家電製品ミニレビュー

日本ゼネラル・アプライアンス「VICKS V3900」

~UVランプで水を殺菌する気化式加湿器
by 伊達 浩二

加湿器のシーズン到来

日本ゼネラル・アプライアンス「VICKS V3900」

 12月も中旬となり、寒い日が続いている。空気が乾燥し、朝、目を覚ますと、のどの奥まで乾ききっていることが多い。

 そんな空気の乾燥を抑えてくれる家電といえば、加湿器だ。今回は、日本ゼネラル・アプライアンスの「VICKS V3900」という製品を試してみたい。

 VICKS V3900は、アメリカのKAZという会社の製品だ。企画はアメリカ、製造は中国というパターンだ。

 「VICKS」というブランド名が付いているが、これはのど飴のVICKSに由来している。日本でも、のど飴や塗るタイプの風邪薬が販売されているので、ご存じの方も多いだろう。

 KAZのVICKSブランドの加湿器といえば、スチーム式の「V105C」がよく知られている。4千円を切る価格の手軽なスチーム式で、家電店だけでなく、ドラッグストアでもよく見かける。

 今回、試した「V3900」は、ちょっと系統が違っていて、気化式という仕組みになっている。価格は、V105Cよりもやや高く、1万円台前半で売られていることが多い。

 


メーカー日本ゼネラル・アプライアンス
製品名VICKS V3900
希望小売価格23,100円
購入場所Amazon.co.jp
購入価格12,034円

 

気化式の長所と短所

 加湿器には、いろいろな方式があるが、要は水を気化して、部屋の湿度を高くすることが目的だ。お湯を沸かして水蒸気を出せば“スチーム式”、超音波で細かい水滴を作れば“超音波式”、濡れた布やフィルターに風を当てて湿度の高い空気を作れば“気化式”ということになる。2つ以上の方法を組み合わせている“ハイブリッド式”というのもあるが、基本はこの3つのどれかになる。

 今回、試した「V3900」は気化式で、次のような長所がある。

 1)ヒーターを使わないので、消費電力が小さい
 2)お湯を沸かさないので、倒れたときにヤケドの心配がない
 3)お湯が沸くときの煮沸音がしない
 4)自然の気化に任せる部分が多いので、加湿しすぎることが少ない

 つまり、気化式の加湿器は省電力で、ほど良く加湿できる方式なのだ。逆に短所としては次のような綱目が挙げられる。

 1)濡れた物(布・フィルター)に当たった空気なので、出てくる風が冷たい
 2)スチーム式のように水の温度が高くないので、水が殺菌されない
 3)ファンが常に動いているので、常に一定の音がする

 つまり、水の殺菌と、ファンの音を抑えることが課題なので、そこの工夫の有無が製品の優劣を決める。

 ちなみに、最近の加湿空気清浄機でも、加湿器部分に気化式を採用している例が多い。構造が簡単で、消費電力も少ないことが理由だと思われる。

シンプルなデザインと操作

 到着したV3900の箱は、一辺が40cm弱ぐらいの立方体の形だった。重さは4kg弱ぐらいで、重くはないが、ちょっと持ちにくい形だ。

外箱は立方体に近い真四角なもの本体の後ろから吸い込んで前に吹き出す
「UVランプでタンクの水を除菌」が最大のウリ箱の上下がわかりにくく、底の側から開けてしまった

 本体は組み立て済みで、本体内にフィルターもセットされている。あとは、電源と水を用意すればすぐに使える。

青と白のツートンカラーのシンプルな配色だ本体正面。曲線が多く愛嬌のあるデザイン
本体側面。底面や側面が微妙な曲線でできていることがわかる本体背面。大きな吸気口がある。電源ケーブルは直に生えている

 本体のデザインは、丸っこい立方体で、かわいげがある。本体は、280×280×268mm(幅×奥行き×高さ)、なので、だいたい1辺が30cm弱のサイコロのような形をしている。

水タンクの上には、大きな取っ手があるので提げやすい。ヴィックスのロゴが描かれている底面から見た水タンク。本体の注水口につながるタンクキャップが長いタンクキャップを外したところ。この状態で水を入れる
タンクキャップを回す方向を示す案内図注水の様子。タンクの高さはあまりないので、浅い洗面台でも水が注ぎやすい水タンクの穴は大きいが、手が入るほどではない。洗うときは少しだけ水を入れて、強く揺するようにと取扱説明書に書かれている

 本体の上半分が水タンクで、青く透明な容器を採用し、中の水の様子が確認できるようになっている。上半分の水タンクと下半分の本体は固定されておらず、載っているだけだ。水タンクの上には大きな取っ手があるが、これを持ち上げてもタンクだけが持ち上がってしまう。本体と水タンクをしっかり固定した方が一度に持ち上げることができて使いやすいだろう。

 注水は、タンクを裏返し、フタを兼ねたダクトの部分の「タンクキャップ」を取り外して行なう。水タンクの容量は約4Lで、満容量だとかなり重い。水が大量に入るのは良いのだが、タンクキャップの開け閉めと、タンクをひっくり返さないと注水できないのは慣れが必要だ。ただし、タンクキャップがちゃんと閉まっていれば、注水口を下にしても水はこぼれないので、タンクの取っ手を持って歩くことができる。

 

水タンクを外した状態の本体十分に吸気できるように本体背面の穴は大きいフィルターは水をよく吸うように網目状になっている。水に含まれているカルキも吸うので溜まりにくいとされている
注水口。ここに水タンクのタンクキャップがはまり、水が流れるフィルターを置いた状態。水は左手前の注水口から入り、見えないLEDランプの脇を通って、フィルターの入っている溝に届く

 ユーザーが行なう操作はダイヤルが1つあるだけで、「OFF/強/中/弱」の切替になっている。この並び方は、アメリカ製の電機製品には多いが、ちょっと違和感がある。やはり弱/中/強という日本式の並び順に慣れているからだろう。

水を入れた状態水タンクが透明なので、水の表情が見えて面白い操作はダイヤルが1つだけ。オフの横は強というアメリカ式の並び

 スイッチを入れる。運転中を示すLEDライトなどはない。使い始めは、接着剤のようなニオイがするが、1時間ほどで消えた。


環境音の少ない深夜に動作音を録ってみた。強→中→弱→中→強と切り替えている

 

 風量はかなり強い。「強」では、風が強く感じられ、夏に冷風扇代わりに使えそうなほどだ。送風音も大きめで、一般家庭では、昼間は中、夜間は弱にしないとうるさく感じる。「弱」でも、空気清浄機や扇風機のような送風音が常にしている。寝室に置くと、耳ざとい人は、うるさくて眠れないかもしれない。「弱」よりも1段低い「静音」モードという設定があれば良かっただろう。

 出てくる風は、やはり冷たい。V3900では、風は本体の前面から、やや下向きに出てくる。加湿器の手前の床は、かなり冷たく感じる。

 加湿機能はそこそこあるようだ。実際に、7畳間ほどの洋室で動かしてみると、「弱」でも、湿度は36%から58%まで上がり、その後は安定して60%前後を保った。湿度が高くなりすぎないのは、気化式の良いところだ。 

 一方、気温は22.8℃から20.2℃まで下がった。本体から出てくる風を直接測ってみると、温度は18.8℃、湿度は65%を示していた。室温から2~3℃ぐらい低い温度の風が出てくるようだ。夜間に使用するときは、暖房と併用した方が良いだろう。

UVランプによる殺菌とフィルターの交換

 気化式は、その構造上、常温の水と濡れたフィルターが必要となる。放っておけば、カビや雑菌が繁殖しやすい状況だ。

 V3900では、UV(紫外線)ランプで、水を照らすことで殺菌を行なっている。UVライトは直視できると目に害があるため、本体の水路の途中に設けられていて見えない。寿命は、約2,000時間または約2年とされており、寿命が来ると、操作ダイヤルの所にLEDライトが点灯する。交換用のランプは2,625円だ。

 また、フィルターの交換の目安は、2~4カ月。1シーズンに1回交換するかしないかの計算になる。交換用のフィルターは3個入りで2,100円だが、通販でも売っているところが少ない。Amazonのマーケットプレイスで、送料込み2,500円で販売されているものしか見つけられなかった。フィルターはカルキを吸収するためのもので、比較的頻繁に交換するのものだ。購入時には消耗品代として考えに入れておいた方が良い。

好みの分かれそうな存在

 しばらく使ってみた感想としては、好みが分かれそうな製品だと思われた。

 気に入っているのはシンプルなこと。まず、よけいなLEDライトがなくて好ましい。たとえば、この製品では電源が入っていてもLEDは点灯しない。また、殺菌用のUVランプは、寿命が来たときにLEDが点灯するだけで、普段は何も表示されない。

 たとえば、国内メーカーならば、UVライトが点灯している時に「殺菌中」というLEDを点灯させるだろう。つまり、異常があったときに始めて警告を出すか、常に働いていますよと告知するかという文化の違いを感じる。私は、必要なことだけ警告してくれれば良いと思うが、これでは情報が少なくてさみしいと感じるという人もいるだろう。

  操作ダイヤルもシンプルで、すぐに慣れた。「弱」に設定することが多いので、ダイヤルを一杯に回すだけだからだ。

 また、気化式の特性である、ほどの良い加湿も気に入っている。部屋の湿度はかなり安定しており、一部のスチーム式加湿器のように、ひどい結露を招くようなことはない。

 消費電力については、最大でも33Wとされている。これは、同じVICKSブランドのスチーム式加湿器が300W以上消費するのに比べるとずっと少ない。消費電力が低いので、安心して長時間使える。

 逆に不満を感じたのが、動作音。やはり大きいと感じる。夜間は弱に固定しているし、昼間でも強に設定することはない。強にするとテレビが聞き取りにくくなるほどうるさいのだ。

 また、気化式なのでしょうがないのだが、冷たい風が出てくると分かっているので、寒い日にスイッチを入れるのには勇気がいる。とくに、本体の上方向にではなく、前方向に風が出てくるのでなおさらだ。まず、部屋を暖めて、ある程度暖まってからスイッチを入れることが多い。

 操作面で言うと、水の追加時がちょっと面倒くさい。大きなタンクをひっくり返すのに力がいるのだ。水タンクの上部にキャップがあって、ヤカンなどで水が注げると楽なのにと思ってしまう。

 とはいえ、本体に水を追加する間隔が長いというメリットも見逃せない。水タンクの容量は4Lだが、「弱」で使っていると、夜の間、ずっと動かしていても2~3日に1回の注水で足りる。定格加湿能力は、「強/中/弱」で、300/230/150(単位はmL/h)とされているので、満水時の容量を割り算すると、13/17/26時間持つことになる。体感的にも、この数字は正しいと感じられた。

 推薦できる使い方としては、リビングで部屋の隅に置いておくという使い方を挙げたい。ただ、風が横方向に出てくるので、床に置きにくい。棚などに置いた方が良いかもしれない。かわいげのあるデザインなので、目につく場所に置いても良いだろう。

 対応する部屋の広さは、木造で5畳(8平方m)、プレハブ洋室で8畳(14平方m)とされているが、マンションでは密閉が良いので、11畳程度のリビングでも問題なく使えた。かえって、狭い部屋だと、送風音が気になることと、冷風が体に当たりやすいことで置き場所に困るかもしれない。

 お子さんやペットが居て、スチーム式を避けたいという人や、気化式を使いたいけれど雑菌が心配という人には、お勧めできる製品だ。






2011年12月13日 00:00