衛生的に均一に潤す加湿器の開発に成功したダイソン

「Dyson Hygienic Mist™ 加湿器 AM10」(以下「AM10」)は、同社“第四のジャンル”として、2014年10月に発表された加湿器である。実は本社のあるイギリスでは、加湿器というのはあまり馴染みのない家電だ。にも関わらず、同社が発売にまで踏み切った理由は、現状、さまざまな国で使われている加湿器は問題を抱えており、それを解決するための技術を、ダイソンが有していたからだ。

加湿器の中には、衛生面や加湿の均一さの面で問題があるものもある。例えば、加湿器内部の水やスポンジ等がバクテリアの温床になっていることもある。

加湿器の中にはバクテリアを放出するものや、スポンジフィルターがバクテリアの温床になっているものもある

貯めている水がバクテリアに汚染されるとどうなるか? 加湿器のタイプによっては、バクテリアを含んだままミストとして分解されて、噴霧されることで、バクテリアが空気中へとばらまかれることもある。それを人が知らず知らずに吸引することで、健康に害をもたらす可能性も出てくる。

一般的に加湿器というのは、冬場の乾燥した季節に使うことが多い。その主な使用目的は、細菌やウイルスへの感染を、湿度を上げることで防ぐこと。つまり、加湿器は、本来人の健康を守るために使われているものである。だが、加湿器自体がバクテリアの温床になっていたとしたら? そんな問題を解決するために、「AM10」は開発された。

AM10は水を一滴残らずUV-Cライト直接照射し、99.9%除菌されたミストを放出

「ウルトラバイオレット・クレンズテクノロジー」で衛生的に。

既存の加湿器が抱える問題を理解するために、まずは4つの加湿方式である気化式、スチーム式、超音波式、ハイブリッド式それぞれのメリット・デメリットについて説明したい。

気化式スチーム式
フィルターに風を当てることで、空気を加湿する方式。ファンを回すだけなので、電気代が非常に安い。フィルターはアコーディオン式でジグザグに織り込まれることで、表面積を増やしているのも特徴だ。とはいえ、フィルターが常に濡れた状態にあり、そこがバクテリアの温床に。 やかんでお湯を湧かしているイメージ。水を沸騰させて、そのスチームを外へと放出、空気を加湿する方式。水自体は沸騰させることで非常に清潔であり、即効性は高いものの、他のタイプよりも圧倒的に多くのエネルギーを消費。つまり一日中や一晩中着けっぱなしすると電気代がかなり掛かる。また、スチームは遠くまでミストが放出されず、部屋全体が加湿されないことが多い。
ハイブリッド式超音波式
気化式と温風気化式のメリットを生かした方式を採用しているものが多い。湿度が低い時はフィルターに含んだ水分に温風を当てることで加湿を早め、湿度が安定したら送風のみで湿度を一定に保つ。省エネ性と即効性に優れているが、フィルターがバクテリアの温床であることは変わらない。 水を超音波で振動させることでミスト化し、それをファンで送り出す方式。霧吹きに近いイメージ。加湿装置がコンパクトで、省電力なものが多いが、実はバクテリアを含んだ空気をファンで広く拡散する危険性があるため、衛生面で問題がある方式と言われている。

実はAM10に採用された方式は超音波式だ。超音波式は、加湿器のなかでもっとも危険だと言われている方式。にも関わらず、なぜ同社は採用したのだろうか? それは水をミスト状にして、ファンの力で放出するという超音波式の技術自体は、エネルギー消費が少なく、スポンジやフィルターが不要な上、ミストも熱くならず、スチーム式よりも均一に部屋を加湿できるなど、どの方式よりも利点があると判断したから。さらに、同社には、超音波式を安全に使うための基礎研究から生み出された除菌技術が存在したからだという。

それがUV-Cライトを使ってバクテリアを除菌する技術「Ultraviolet Cleanse(ウルトラバイオレット・クレンズ)テクノロジー」だ。「AM10」は加湿器なので、当然ながら水タンクに水を溜める。そこから溝状である流路と、超音波でミスト状に分解する圧電変換器の設置されたプールへと水が流れ出る仕組みになっている。それらのプロセスにおいて、水にUV-Cライトを直接照射し続けることで、水に含まれているバクテリアを99.9%除菌するという技術だ。

「Ultraviolet Cleanse(ウルトラバイオレット・クレンズ)テクノロジー」のもっとも肝となる部分。UV-Cライトを水に3分間照射し、バクテリアを99.9%除菌する

とはいえ、UV-Cライトの効果は、UVエネルギーの強さ、UVエネルギーと接触する時間の長さ、UVエネルギーと接触物質の量で決まる。同社は本社にある微生物ラボで実験を重ね、3分間、水に直接UV-Cライトを照射すれば、バクテリアが99.9%除菌できる仕組みを開発した。強いUV-Cライトを2回照射することで、充分な光線量と時間を確保し、くまなく水を除菌するプロセスを構築したのである。

おなじみの「エアマルチプライアーテクノロジー」で均一に

部屋にはそれぞれ別の場所に人がいるため、1カ所を重点的に加湿するよりも、その部屋全体を均一に加湿することが重要だ

一方、衛生的なミストが放出される時に、今度は重要となってくるのが、いかにそのミストが部屋中に均一に届けられるかということだ。もしミストが単に放出されるだけだとしたら、空気より当然ミストである水は重いので、遠くまでは届かず、本体周辺に落ちて、そのあたりが湿っぽくなるだけという状況に陥りかねない。そこで同社が活用した技術が、“羽根のない扇風機”でおなじみの特許技術「Air Multiplier ™(エアマルチプライアー)テクノロジー」だ。

「AM10」の台座下のベース部分には、側面を囲むようにメッシュ状の吸気口がある。本体内でブラシレスDCモーターが「ミックスフローインペラー」と呼ばれる羽根を回すことで、吸気口から空気を取り込み、内部の流路を通って、上部の丸いリングの内側へと流れ、空気は唯一の出口であるスリットから、本体前方へと押し出される。この「Air Multiplier ™(エアマルチプライアー)テクノロジー」の送風口を後方に配置、ミストの噴出口を前方に設置することで、「AM10」は周辺の多くの空気を巻き込みながら、ミストも取り込んで、部屋中隅々にまで放出することに成功する。

「Air Multiplier ™(エアマルチプライアー)テクノロジー」により、ミストを部屋中に届ける

衛生的なミストと空気は別々の開口部から放出

筒内の奥に見える黒い羽根が「ミックスフローインペラー」

実際の稼働の様子(※湿度70%、風量1で設定)


想像以上に静か! 一度autoモードで設定すれば面倒な調整不要

さて、ここからはそういった同社ならではの高い技術力により開発された「AM10」を実際に使ってみた様子をレポートする。

組み立ては簡単?

まずは組み立てから。上部の円形パーツ部分、水タンク、モーターなどが内蔵された台座部分の3つに分かれているので、それらをパーツごとに繋げていく。といっても、シンプルな構造であるため、ほとんど迷うことはないだろう。家電品などの組み立てが苦手という人がいたとしても、1分も掛からずに、大半の人は完成させることができるはずだ。

そこから電源コードを背面部分に差し込み、コンセントと繋げるのだが、ACアダプターのヘッド部分がやや大きいため、延長コードに複数並ぶコンセントよりは、壁のコンセントに直接差し込むほうをおすすめしたい。

同梱されているパーツは全部で5種類。リモコンと電源アダプター以外の3点が本体を構成するパーツ

タンクに水をそそぐ。注ぎ口ギリギリぐらいまで最大3L入れることができる

給水キャップを下に向けてセットする

最後に電源はコンセントに挿すだけ。電源アダプターのヘッド部分はやや大きい

水の入れやすさは?

加湿器を使うにあたり、意外と気になるのが、水タンクへの水の入れやすさだ。縦長のタンクなどを搭載する機種によっては、通常の洗面所などの蛇口だと、高さが合わず、入れるのに苦労する機種等もある。ダイソンの水タンクは、高さが約20㎝くらいと、そういった加湿器と比べると高くない。実際、我が家のキッチンにある蛇口で入れる際には、シンクに垂直にして支えた状態で、かなり余裕を持って水を入れることができた。

水の注ぎ口はやや小さめながらも入れやすいため、満タンの3Lの水を入れる間、そこについてはほとんど気にならなかった。また、シンガポールで開発リーダーを務めていたデザインエンジニアの話によると、「水タンクを透明にした理由は、水の残量が一目で分かるので、余計なセンサーなどをつける必要がないのと、『AM10』の水が常にきれいであることに自信があるので、その水をしっかりと見せるデザインにしたかった」とのこと。その言葉通り、透明の水タンクが見えるだけで、ユーザーとしても、「あと、どのぐらい水が残っているんだろう?」というのが分かるので、例えば、寝室で寝る時に使う場合などは、翌朝まで持ちそうかどうかもすぐ分かり、非常に便利だと感じた。

水の注ぎ口は通常は水タンクの下部となる部分にある

指で回すだけで簡単に給水キャップが取れる。注ぎ口の穴は一般的な加湿器のなかでは小さいほうか

キッチンのシンクなどで注ぐ。高さ的には十分余裕があり、手で支えたまま入れればいいだけなので、女性でも満タンになるまで負担はない

最初の3分間はミストが出ない!?

水を満タンまで入れたタンクをしっかりと設置したら、いよいよ電源をオン。この時にリモコン本体の電源ボタンか、本体正面の電源ボタンを押すだけ。ダイソン製品のリモコンはシンプルで、ボタンにはしっかりアイコニックなマークが書かれているので、ほぼ迷うことなく操作できるだろう。

ただ、電源を入れると、最初本体の正面に浮かび上がるLEDが回転し始める。その状態が3分続いた後、ようやく加湿し始める。これには理由があり、上で述べたように、3分間UV-Cライトをあてることで、除菌を99.9%できるという検証結果に基づき、どんな時でも、電源を入れたら、しっかりと除菌するということで、超音波式加湿器が抱える衛生面の問題を取り去っていることが分かる。3分経つと、ミストを放出し始めることで、加湿を開始する。

本体電源ボタン、もしくはリモコンの電源ボタンを押すと、最初の3分間は浮かび上がるLEDライトが回転する。これがUV照射している証。この時は音などもほとんどしない

電源ボタンを押して稼働し始めたら、リモコンは加湿器上部に置いておけばOK。磁石でくっつくので、よほどの振動を加えない限り、そこから滑り落ちることはない

リモコン右下にあるautoモードを押すと、本体に“A”と点灯。その横に目標となる湿度が数字で表示される

その部屋の室温に対し、適切な湿度を表すグラフがこちら。autoモードにしておけば、「インテリジェントサーモスタット」と「ヒューディミスタット」が室温と湿度を感知し、自動的に加湿を調整し続ける

通常はオートモードでOK!

リモコンには風量調整ボタン、湿度設定ボタン、さらにタイマーボタン、オートモードボタン、そして電源ボタンとファン/加湿切替ボタンの6つのボタンが存在する。部屋の中が相当乾燥していて、いち早く湿度を高めたいというのであれば、湿度をマックス70%、風量をもっともスピードの速い“10”にすることで、ミストが一気に部屋中に拡散し、湿度をどんどん高めてくれるだろう。

とはいえ、日常は基本的にオートモードにしておくことをおすすめする。実際にオートモードボタンを押すと、現在の部屋の温度を内蔵された「インテリジェントサーモスタット」が検知。室温に対してもっとも快適である相対湿度を自動的に計算。例えば、25℃であれば約40%、20℃であれば約50%と、それぞれの温度に対し、適正な湿度に部屋を維持するように「ヒューディミスタット」が自動で調整するので、オートモードにしておけば、基本的にはなにもしなくてよい。

このオートモードのまま使い続けることで、湿度が低すぎたり、高すぎたり、気になることは一度もなかった。さらに例えば湿度が高まりすぎて、部屋の窓や壁に結露が溜まったりする場合もあるが、「AM10」はそういったこともなく、夜から朝方にかけて、急に気温が下がったりした場合でも、自動的に最適な湿度を計算して、調整してくれるので安心だ。また、湿度を維持している時は、加湿器もミストをほとんど出してないため、風量が多少強くしたとしても、余計な電気代は掛かってないと思われる。

リモコンはグラフィカルでシンプルなアイコンが描かれている。パッと見ただけでどんな機能かが分かる

湿度は手動でも調整可能。30%~70%まで1%単位で調整できる

風量が低ければ音は気にならない

寝ている時に、やはり気になるのが音の存在だ。スチーム式では水を温める際に泡などのボコボコという音が気になったり、ハイブリッド式でも気化式でもファンの音が気になるという人も多い。

「AM10」は10段階で風量を調整できるのだが、5以下に合わせている分には、夜もほとんど気にならないぐらいのファンの音は静かであるという印象だ。自分は眠りが深い方だからかもしれないが、実際に一緒に寝ている妻や2歳になる娘も同様で、「AM10」の音で起きることはなかった。さらに昼間のリビングなど、通常の生活音が響いているところでは、その音が気になるという人はほぼ皆無といってもいいだろう。

寝室で眠っている時にもautoモードにしておけば、その音で起きるということはほとんどない。眠りが浅い赤ちゃんや子供などが寝ている寝室でも安心して使える

イギリスの騒音防止団体から“Quiet Mark”を付与されている

メンテナンスもしやすい

加湿器の水がいくら除菌されるからといっても、定期的なメンテナンスは必要。それは「AM10」に限らず、どの加湿器にでも当てはまることだ。気化式やハイブリッド式と異なり、手入れが面倒なスポンジやフィルターがないため、メンテナンスはシンプルだ。

ミストが吹き出す部分の円形パーツは簡単に外せて、拭くことができる。基本的にメンテナンスが必要なところは、ユーザーが簡単に外して組み立てられるように設計してある

継続して使用する場合でも、1週間に1度くらいは、ふき掃除をして水を入れ替える必要あり。
また、月に1回はクエン酸溶液などでタンク内部を洗浄すること

起動→除菌中の表示

タンクの水切れの表示

加湿器だけではなく、扇風機としても通年使いたくなる

人は1日のうち90%以上を室内で過ごし、1日2万回以上呼吸しているとされている。だからこそ、空気には気を使わなければならない。「AM10」を使うことで、安全で快適な湿度の空気に1日中包まれながら、健康的に過ごせるだろう。特にこれからの季節、子育てなどをしている家では、子供が集団生活を送る幼稚園などから、細菌やウイルスなどを持ってきやすくなる。部屋を適正に加湿することで、ウイルスや風邪から身を守れるだろう。

また、加湿器というのは日本国内の場合、春以降は秋の終わりまであまり一般家庭では使わなくなる。その際、もちろんしっかりと来季に向かってメンテナンスした上で、収納して保管しておくのもひとつだが、この「AM10」は、実は“羽根のない扇風機”として、春以降もそのまま活躍させることが可能だ。首ふり機能はないものの、夏は扇風機やエアコンと併用できるサーキュレーターとしても役立つことも付記しておきたい。

Dyson Hygienic Mist™
加湿器 AM10(ホワイト/シルバー)

Dyson Hygienic Mist™
加湿器 AM10(アイアン/サテンブルー)


SPEC

バクテリア除菌率99.9%
加湿能力300 mL/h
音量(dB)最小 ファンモード/加湿モード 37/36
最大 ファンモード/加湿モード 62/57
連続運転時間10~18時間(使用状況により異なる)
消費電力ファンモード (W)最小6 / 最大40
加湿モード(W)最小35 / 最大55
本体サイズ (HxWxD)579mm × 240mm × 222mm
本体質量3.4kg
モーターDCモーター

(滝田 勝紀)

 

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