三洋電機、「ウイルスウォッシャー」が新型インフルエンザと同型の「H1N1」型に有効

ウイルスウォッシャー技術搭載の空間清浄システム「VW-VF10B」。病院や公共施設などに設置するための大型製品。60畳まで対応。価格は396,900円

 三洋電機は、同社の空気清浄機などに搭載している電解水技術「ウイルスウォッシャー」が新型インフルエンザと理論的に同型であるH1N1型に有効であると発表した。

 ウイルスウォッシャーは、電解水を利用して除菌・脱臭を行なう三洋独自の技術で、同名のブランドを冠した空気清浄機や、空調機器、システムを広く展開している。同社ではこれまでも、「ノロウイルスに有効」「鳥インフルエンザに有効」などの効果を提唱してきた。

 インフルエンザウイルスは、感染により高熱、筋肉痛、鼻水などの症状を引き起こすウイルス。今年4月より世界的に流行している新型インフルエンザでは、人体に抗体のない新型のウイルスで、特に若年層への感染が危惧されている。WHOでは警戒レベルをフェーズ6に上げるなど、世界的に警戒態勢に入っている。

 新型インフルエンザウイルスの学術的なウイルス名はA(H1N1)pdmという。三洋電機では、群馬県衛生管理局と共同で、新型インフルエンザウイルスと理論的に同型とされる「H1N1」型のウイルスに対しての効果を検証し、その結果、ウイルスは99%減少したと発表した。

 国立感染症研究所 室長木村博一氏は、今回の検証結果について「インフルエンザウイルスに限らず、ウイルスの構造や性質にはそれほど大きな差はない」とし、新型インフルエンザウイルスにも一定の効果があるとの見解を述べた。

 なお、今回の検証は第三者機関である実験により行なわれた。

 電解水技術では、業務用の空調に使われる除菌エレメント方式と、主に家庭用の空気清浄機に多く搭載している除菌電解ミスト方式の方法がある。今回の検証実験ではそれぞれ、別の方法で実験をした。

三洋電機の電解水技術業務用など広い範囲に使用する除菌エレメント方式家庭用の空気清浄機などに搭載されている除菌電解ミスト方式

 まず、室内の空気を電解水を含ませたフィルターに強制的に通し、循環させる除菌エレメント方式では、A室とB室の間にフィルターを設置し、室内の空気を1回通過させ、通過前と通過後のウイルスの数を測定。結果、ウイルス感染価の残存率は1%で、99%のウイルスが減少した。

 電解水を霧状に放出する除菌電解ミスト方式では、放出口にH1N1型のインフルエンザウイルスを付着させた綿棒を設置し、ミストを放出し、放出前と放出後のウイルスの数を測定した。結果は除菌エレメント方式と同様に99%のウイルスが減少した。

除菌エレメント方式では、フィルターを介したA室とB室のウイルスの数を測定除菌電解方式では、放出口にH1N1型のインフルエンザウイルスを付着させた綿棒を設置し、設置後と設置前のウイルスの数を測定したどちらの方式でも99%のウイルスが減少するという結果が出た

 同社では、インフルエンザウイルス以外にも、鳥インフルエンザウイルス、ノロウイルスにも同様の効果があるとしている。

三洋電機 研究開発本部 エコロジー技術研究所 井関正博氏

 三洋電機 研究開発本部 エコロジー技術研究所 井関正博氏は、これらの効果について「ウイルスの根本的な構造が異なるインフルエンザウイルスとノロウイルスに同様の抑制効果が見られたということは、ウイルスウォッシャーの抑制効果が多くのウイルスに効果的だということ」と語った。


国立感染症研究所 室長木村博一氏

 国立感染症研究所 室長木村博一氏は、新型インフルエンザウイルスを含むH1N1型ウイルスに関して「インフルエンザウイルスにはいくつかの系譜があり、H1N1ウィルスに関していえばこの100年で3回目くらいになる大きな流行。特に特異的なウイルスとはいえない」としながら、「新型インフルエンザウイルスの系譜を調べてみるとヨーロッパ大陸の豚を介したことがわかっている。発祥の地が南米なのは学会でも未だ解明していない」とし、新型インフルエンザウイルスに関してまだ不明な点が多くあると話した。

 また新型インフルエンザの毒性については「新型インフルエンザウイルスに限ったことではないが、インフルエンザウイルスはウイルスそのものの毒性というよりも感染によって併発する合併症によって重症、死亡に至るケースが多い。その意味で抗体を持った人がいない新型インフルエンザウイルスは、感染者が増大する危惧があり、重症に至る確率も高いといえる」という。

新型インフルエンザウイルスの模型多くのインフルエンザウィルスは鳥が持っている。新型インフルエンザウイルスでは、鳥のウイルスが豚を介して人間に感染したと見られている新型インフルエンザウイルスの特徴。若年層に患者が多いことや、死亡例や重症例は免疫不全患者に多く見られる事などが挙げられている

 有効な予防対策としてはうがい、手洗い、マスクなどを挙げた。空気清浄機による対策については「100%有効とは言えないが、ゼロともいえない。製品を選ぶ際には、医療機関や研究機関での検証を受けているのが重要」と話した。

 また、同氏は群馬県衛生環境研究所在籍時に、三洋電機と共同で電解水技術を研究していたという経歴を持つ。ウイルスウォッシャー搭載の空気清浄機に関してはその経歴を踏まえ「ウイルスウォッシャーでは、共同で研究していた時点で一定の効果がでていた」とし、「1つのウイルスに効果があるということは、そのほか多くのウイルスにも効果があるとみていい」と語った。





(阿部 夏子)

2009年7月22日 00:00