壁から外してすぐ掃除!のスタイルが日々の掃除を変える

 「Dyson Digital Slim DC62 モーターヘッド」(以下「DC62」)は、サイクロン式掃除機で有名なダイソンが9月に発売したコードレスクリーナーだ。「コード付き掃除機よりも多くのゴミを吸い取ります。」というキャッチと共に、テレビCMなどでもよく見かける。この製品を実際に使用してみる機会を得た。結論から言うと、DC62は、掃除嫌いの“やる気スイッチ”を押してくれるコードレスクリーナーだった。

  • DC62は手元側に本体があるタイプのコードレスクリーナー

    DC62は手元側に本体があるタイプのコードレスクリーナー

  • 本体ハンドル部にトリガーがあり、押しながら掃除する

    本体ハンドル部にトリガーがあり、押しながら掃除する

  • パイプはパープル。同シリーズの「コンプリート」はピンク、「プロ」はグレーだ

    パイプはパープル。同シリーズの「コンプリート」はピンク、「プロ」はグレーだ

 日々快適に生活していくには、避けられない「家事」。食事は外食でも安く済ませられるが、洗濯と掃除は外注するとコストが跳ね上がる。その結果、一人暮らしなら自分と、家族なら親子や夫婦で葛藤が起こり、ストレスの種になりがちだ。

 掃除嫌いな自分としては、掃除の面倒くささをなんとか軽減しようといろいろ原因を考えた。そんな時間があるなら掃除しろと言われそうだが、それはさておき自分の場合は、

  • 当然ながらキレイな部屋の方が好きだ。でも面倒くさい
  • 一度始めてしまえば掃除を最後までやりきるのは苦ではない
  • カーペットクリーナー(コロコロ)や床用ワイパーは楽しい

 ということに気がついた。要は「押し入れから掃除機を取り出してきて、電源コードを伸ばし、コンセントに挿してスイッチを入れる」という、キャニスター型掃除機で掃除を始めるまでの作業が面倒くさくて、“やる気スイッチ”が入らないのだ。

 非常に情けないが、いまさら“やる気スイッチ”が入りやすくなるとは思えないので、キャニスター型掃除機より気合いスイッチが入りやすくなりそうな、コードレスクリーナーを買って試してみた。が、意外にもなかなかしっくりいくものがない。小さなハンディタイプは手軽だが広い部分をかけるには面倒だし、バッテリーの充電の際にバッテリー部を取り外したら、取り付けるのが面倒でそこからまたしばらく使わなかったりもした。

 理想的には、「床用ワイパーのようにすぐ使える」手軽さで、コロコロも必要なくなるほどしっかり掃除できるものが欲しい。充電も意識したくないし、邪魔にならないものがいい──そんなことを考えているときに使用する機会を得たDC62が、実は自分の理想にかなり近いアイテムでびっくりした。

 まずは、思いついたらさっと手に取れるところがいい。DC62にはバッテリー充電器を取り付けられる壁付け用「収納用ブラケット」が付属する。これを壁にネジで取り付けて、本体をガシャっと差し込んで収納と充電ができるしくみだ。定位置へ戻せば意識せず充電ができる。

  • 「収納用ブラケット」にネジはついていない。設置する壁の材質に合ったものを別途用意する

    「収納用ブラケット」にネジはついていない。設置する壁の材質に合ったものを別途用意する

  • 下のネジ穴が床から1.2m以上の高さが推奨の取り付け位置。イメージより結構高め

    下のネジ穴が床から1.2m以上の高さが推奨の取り付け位置。イメージより結構高め

  • 下部に「コンビネーションノズル」や「隙間ノズル」もセットできる

    下部に「コンビネーションノズル」や「隙間ノズル」もセットできる

 最初、この収納用ブラケットにネジがついていなかったためどうしたものか迷ったが、サポートに電話で聞いたところ、コンクリートと木では用意するネジも違うため、あえて付けていないとのこと。ホームセンターで相談してほしいと言われた。なるほど。そう言われればそうだ。

 賃貸などで壁に取り付けられない場合は、本棚などの家具にネジ留めしているユーザーも多いそうだ。そもそも収納ブラケットが必須というわけではなく、バッテリー充電器を直接挿すだけでもOKとのこと。ただ、個人的にはこの収納用ブラケットはかなりよくできた仕組みなので、できるだけ活用することをお勧めしたい。

 取り付け位置は下のネジ穴が床から1.2mより上の場所、とのことで、想像よりも結構高い位置だった。が、これだけ目に入る位置にあると、意外にこれが掃除嫌いの“やる気スイッチ”を押してくれて、以前より圧倒的にこまめに掃除するようになった。想定外の効果だった。

コロコロいらずのパワフルさ! 3LDKの我が家はこれだけで十分

 次に驚いたのはパワフルさだ。ダイソンが特許を持つサイクロン技術だけあって、実際使ってみるとパワーは十分だった。正直、「コード付き掃除機よりも多くのゴミを吸い取ります。」とのうたい文句や、発表会での実際のパワフルさの比較(家電Watch「ダイソン、サブではなくメインで使えるコードレス掃除機「DC62」」を参照)は見聞きしていたものの、それでもコードレスだし限界があるだろうと思っていた。

 しかし、実際に使ってみると本当にキャニスター型と変わらないかそれ以上。自走式ではないはずなのにフローリングはラクラク。じゅうたんや畳は密着している感覚があるが、それでもかけ心地は軽い。静電気の発生を抑制するというカーボンファイバーブラシ搭載のモーターヘッドも、作りがしっかりしていて頼もしい。

 我が家は子どもが2歳と小さいので床に座ることも多いが、DC62でざっと掃除しただけなのに、なんだかつるつるしている。これまでコードレスクリーナーだと、掃除して見た目はキレイになっても、触るとちょっとざらつく感じが残ることも多く、気になって床用ワイパーのウエットシートでふき仕上げする……ということもあったので驚いた。ダイソンが「他のコードレスクリーナーの3倍のパワー」というのは、実感でいうとこういうことか、と思った。

 DC62には通常モードのほかにも「強モード」があり、トリガーを引いた状態で本体背面の「MAX」を押すとモードが変わる。約6分間使用できるよりパワフルなモードだ。ただ、パワフルすぎて進みにくいぐらいなので、めったに使わなかった。さすがに、強モードのときだけは、背部から出てくる排気量のすごさが感じられる。じゅうたんに絡んだペットの毛をすっきりさせたいとか、溝のホコリを一気に吸い取りたいなど部分的に短時間使うと便利だ。

  • モーターヘッドはかけ心地も軽くて進みやすい。方向転換のときも安定した動き

    モーターヘッドはかけ心地も軽くて進みやすい。方向転換のときも安定した動き

  • 本体背面の「MAX」を押すと「強モード」になり、約6分間使用できる

    本体背面の「MAX」を押すと「強モード」になり、約6分間使用できる

  • DC62の構造がわかるよう、カットされたもの。15個のサイクロンが2層に配置された「2 Tier Radial™(ティアーラジアル)サイクロン」でゴミを分離

    DC62の構造がわかるよう、カットされたもの。15個のサイクロンが2層に配置された「2 Tier Radial™(ティアーラジアル)サイクロン」でゴミを分離

 また、コードレスクリーナーで気になる運転時間は、結論から言えばこれで十分。我が家は80㎡の3LDKだが、レビュー中、掃除中のバッテリー切れはなし。それもそのはずで、ダイソンでトリガー式掃除機を1カ月使用したモニター調査を行ったところ、日本の家庭で行われている掃除の90%以上が20分以内に完了しているという調査結果が出たそうだ(※1)。敷地面積の全国平均は94.13㎡(※2)だそうなので、それより狭い、家具も多い我が家がラクに掃除できるのも当たり前だった。約3時間半の充電時間も他社と比較して短時間で、使い勝手もよかった。

※1:平均敷地面積約100㎡の調査対象者に計測機をつけたダイソンのトリガー式掃除機を1カ月使用した調査
※2:平成20年住宅土地統計調査結果による

 DC62はモーターヘッドの使用時で、通常モードで約17分間の掃除ができる。トリガー式を使ったのは初めてだったので「押し続ける」のが疲れそうだなと思っていたのだが、スイッチが軽いので実際は疲れることはなかった。それに、自分でびっくりするほど「押したり離したり」する。ちょっとイスを移動するとき、場所を変えるとき、段差を超えるとき……など、「かけたい」ときだけ押すので、思ったよりも時間の制約は感じなかった。実際、このトリガーの効果もあって、17分間と言っても実際の掃除時間に換算すると、約26分間相当だそうだ。

 また、この「約26分間の掃除時間」だとわかっていることで、掃除中はそこそこ集中してさっと終わらせ、それ以上は深追いしないようになることに気がついた。これが掃除嫌い克服に意外と役立つように感じる。

 というのも、私の場合コード付きのキャニスター型掃除機だと、時間の制限がないのでやりはじめると細かい部分まで気になって徹底的にやってしまう。結果的に長時間がかかり、ぐったり疲れる。その記憶が残ってますます掃除が遠のくという悪循環。いわゆる「仕事は与えられる時間に比例して膨張する」という「パーキンソンの法則」だ。

 一時期、それを意識した15分のキッチンタイマーをセットして掃除する掃除法が流行ったことがあるが、DC62はそれに近い効果があるように感じた。DC62があると掃除しようと思う回数は増えるが、一回あたりにかかる時間がどんどん短くなる。そして慣れてくるとコードレスクリーナーなのに運転時間を気にしなくなる。不思議な製品だ。

  • 個人的にはお掃除嫌いの“やる気スイッチ”だと思う、DC62のハンドルの赤いトリガー。掃除中、自然と押したり離したりする

    個人的にはお掃除嫌いの“やる気スイッチ”だと思う、DC62のハンドルの赤いトリガー。掃除中、自然と押したり離したりする

  • 本体背部のLED表示で、バッテリー残量の目安がわかる。残り少なくなると表示が変化する

    本体背部のLED表示で、バッテリー残量の目安がわかる。残り少なくなると表示が変化する

 「DC62 モーターヘッド」の場合、細かい部分用に隙間ノズルとコンビネーションノズル、「ミニ モーターヘッド」が付属する。コンビネーションノズルは、先端にブラシがあり、用途に応じて切り替えて使用可能。本体に直接ミニ モーターヘッドを取り付けると、自動車の車中やソファ上など、狭い場所の掃除にも便利だ。

 パワフルさ、実質的な運転可能時間、付属品の充実度など、充電をし忘れさえしなければ、キャニスター型掃除機と併用する用途というよりも、キャニスター型掃除機との置き換えられる実力がある。

 余談だが、「コンプリート」に付属し、オプションとして販売されているツールに「フトンツール」があるのだが、実はこれもおすすめ。というのも最近、ふとん掃除用の掃除機が売れているが、吸引力では圧倒的にDC62の方が上。キャニスター型掃除機だとふとんの上に乗る可能性があってイヤという気持ちはわかるが、コードレスクリーナーならわざわざ専用機器を買う必要はない。ふとんブラシを付ける方が確実に効果的だ。

 ちょうど実家が最近人気のふとん用掃除機を買ったと自慢されたので、借りてDC62と比較してみたところ、びっくりするほどDC62の方がゴミが取れた。「キャニスター型掃除機」+「ふとん掃除用の掃除機」の価格を考えると、DC62が安く感じる。フトンツールは、ダイソン公式オンラインストアで購入できる。(DC62 モーターヘッド コンプリートには同梱)

  • 隙間ノズルはパイプにも本体にも付けられる。家具の隙間やソファの隅に便利

    隙間ノズルはパイプにも本体にも付けられる。家具の隙間やソファの隅に便利

  • ミニ モーターヘッドは、イスやソファ、車内など狭い場所で活躍

    ミニ モーターヘッドは、イスやソファ、車内など狭い場所で活躍

  • フトンツールは、布団やベッドのマットレスなどの手入れにかなり便利

    フトンツールは、布団やベッドのマットレスなどの手入れにかなり便利

海外ブランドのイメージとはまったく違う丁寧なアフターサービス

 ゴミ捨てや手入れの面では、思ったより面倒ではない。やることは、「ゴミがMAXまでたまったら捨てる」「フィルターを1カ月に1回洗う」の2点だけだ。我が家の場合はゴミ捨ては一週間に一度ぐらい。トリガーの向かい側にある赤いボタンを下に押し下げる。ゴミがたまるクリアビンには、意外に大きなゴミまで入っていてびっくりする。

 本体上部にある丸いツマミを引き上げるとフィルターが取り出せるので、これは水洗い。乾かして元に戻すだけなので作業は簡単だ。あまり洗わず放置して使い続けると性能が落ちるそうなので、これだけはさぼらない方がよさそうだ。

 最後に、アフターサービスについて。海外ブランドには、アフターサービスが良くないというイメージが少なからずあるが、ダイソンの場合はかなり積極的だ。本体の後ろに「話そうdyson」というマークと共にフリーダイヤルが書かれており、この番号で平日も土日も、9:00~17:30まで「話そうダイソンお客様相談室」があらゆるアフターサービスや質問を、国内のコールセンターで対応してくれる。(年末年始、大型連休、その他の都合によりお休みとなることもあるので、要確認。)

 仕事柄、「お客様相談室」には必ず電話するのだが、「話そうダイソンお客様相談室」は返事が的確で質問した技術的な内容にも詳しく答えてくれた。使い方がわからない、ここが疑問といった部分があれば、ダイソンの場合はあまり悩まず電話で聞いた方がよさそうだ。電話口で質問をせかさないし、話をすぐに切り上げようとしないため、安心して話せる。実際、ダイソン側も「ぜひお客様のご意見をお聞きしたい」という積極姿勢だ。なるほど、ダイソンファンというのはこうして出来上がるのだなと思った。

 DC62はバッテリー駆動なので、バッテリーの持ちが悪くなったらいずれ交換する必要がある。およそ2~3年は持つ仕様だが、数年前までのボタン着脱式ではなく、ネジ止め式。ハンドルを握った状態で誤ってボタンを押して外れてしまわないように改良された形だ。交換の際は前述の「話そうダイソンお客様相談室」に連絡すると、宅配便で回収され、依頼から72時間以内に手元に戻るようにしているそうだ。故障の際も同じ流れなので、マニュアルの「保証登録カード」のシリアルナンバーをチェックして、あらかじめオンライン登録しておくことをお勧めしたい。

 DC62の魅力は、製品そのものもすごいが、それがあることで生活スタイルの一部が変わったり、ストレスがぐんと減るという部分にある。正直、キャニスター型掃除機のプレミアムサイクロン式掃除機ぐらいの価格もするので迷う人もいるだろうが、掃除の“やる気スイッチ”がなかなか入らないという人にとっては、価格分以上の価値がある製品であることは間違いない。お勧めの製品だ。

  • ゴミ捨ては、赤いボタンを下に押し下げるとワンタッチで捨てられる

    ゴミ捨ては、赤いボタンを下に押し下げるとワンタッチで捨てられる

  • フィルターは月1回水洗い。24時間以上よく乾燥させてから戻す

    フィルターは月1回水洗い。24時間以上よく乾燥させてから戻す

  • 本体背面にある「話そうdyson」のロゴ。もちろん購入前の相談もできる

    本体背面にある「話そうdyson」のロゴ。もちろん購入前の相談もできる

  

Dyson Digital Slim DC62
モーターヘッド

【付属品】
*ミニ モーターヘッド
*コンビネーションノズル
*隙間ノズル

 

Dyson Digital Slim DC62
モーターヘッド コンプリート

【付属品】
*ミニ モーターヘッド
*ソフトブラシツール
*フレキシブル隙間ノズル
*フトンツール
*コンビネーションノズル
*隙間ノズル

 

Dyson Digital Slim DC62
モーターヘッド プロ 【オンラインストア限定モデル】

【付属品】
*ミニ モーターヘッド
*アップトップツール
*フレキシブル隙間ノズル
*ハードブラシツール
*延長ホース
*コンビネーションノズル
*隙間ノズル

西村敦子 西村敦子
1973年東京都生まれ。IT系出版社を経てフリーライター兼編集者に。カメラ雑誌の編集、家電製品のライターとしての活動が多く、インターネットの格安店やお得なサービスにも詳しい。2011年6月に第一子を出産し、子育て中。