長期レビュー

三洋電機「eneloop bike CY-SPL226」 第2回

~エネループバイクで上り坂最高!! 下り坂もネ!!
by スタパ齋藤

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)




三洋電機のフラッグシップ電動ハイブリッド自転車「eneloop bike CY-SPL226」
 三洋電機の「eneloop bike CY-SPL226」長期レビュー第2回目。今回はアシストって実際どの程度ラクなのか、快適化したり愉快化したりするのか、さらに不可能だったことが可能になったりするモンかどうかについて、具体的に検証してみたい。なお、第1回目のレポートはこちら

 この電動アシスト自転車、一度乗っちゃうと手放せなくなる快適さが多々あるが、その利便の筆頭は何と言っても上り坂が超ラクであること。

 自転車で走っていてイヤなシチュエーションは? と聞けば、きっと十中八九「上り坂!!」と答えるであろー。スポーツ自転車な人だと「向かい風!!」かもしんないが、ともかく、力強くペダルを踏んでもたいして進まず、間もなく太股が痛み、さらには息も切れ切れになる“な~んだか進まない状況”は苦痛の一言。この苦痛、ちょいと度合いが強くなれば恐怖にさえなる。

 この苦しみを、eneloop bike CY-SPL226は軽減してくれる。第1回目に書いたとおり、人間が1の力でペダルを踏むと、自転車が最大2の力でアシストしてくれて、1+2で最大3の力で進める。言い換えれば「3の苦難が1で済む」ようになる……ってホントか? じゃあ実際に試してみよう!!

アシストの仕組み。人がペダルを踏む力に応じて、前輪にモーターの力が加わる度合いが変わる。低速では強いアシスト力が加わり、高速になるとアシスト力が弱くなる。時速24km/h以上ではアシスト力は加わらない。※図は説明書より抜粋。
 eneloop bike CY-SPL226はモーターで推進をアシストするが、常に同じ力でアシストするわけではない。人がペダルを踏む力やそのときの速度に応じた適切な力でアシストする。具体的には左の図のようなイメージとなる。

 走り始めのときに強くアシストし、その後時速10km/hくらいまでは強い力でアシスト。さらにスピードが上がるとアシスト力が弱くなっていくという感じですな。ちなみに、速めのウォーキングの時速は5~6km/h程度、ジョギングが10km/h前後、ノンビリしたサイクリングが15km/hくらい。20km/hは「ママチャリで急いでどこ行くの?」的な爽快感のあるスピード、かな!?

 スピード絡みで言えば、eneloop bike CY-SPL226には3段の変速機構もある。ハンドル右側グリップ根本を回転させて変速するタイプだ。

3段の変速機構を搭載。ハンドル右側のグリップ部で変速操作を行なうこの部分、グリップの根本を回転させて変速する。現在のシフト位置は丸窓内に数字で表示されるシフト位置と負荷/スピードの関係はこうなる。※図は説明書より抜粋

 さて、実際にこのアシスト力に助けられつつ、坂道を上がってみよう。もちろん、シフト位置は1。いちばん軽くペダルを踏めるギア比ですな。

 まずは中程度の上り坂で実験。この坂は、130mくらいの距離で、ママチャリでもどうにか上りきれる程度の傾斜だ。足腰に自信がある人や血気盛んな若人なら座ったまま上りきることもできるだろう。……とは言っても、ぶっちゃけ、自転車で上るのはヤな坂ですな。拙者とかだと、ママチャリで頑張って(立ちこぎ含めて)やっと上ったりすると、肩を揺らして激しく呼吸する感じになる。

まずは130mくらいの距離の坂に挑戦。スポーツ自転車なら上る気になるが、ママチャリだと……てなイメージの坂ですな坂の中盤あたりで、斜度がけっこーキツくなる印象。フツーのママチャリだと、意識して上らないとこのあたりで失速して自転車を押すことに坂の中盤~後半あたりの道路左脇を見ると、坂の斜度をイメージできる

 この坂をeneloop bike CY-SPL226でトライ。結果、驚くほどスイスイ上れ、座ったままで上りりきれた。呼吸もほとんど乱れなかった。たぶん、喋りながらや歌いながらでも坂を上りきれちゃうと思われる。「あぁヤな坂だなぁ」という印象だったが、eneloop bike CY-SPL226で通ると坂として数に入らないという感じになる。てか、アシスト、凄いッ!!

 次。今度はおよそ500mという長めの坂で、傾斜もママチャリで上がるにはゲンナリするくらい。前述の坂が長くなり、傾斜も少しキツくなったというイメージだ。ココをママチャリで上っている人はほとんど見ない(たいていは押してる)。傾斜としては、まあ途中までなら「ママチャリでもどうにか」と思えるんだが、それが500m以上も続くとなると途中で心が折れがちである。

踏みきりの向こうから上り坂になる。坂は500m以上続く傾斜はこんな感じ。ママチャリでも通れなくはないが、いかんせん長いこんな感じの傾斜が500m以上続くので、アシストなしだと途中で「はぁッ、はぁッ、もう、やーめた!!」となりがちだ

 この坂もeneloop bike CY-SPL226でゴー!! 最初は「いくらアシストされてもこの坂はキツいんじゃないのかな」と思っていたが、わりとフツーに上れちゃいましたッ!! 座ったまま上りきった。坂の頂上のほーで息が弾んだ感じになったが、苦しいとかキツいという印象ではない。「なかなかいい運動になったゾ」てな心地よさですな。サイクリング的な。

 余談だが、拙者がこの坂をスイスイと上っていくのをアカラサマに「えっ?」って顔で見てる人が数名いた。前述のように座ったまま上りきったんだが、太った中年男性がママチャリに座ったままこの坂を上りきるのは、拙者から見たとしても異常。爆発的な怒りを登坂という行為にブチ当てている人か、ママチャリに常軌を逸した執念を燃やしている人か(以下略)。

 ともあれこの坂を座ったまま上りきれちゃえるeneloop bike CY-SPL226、サイコーっ!! この坂を制覇できるとなれば、拙宅の近所ほぼ全ての上り坂を、eneloop bike CY-SPL226上に座ったままスイスイとイケる!! 俺こそ近隣上り坂の覇者……みたいな大いなる気分になった。

 しかし、まだ急坂は存在する。物凄く急なやつが。てか、その超急坂、坂道じゃないんですよ。道でもないんです。傾斜が目立つ壁、と考えることにしていた。ソコを自転車で上るのは無理であり、下るのも非常に危険であり、歩いて上り下りするのもかなり疲れるのであって、もしかすると坂の途中で自動車を停止するとズズズズって下がってっちゃうかも!? 具体的には以下の坂である。

これが問題の超急坂。eneloop bike CY-SPL226に乗るまでは、急過ぎるゆえ拙者内部では坂としてカウントされていなかった。左のブロック塀を見ると、笑えるほど急であることがわかるその超急坂を横から見たところ。もはや社会問題として取り上げられても違和感がないくらい急である。ここをママチャリなどで上っている人は見たことがないこちらは別の超急坂。左の超急坂をeneloop bike CY-SPL226で上れれば、ここもイケそうである

 もちろんこの坂もeneloop bike CY-SPL226で挑戦。「ま、無理でしょう。でも記事として笑えるネタになれば、いっかナ」的な諦めスタンスで一応挑戦してみた。

 ところが上れちゃいました!! しかも座ったまま!! てか、途中「立ちこぎしよっかニャ」と思ったんだが、自転車の上で立つのが危険なほどの急坂なんで座ってるしかなかったというのが本当のところだ。

 ともあれ、とにかく上れたっつーコトに驚いたというより驚愕。しかも座ったまま上れたというコトについて、これはビックリとか驚愕とかってのを通り越して、もはや非現実的な現実っていうかシュールレアリスムかおまえは>eneloop bike CY-SPL226、みたいな。

 ただ、しっかり呼吸が乱れましたヨ。また、この坂、超越的急坂とは言っても、距離は長くない。30m弱。なので、この坂が倍の長さになったら、恐らくeneloop bike CY-SPL226でもハァハァゼェゼェであり、この坂が100m続いたら上るの無理かもしんない。

 てな感じで、街中にある普通一般の坂道はだいたい座ったまま楽勝で上れちゃうeneloop bike CY-SPL226。超急坂に挑むことも可能と考えれば、「上り坂はヤだなぁ」「苦しいだろうな」という上り坂に対する恐怖をバッチリと払拭してくれる電動ハイブリッド自転車だと言えよう。

 eneloop bike CY-SPL226に乗ると、まあ、上り坂全般がナンともなくなるんだが、でもちゃんと上ってるわけで、上ったあとのお楽しみもちゃんとある。すなわち、下り坂を風切って快速走行ーわ~気持ちイイーッ!! である。

 で、下り坂などを走行する場合、eneloop bike CY-SPL226では回生ブレーキによる充電される(ブレーキ充電/回生充電)。これは下り坂などで自転車が惰性で進もうとする力を発電に使うというもの。下り坂では自然に自転車が進むが、その力で前輪のダイナモを回して発電&バッテリーへ充電するのだ。

eneloop bike CY-SPL226の前輪にはダイナモ(ダイナモーター)が装備されている。これは推進力を生むモーターとしても、電力を生む発電器としても機能する赤がアシスト時、緑が発電時。坂道を上がるなどする場合は電気を使ってモーターを回し、推進をアシストする。坂道を下るなどする場合は、自転車が進む力でダイナモを回して発電する。※図は説明書より抜粋このように推進力を生むモーターとしても発電器としても機能するダイナモにより、より長時間のアシスト走行を可能としている。※図は説明書より抜粋

 具体的には、下り坂(時速は8~24km/hの範囲)で後ろブレーキを軽くかけると、回生充電が始まる。後ろブレーキの制動感に加え、ダイナモでさらに加速が抑えられ、つまりは「手でブレーキかけてるよりもさらにスピードが抑えられてる感じ」になる。このとき、ダイナモから独特の音がして、いかにも発電中って感じ。発電/充電時は手元スイッチ部のLEDが流れるように点滅する。

 回生充電機能が働くパターンはいくつかあり、今回のCY-SPL226からは、平地でも回生充電ができる運転モード「エコ充電モード」も追加された。個人的には、下り坂での動作は「なんか得してる感じ」という印象だ。何しろ、普段はただ単に下っちゃうだけの坂なのに、eneloop bike CY-SPL226だと坂を下ること=発電&充電することにもなる。もう少々細かいコトを言えば、普段はブレーキかけつつ下るんだが、eneloop bike CY-SPL226だと発電がブレーキと同等の効果になり、下り坂で安心感のあるスピードを保てることが多くなる。

 結果、フツーに楽しい下り坂に、「ただ下ってるだけじゃなくて発電/充電している」という実感と「わりと急坂だけど安心して下れる」という安心感が加わり、いろいろとお得な感じがするのだ。もちろん、回生充電が行なわれた分、eneloop bike CY-SPL226のアシスト走行距離は伸びる。

 てな感じのeneloop bike CY-SPL226。街中をスイスイ走れて坂道もイヤじゃなくなる。これだけでフツーに生活が変わりますな。猛暑とか極寒とか雨とかじゃない限り、とりあえず電動ハイブリッド自転車で出かけようかニャ~と思うように。苦しさほとんどナシだし疲れ僅少だし、やっぱり風を切って走りつつ目的地に着けるのは楽しいんであった。

 さて、次回はeneloop bike CY-SPL226でサイクリング。てか、ポタリングですな。ほんの少し遠出してみて、その走行感がどーゆーモノであったかなどをレポートしたい。引き続きご愛読よろしくお願いいたします~。



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2010年6月11日 00:00