家電製品ミニレビュー

シャープ「ヘルシオ炊飯器 KS-PX10A-R」

~洗米機能搭載のお料理上手な炊飯器

シャープ「ヘルシオ炊飯器 KS-PX10A-R」

 自動洗米が注目を集めたシャープの「ヘルシオ炊飯器」。シャープが本格的に高級炊飯器に参入した力作です。これまでにない自動洗米機能を搭載していることなどから、色モノ的な扱いをされることも多々ありますが、実は、その実力はなかなかのモノ。そこで、筆者が発売以来、約半年間使ってみた感想をお伝えします。

メーカー名シャープ
製品名ヘルシオ炊飯器 KS-PX10A-R
希望小売価格オープンプライス
購入場所Amazon.co.jp
購入価格41,100円

自動洗米が想像以上に活躍!

 まずは、話題の洗米機能について。ヘルシオ炊飯器のフタの内側には「回転ユニット」と呼ばれる棒が付いています。この棒で、釜内の米を攪拌することで、洗米します。この回転ユニットは、洗米工程の時だけ出てくる仕組みで、炊飯時にはフタ部分に収納されます。

 洗米機能の最大の効果は、ムラの無い洗米で白米表面の「サブアリューロン層」の削れを抑えることができ、ビタミンB1・ナイアシン・アミノ酸などの栄養素が手洗いに比べて約20%多く残ること。洗米は1回なので、炊飯時の水はかなり濁ったままですが、これが最適な状態ということです。

「回転ユニット」を出した状態。これが洗米をしてくれます
洗米前の状態。内釜に水を入れて炊飯器にセットします
自動洗米後に水を捨て、新たに炊飯用に水を入れた状態。まだかなり濁っていますが、これでOKとのこと

 この洗米機能、ネックは自分で水を入れて捨てるという半アナログなところ。内釜に米と水を入れて炊飯器にセットしたら、洗米工程をスタート。約30秒ほどの洗米工程の後、一度釜を取り出して水を捨てて、また水を入れるなどの手間がかかります。

 釜を出したりする間に洗米できるでしょ……と否定的な声も多いのは確か。筆者もご多分にもれず、最初は「手で洗う方が早いかも……」と思ったりもしました。しかし、使い続けるうちに徐々に変化がでてきました。

 筆者宅には仕事柄、炊飯器が4台あり気分により使い分けています。ヘルシオ炊飯器は昨年の10月過ぎから徐々に使い始めたのですが、だんだんと水が冷たくなるにつれ、自動洗米があるから……という理由で、ヘルシオ炊飯器に手を出す頻度が高くなったのです。筆者だけでなく、夫も好んで自動洗米を使う様に(笑) やはり冷たい水に触れずに洗米ができるのは、素晴らしいことなのです!

 また、帰宅直後で直ぐに夕飯の支度をしなくてはならない時なども、洗米をするわずかな時間ですが、それを代わりにしてくれることが意外と助かると実感。ちょっとのことですが、家電に任せられるなら使うようになるのが、面倒臭がり&合理主義の我が家にはピッタリだったようです。

白米は「極上」モードがおすすめ!

極上モードで炊いたご飯

 本業の「炊飯」についてもなかなかです。洗米機能を使うと、水がかなり白濁した状態で炊くので少々不安ですが、炊きあがったご飯は実においしく満足度の高いものでした。

 特に「極上」炊きは、こういっては失礼ですが、新規参入とは思えない炊きあがり! 甘み・旨み・歯ごたえともに、しっかりチューニングされていて、他の高級機種に負けない実力を発揮しています。一方、早炊きで炊いたご飯の方は正直イマイチ……最終チューンナップの手がここまで回らなかったのかもしれません(笑) ということで、白米を炊くのであれば、美味しく炊ける「極上」モードで炊くことをおすすめします!

回転ユニットが大活躍

 洗米機能に大活躍の回転ユニット、洗米だけでなく調理に生かせるのも魅力のひとつ。一番のヒットはお粥やリゾット。所要時間20~30分程度でできるので、白米炊飯していると夕飯に間に合わない時には頼りになります。

 特にお粥は、鍋で作るとついつい混ぜすぎてノリ状になってしまうことがあるのですが、さすが、このあたりも絶妙にプログラミングされていて、本当に見事な混ぜ加減の粥ができます。これはマシンならではの出来ばえと言えるでしょう。

ヘルシオ炊飯器で作ったおかゆ
リゾットも非常に上手に仕上げてくれます!

 そしてさらに便利なのは調理ができること。炊飯器で調理ができること自体は大して珍しくないのですが、回転ユニットでかき混ぜることができるのが、大きな差を生んでいます。それでは、調理の様子をお伝えしましょう。

大根と鶏の煮物 所要時間30分

大根と鶏肉・調味料など、材料を内釜にセットしたところ

 まずは和総菜から。大根を3cm厚くらいのイチョウ切りにし、鶏肉を一口大に切ります。(唐揚げ用にカットされている鶏肉にすれば、さらに時短!)そして、何の下ごしらえをすることも無く、これら切った材料と調味料を入れ、お料理モードの「煮物」を選んでスイッチを押すだけ。本当に簡単です。

 加熱中からとてもイイ香りがし、待つこと約30分。つやつやの大根煮ができ上がっていました。回転ユニットで混ぜていても、煮くずれしていないのがマル。しかも、混ぜているためムラ無く煮込まれ味が均一に染み込み、とてもおしいくでき上がりました。誰にでも簡単にこんな料理が作れるのは、非常に良いところだと実感します。

料理メニュー「煮物」を選択し、スタートボタンを押すと調理スタート。回転ユニットのイラストがくるくる回りだします
30分経過した状態。大根がつやつやに仕上がっています
しっかり味が染み込んでいるのに煮くずれが無く、完成度の高い仕上がり!

クリームシチュー 所要時間35分

 次は洋風メニューから、クリームシチューをお試し。市販のルーを使えば、そこそこ手軽に作れるものですが、これは、小麦粉とバターでホワイトソースから作るタイプ。鍋で作ろうとすると意外と面倒ですし、何より失敗しがちなメニューです。そんなクリームシチューも、ボタンひとつで簡単に作れます。

 ポイントは、鶏肉・玉ねぎ・ジャガイモ・ニンジンなどの食材に、小麦粉をまぶしておくこと。この小麦粉をまぶした食材を、バターと一緒に加熱することでホワイトソースができると言う訳です。なんという、時短技! 感心してしまいました。

 ということで、最初にカットした食材と小麦粉をビニール袋に入れ、よーく振ります。おいしく作るコツは、食材に満遍なく小麦粉がついていること。食材にしっかり粉が付いたことを確認したら、バター・水・白ワイン・調味料を一緒に内釜にセットし、お料理モードの「シチュー」を選択してスイッチON!

材料を全て入れたビニール袋に、上から小麦粉を入れてよーく振ります。
小麦粉は、満遍なく材料に着くようにするのがコツ。
食材を内釜にセットし、料理メニューから「シチュー」を選択し、スタートボタンを押して調理開始。

 回転ユニットが材料を適度にかき混ぜつつ加熱して、程良いトロみを出していくようです。待つこと30分。仕上がる5分前に一度お知らせ音が鳴ります。ここで、フタを開けて牛乳を投入して再び5分加熱すると完成です。牛乳を入れる段階では、まだトロトロという感じではなかったのですが、5分後フタを開けてみると、しっかりしたとろみがある、シチューが完成していました。

 食してみると、市販のルーを使った時よりおいしい本格的なシチューができ上がってしまいました。かけた手間に対して得られる美味しさをコスパに例えるなら、非常にコスパに優れた機能と言えるでしょう。

完成5分前、牛乳追加のタイミングを表示と音でお知らせ
牛乳を追加する直前は、まだ少しサラサラとしている状態
そのまま牛乳を追加し、フタをして再び5分加熱
加熱終了後、お玉でかき混ぜてでき上がり!しっかりとトロミがつき、イイ感じに仕上がっています
皿に盛り付け完成! 市販のルーで作った以上においしいシチューができ上がりました

 ちなみに、完成直前に牛乳を入れる必要があるので、まるっきり目が離せないのがイマイチ……と思うかもしれませんが、もし牛乳追加のタイミングに近くにいなくても失敗することはありません。加熱が終了していても、牛乳を入れて再度「シチュー」モードで5分程度加熱すればちゃんとでき上がります。このあたり、ガスにかけた鍋と同様、臨機応変に使いこなせば、自動調理鍋としても本当に重宝するでしょう。

調理のあとの手入れは、隅々まで十分に

 気になる調理後のお手入れについてですが、かき混ぜる工程があるため、どうしても回転ユニットは汚れ、その汚れが内ブタにも着くという状態になります。そのため、調理後は、全てのパーツを洗わざるをえません。

 そもそも、ヘルシオ炊飯器に限らず一般的な炊飯器の多くは内釜だけでなく内ブタや蒸気口などを含め、その都度洗うのが原則なので、調理をしたから……ということではないのですが、やはり脂や調味料が残ってしまうと次の炊飯に差し支えますので、洗剤などで念入りに洗うことが必要になります。

調理後の回転ユニット。トマトソースやシチューなど、食材をかき回すのでかなり付着しています。調理後はしっかり洗剤で洗っておきましょう
取り外して洗えるものは全て外し、分解して中までしっかり洗えます。内ブタ(左)・回転ユニット(右上)・蒸気口ユニット(右下)
蒸気口ユニットは内ブタの後ろにあるので、忘れないように!

 また、ニオイですが、煮ものやシチューなどを作ると、確かにニオイは残ります。しかし、回転ユニット・裏ブタ・蒸気口ユニット・内釜、全て丸洗いできるので、パッキンや回転ユニットの隙間まで、隅々までキチンと手入れをしていれば大丈夫。普通の嗅覚で気になることはないレベルなので、炊飯と調理を両用できると思いました。ただし、真剣に白米の旨みを追求する人や、嗅覚が鋭い人だと、気になることもあるでしょう。

シャープの本気が感じられる完成度

 洗米機能を搭載し、ちょっとユニークな機能だから話題を集めただけでしょ……という印象とは裏腹に、洗米だけでなく、手軽に料理がおいしくできたり、ご飯のバリエーションも広がるなど、「回転ユニット」があるからこそのメリットを存分に発揮しています。

 他社よりかなり遅れて高級炊飯器に参入した「ヘルシオ炊飯器」ですが、シャープの本気が感じられる完成度と言えるでしょう。炊飯にも調理にもとことん活用したいけど、ご飯の味にも妥協したくない! という人に、おすすめしたい一台です。

戸井田 園子