【PVJapan2010】
シースルーなど進化する太陽電池を見る

PVJapan2010の案内パネル

 太陽電池の技術と製品に関する展示会「PVJapan2010」が6月30日~7月2日の日程でパシフィコ横浜で開催されている。家電Watchでは出展概要を紹介しながら、太陽電池の最新動向を解説する。なお太陽電池の基礎的な事柄については「第3回国際太陽電池展(PVEXPO)レポート」に詳しく書いたので、そちらを参照されたい。

 今回のPVJapan2010で特に、出展数が多く、目立っていた太陽電池は以下の3種類だった。

 1)CIGS(およびCIS)化合物材料の薄膜系太陽電池
 2)結晶系のシースルー太陽電池モジュール
 3)一戸建て住宅用の屋根材一体型太陽電池

 それぞれのトピックスを出展事例とともに、以下に紹介する。

CIGS化合物材料の薄膜系太陽電池

 CIGS化合物材料の薄膜系太陽電池とは、銅(Cu)/インジウム(In)/ガリウム(Ga)/セレン(Se)の化合物を材料とし、その薄膜を太陽電池としたもの。薄膜系であることから、現在最も普及している結晶系のシリコン太陽電池に比べると、原理的には製造コストが低くなる。太陽光エネルギを電気エネルギに変える変換効率は結晶系のシリコン太陽電池にやや劣るものの、最近になって急速に変換効率を高めてきており、注目の太陽電池技術となっている。

ホンダソルテックが出展した阪神甲子園球場の縮小模型。バックネットおよび内野席の屋根に同社のCIGS太陽電池モジュールが搭載された

 PVJapan2010ではホンダソルテック、ドイツのQ-Cells、ソーラーフロンティア(2010年4月1日に「昭和シェルソーラー」から社名を変更)がCIGS(およびCIS)太陽電池モジュールを出品していた。

 ホンダソルテックは、出力が112W(重量12kg)の住宅用太陽電池モジュールや出力が150W(重量19kg)の産業用太陽電池モジュールなどを展示。応用事例として阪神甲子園球場の屋根を挙げており、展示ブースには同球場の縮小模型を出品するといった力の入れようだった。また試作品として3タイプのモジュールを出品していた。いずれもCIGS薄膜系太陽電池である。タイプ1は変換効率が13.4%、モジュールの外形寸法が950×750×50mm(幅×奥行き×高さ)、タイプ2は変換効率が11.7%、外形寸法が475×750×50mm(同)、タイプ3は変換効率が11.5%、外形寸法が320×750×50mm(同)となっていた。

 Q-Cellsは、出力が70W~90Wの太陽電池モジュールを出品していた。外形寸法は1,196×636×36mm(同)、重量は14.5kg。変換効率は11.8%である。展示はなかったが、出力が90W~110WのCIGS太陽電池モジュールも用意している。外形寸法は1,190×790×7.3mm(同)、重量は16.5kg、変換効率は11.7%である。

 ソーラーフロンティアはCIGS系化合物材料でもガリウムの入らない、銅(Cu)/インジウム(In)/セレン(Se)のCIS太陽電池を開発、製品化している。2011年には出力が150Wで変換効率が13.3%、2012年には出力が160Wで変換効率が14.2%のモジュールを開発する計画だとしていた。なおこの計画数値は、2010年3月に開催された展示会PVEXPOに出展していたときと変わっていない。

ホンダソルテックが展示したCIGS太陽電池モジュールの試作品。上がタイプ1、左下がタイプ2、右下がタイプ3Q-Cellsが出品したCIGS太陽電池モジュール

結晶系シースルー太陽電池モジュール

ソーラーフロンティアが出品した薄膜系シースルータイプのCIS太陽電池モジュール。変換効率は10%

 シースルータイプの太陽電池モジュールとは、太陽電池モジュールを通して背景が透けて見えるタイプの太陽電池モジュールのことだ。外光や照明光などを透過することから、オフィスビルの窓やホールの天窓、オフィス内の仕切り壁などに利用できる。

 シースルータイプが作りやすいのは薄膜系太陽電池だ。半導体材料の厚みが数μm(ミクロン:1ミクロンは1,000分の1mm)しかないので、レーザーで半導体材料を部分的に削ることで半透明の太陽電池モジュールを作れる。

 一方、結晶系太陽電池は半導体材料の厚みが200μm~300μmあるので、光を通さない。そこで太陽電池セル同士をある程度だけ離して配置し、基板を透明な強化ガラスとすることでシースルータイプにする。このような結晶系のシースルー太陽電池モジュールをカナディアン・ソーラー・ジャパンやサンテックパワージャパンなどが出品していた。

 結晶系のシースルー太陽電池モジュールは、太陽電池セルのレイアウトによって光の取り入れ方と出力が変わる。両者はトレード・オフの関係にあり、外光をより多く取り入れようとすると太陽電池セルを離す(減らす)ことになり、モジュール当たりの出力は下がる。このため結晶系のシースルータイプは、ユーザーごとのカスタム品になると出展者は説明していた。

カナディアン・ソーラー・ジャパンが出品した結晶系シースルータイプの太陽電池モジュール。半導体材料は単結晶シリコンカナディアン・ソーラー・ジャパンが出品した結晶系シースルータイプの太陽電池モジュール。裏側から見たところサンテックパワージャパンが出品した結晶系シースルータイプの太陽電池モジュール。半導体材料は単結晶シリコン

一戸建て住宅用の建材一体型太陽電池

 住宅用太陽電池は通常、一戸建て住宅の屋根に設置する。建築済みの屋根に太陽電池モジュールを載せる場合は、例えば出力が約2kWのシステムだと出力185Wの太陽電池モジュールを12枚ほど使う。このときに総重量はモジュールだけで約200kgとかなりあるので、住宅の機械的強度によっては載せられるシステムの出力が制限されることになる。

 これに対し、あらかじめ屋根の建材と一体化した太陽電池モジュールであれば、屋根の総重量がかなり軽減される。建築前の段階で建材一体型太陽電池モジュールを搭載することが決まっていれば、住宅の強度計算に太陽電池モジュールを盛り込める。このため、余裕を持って太陽電池を搭載できる。

京セラの屋根材一体型モジュール「HEYBAN(ヘイバーン)」。結晶系多結晶シリコンの太陽電池セルを使用している。出力53W品と出力42W品がある。出力53W品の外形寸法は1,528×280×29mm(同)。重量は6.5kgサンテックパワージャパンの屋根材一体型モジュール「Just Roof」。結晶系単結晶シリコンの太陽電池セルを使用している。出力は90W。外形寸法は930×903×33mm(同)。重量は10.0kg。2010年秋に発売する予定

 PVJapan2010では、こういった建材一体型の住宅用太陽電池モジュールが数多く出展されていた。屋根材と一体化したモジュールを京セラやサンテックパワージャパンなどが、瓦と一体化したモジュールをシャープやカネカなどが出品していた。

カネカの薄膜系シリコンハイブリッド太陽電池セルの構造。アモルファスシリコン層と薄膜多結晶シリコン層の多層構造である。アモルファスシリコン層が短波長側の光を吸収し、多結晶シリコン層が長波長側の光を吸収することで変換効率を高めている
シャープの瓦一体型モジュール。結晶系多結晶シリコンの太陽電池セルを使用している。出力52.5W品と出力38.0W品がある。出力52.5W品の外形寸法は1,535×280×29.7mm(同)。重量は7.8kgカネカの瓦一体型モジュール「VISOLA(ヴィソラ)」。薄膜系シリコンハイブリッドの太陽電池セルを使用している。出力は19.0W。外形寸法は1,040×348mm(同)。重量は5.3kg



(福田 昭)

2010年7月2日 12:59