ次回は、霧ヶ峰の神髄、センサーによる自動制御の効果を検証してみたい。







2009年7月8日 00:00