三洋、パナソニックグループとしての中期経営計画を発表

~白物家電は一元化が基本。エナジー事業に集中投資

2012年に売上2兆円。“グループの中核会社としての基板確立”を目指す


会見に登壇する三洋電機の佐野精一郎社長
 三洋電機は、5月11日、2012年度を最終年度とする中期経営計画を発表した。

 5月7日に親会社であるパナソニックが、2012年度を最終年度とする中期経営計画「Green Transformation 2012(GT12=ジー・ティー・トゥエルヴ)」を発表しており、これを受けて、三洋電機としての新たな計画を策定したものになる。

 三洋電機の佐野精一郎社長は、「パナソニックグループの新中期経営計画と期間を統一し、市場環境の変化を踏まえて、経営目標を見直した。2012年度までの3カ年に、パナソニックグループの中核会社としての基盤確立を目指す」と宣言した。

 2012年度の売上高は2兆円、営業利益は900億円、営業利益率は4.5%を目指す。

 これまでの中期経営計画では、2010年度の営業利益で700億円としていたものを400億円に、2011年度には900億円としていたものを600億円と、それぞれ300億円減額し、900億円の計画を1年先送りしたものとなっている。

 「景気が緩やかに回復しているものの、先進国を中心に構造的なデフレが継続。コマーシャル分野での設備投資が落ち込んでいること、グローバルに製品価格の下落が続いていること、円高による為替の影響などを理由に見直した」(佐野社長)

これまでの中期経営計画を改め、市況の変化などを盛り込んだ新たな計画を策定新中期計画の詳細。2012年度には、売上高2兆円、営業利益900億円、営業利益率4.5%を目指すグラフによる新中期計画の見通し

課題事業は「パナとの一元化」、「事業縮小・撤退」、「M&A」という3つの選択肢に集約


 今回の中期経営計画は、佐野社長が言及するように、パナソニックグループのなかで、いかに両社の事業を融合するかという点が重要なポイントとなる。

 資材の共同購入をはじめとする集中、集約、効率化への取り組みのほか、一部事業においては事業戦略の一元化にも踏み出すことになる。パナソニックの大坪文雄社長が言及したように、重複事業などを対象に3,000億円規模の事業からの撤退、縮小が見込まれている。

 「三洋電機の課題事業は明確になっている。パナソニックとの間で事業を一元化していくもの、単純に事業を縮小、撤退していくもの、M&Aを考えるものという3つに集約されるだろう。またパナソニックにも課題事業があり、グループとしてなにが最適であるかということも考える必要がある。上期中に改革に向けた具体的な施策を決めることになるだろう」と佐野社長は語る。


白物家電はエアコンや洗濯機でパナに一元化、一部では三洋ブランドの継続も

白物家電におけるパナソニックのコラボレーション。
 特に白物家電においては、すでに大坪社長が事業戦略の一元化を発表しており、三洋電機の中期経営計画もそれに準拠したものになる。

 ジャンル別では、空調部門については「三洋電機は業務用エアコンにリソースをシフトし、パナソニックの販路活用による販売拡大を見込む。一方で、家庭用エアコンに関しては、パナソニックへの事業一元化を行ない、グループとしての総合力を発揮することになる」とした。白物家電全体については「冷蔵庫に関しては、中国ハイアールと連携しており、これをどうするのかを考えた上で一元化戦略を考えていく必要がある。国内の洗濯機事業に関しては、事業の一元化と開発リソースを共有化して、いち早く製品を市場投入していく。それに向けてワーキングチームで検討しているところ。洗濯機はパナソニックによるワンマネジメントで考えていくのが自然な姿である」などと語り、「白物家電に関しては、開発の一元化、拠点の統廃合、コラボ商品の投入といった観点で、パナソニックとのシナジーを目指す」とした。

 だが、「三洋電機のブランド、商流を生かせるというのであれば、三洋電機のブランドを継続するものもある。事業戦略を一元化するのと、ブランドを統一するのとは別の話であり、その点での基本認識は統一されている」とした。


“経営体質の強化”“全事業の収益化”――計画達成に向けた4つのポイント


佐野社長が掲げた、中期経営計画に向けた4つのポイント
 一方、佐野社長は、中期経営計画達成に向けたポイントとして、「経営体質のさらなる徹底強化」、「全事業の収益事業化」、「エナジー事業への経営資源の集中」、「収益源の事業の競争力強化」の4点をあげた。

 「経営体質のさらなる徹底強化」では、連結フリーキャッシュフローとして、今後3年間で720億円を創出。「事業拡大に向けた先行投資のためにも、さらなるキャッシュフローの確保が必要。イタコナやコストバスターズ活動による全社的なコストダウン活動に加え、在庫削減、債権・債務の適正化による資産効率化に取り組む」とした。

 「全事業の収益事業化」では、市場成長性ととともに、市場シェアをベースとした競争優位性の観点からそれぞれの事業を分析。「環境・エネルギーを中心とした将来性のある事業を強化するが、一方で課題事業も多く抱えており、2009年度の赤字事業を合計すると約130億円にのぼる。あらゆる施策を検討し、事業にとって最善の手段を選択する必要がある。2012年度に900億円の営業利益を確保するためには、2010年度上期中にも抜本的な改革を行なう必要がある」とした。

経営体質のさらなる徹底強化のため、コストダウンなど資材の効率化に取り組み、約720億円を創出するという三洋の赤字事業を合計すると、赤字額は約130億円。全事業の収益事業化に向けて、“あらゆる施策”を検討するという

 「収益源の事業の競争力強化」としては、電子部品事業における光ピックアップにおいて、現在、DVD用途で約50%のシェアを獲得している実績をベースに、BD(ブルーレイディスク)用途でも、2012年度には約30%のシェア獲得を目指すという。

 デジタル事業においては、OEM事業で展開しているデジタルカメラで、高付加価値製品の開発およびホリュームゾーン向け製品の展開により、2012年度には過去最大規模となる2,000万台を計画。また液晶プロジェクターでは、高輝度、高解像度モデルの市場投入により、大型モデルにおけるシェア1位を堅持。2012年度には、現在の80%増となる年間6万5千台の出荷を計画。市場シェア40%獲得を目指す。また、テレビ事業においては、商品ラインアップの拡充により、米ウォルマート向けのビジネスを拡大。2012年度には北米市場において、販売台数を2009年度比2倍となる400万台を目指すとした。
電子部品事業では、DVD用途の光ピックアップにおいて約50%のシェアを獲得。ブルーレイディスク用途でも、2012年度に30%のシェアを狙うデジタル事業では、デジカメ、液晶プロジェクター、テレビでの増産を目指す

累計投資額のうち約6割をエナジー事業に投入。太陽電池は業務用市場を強化


2010~2012年度までの累計投資計画のうち、約6割をエナジー事業に投入する
 「エナジー事業への経営資源の集中」においては、今後3カ年で予定している2,900億円の設備投資のうち、太陽電池事業で約500億円、二次電池事業で約1,200億円を見込んでいる。「(累計投資計画のうち)約6割をエナジー事業に集中投資する。次世代太陽電池は、2012年度末までにパイロットラインを稼働させるが、開発が加速し、量産が前倒しできれば投資額を引き上げていくことになる」との見方を示した。

 太陽電池に関しては、パナソニックの中期経営計画でも、「2015年度にグローバルトップ3入り」とする目標が改めて強調されたが、「単価下落、グローバル競争激化というなかで、HIT太陽電池の競争力を高めていく必要がある。またグローバルトップ3を実現するにはコスト競争力を高めなくてはならない。一方で、これまで三洋電機が弱かった業務用市場に関しては、2010年度下期から多結晶型太陽電池の外部調達を開始し、商品ラインアップを強化する。パナソニック電工の住建、電材ルートも活用して拡販を図っていく」としたほか、「2010年度中には、HIT太陽電池の変換効率を21%にまで高め、生産革新によるコスト競争力の強化を図る。2015年度には1,500MWの販売を目標とする」と、製品自体の性能アップも目標に掲げた。

 次世代太陽電池については「薄型化、コストダウンを図るものになる」としたに留まり、詳細には触れなかったが、同太陽電池の生産には、パナソニックの尼崎工場の活用を検討しているとした。また、2010年度末の生産能力を現在の400MWから900MWに拡大するのに向けて、セル生産では島根三洋電機、二色の浜事業所の拡充、モジュール生産ではハンガリー事業所、滋賀事業所の拡充を図る計画を示し「パナソニックから1,000億円規模の投資があるという点でも増産を推進できる」とした。
太陽電池の事業計画。パネル自体の性能向上のほか、業務用市場の開拓、次世代太陽電池の開発の加速などを予定している島根、大阪、滋賀、ハンガリーの生産構造を拡充。2010年度には、2009年度末比で1.7倍となる600MWの生産体制を目指す

二次電池はハイブリッドカー向けを増産。“世界トップシェア堅持”を目指す


二次電池事業では、既存用途の増販と新規用途の開拓により、世界トップシェアの堅持が目標
 二次電池では、4月から量産を開始した大容量・高電圧リチウムイオン電池システムの事業拡大や、世界最高レベルの高容量セルの商品化、コスト競争力の強化により、「既存用途での増販と、新規用途開拓による世界トップシェアを堅持し、2012年度には約3,700億円の事業売上高を見込む」とした。

 二次電池の新規分野となるHEV(ハイブリッドカー)事業では、2020年度のグローバルシェア40%の獲得に向けて、加西事業所で月産130万セルでの稼働および洲本事業所で月産350万セルの体制を整えるといった増産体制の確立や、2011年度のプラグインハイブリッド車(PHV)向けリチウムイオン電池の商品化を計画。「現在、取引している自動車メーカーに限らず、全方位の販売戦略によって、環境対応車用の二次電池市場をリードする」とした。

 蓄電システムの市場規模は、2015年度には2,500億円以上が見込まれており、そのうち三洋電機では約800億円の事業規模を目指す。

新規分野としては、HEV(ハイブリッドカー)事業に注力。現在取引しているメーカー以外にも販売していくという2010年度には、HEV向けの二次電池として、加西でリチウムイオン電池を、洲本でニッケル水素電池を増産する

“創エネ/蓄エネ”のエナジーソリューション事業で、2015年度までにシェア20%を目指す

 これらの取り組みにより、2012年度における目標は、エナジー事業領域における売上高が5250億円、営業利益が360億円、エレクトロニクス事業領域が売上高が7,700億円、営業利益が360億円、エコロジー事業の売上高が8,000億円、営業利益が345億円とした。

 中でも、エナジーソリューション事業においては、2015年度に1,000億円の事業規模を目指しており、約5,000億円の市場において、20%のシェア獲得を目指す。

 「創エネ、蓄エネコントローラおよびSES(スマートエンジーソリューション)コントローラを加西事業所に設置して実証実験を行なっており、これを店舗や家庭などに展開していくことになる」とした。

ソーラーパネルや二次電池といった創エネ、蓄エネ装置を支える制御システムの開発を加速するというエナジーソリューションシステムは、2015年度に1,000億円レベルの事業へ成長させ、エネルギービジネスを牽引していくという



(大河原 克行)

2010年5月12日 00:00