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「実は電池切れ!?」あなたの家の火災警報器、本当に動いてますか?

 住宅用の「火災警報器」の寿命をご存知だろうか。電池式の場合は電池寿命の目安は10年。また本体寿命も多くの製品で10年だという。そして今、一般住宅に「火災警報器」の設置が義務化されてから、10年前後が経とうとしている。あなたは、お宅の火災警報器の寿命を把握しているだろうか。

パナソニック製の火災警報器

 一般住宅に「火災警報器」の設置が条例により義務化されてから、10年以上が経過した。新築住宅では、東京都は2004年10月1日、その他の地域は2006年6月1日以降に建てられたもので、設置が義務化されている。それ以前に建てられた住宅では市区町村により異なるが、2006年6月1日から2011年5月31日までの間に設置完了期日が設けられ、同様に設置が義務化されている。

 つまり、義務化後にもっとも早く設置された火災警報器が約15年経過しており、もっとも遅く設置されたものが10年目を迎えるのは、2021年ということになる。

火災警報器の役割を改めて見ていこう

 当然のことながら、電池が切れたり、本体に寿命が来た火災警報器は作動しないので、火災があっても警報は鳴ってくれない。「そうは言っても、火事なんてめったに起きないのでは?」とタカをくくっている人もいるのではないだろうか。

 そこで、消防庁「消防白書」のグラフで、緑色の「住宅火災による死者数」を見てほしい。

住宅用火災警報器の設置が義務化されてから、火災による死者数は減っている

 平成19年(2007年)以降、火災による死者数は右肩下がりとなっている。また、平成19年(2007年)以前の数値は、平成16年(2004年)が1,038人、平成17年(2005年)が1,220人、平成18年(2006年)が1,187人となっており、そのピークは2005年、数値が減少に転じたのが2006年だ。2006年というのは、東京都の新築住宅で火災警報器の義務化が済み、東京都以外の新築住宅と、それ以前の住宅で最初に義務化された年。以降、火災警報器の設置義務化が進むにつれ、死者数も減少していることが分かる。

 火災警報器の開発・普及を目指す「日本火災報知器工業会」による「火災警報器の奏功事例」によれば、調理、寝タバコ、線香、暖房器具と布の接触などの"ちょっとした不注意"などで、気づかないうちに発火が起きたものの、火災警報器が鳴ったおかげで、火事に気づき、大事に至らずに済んだという。

 また製品事故に関する調査・分析と、再発防止のための情報発信などを行なう「製品評価技術基盤機構(NITE)」によれば、家電製品を中心とした火災の原因には、以下のようなものがあった。

  ・劣化した家電製品などの使用
 ・取り扱い説明書で禁止された方法での家電製品などの使用
 ・電源コードの劣化やプラグ部のホコリ
 ・リコールが行なわれたリチウムイオン電池の使用
 ・誤った方法での電池の保管
 ・暖房器具と布などの接触
 ・ドラム式乾燥機での油の付着した布の乾燥
 ・エアコンへの小動物の進入

電源コードのタップとプラグの間にホコリが付着すると、トラッキング現象が起こり、写真のように発火してしまう

 つまり家電製品による火災の多くは、使用者の知らぬ間に発生している。このような場合でも火災警報器が鳴れば、早急に気がついて対処できるため、在宅していれば大事に至らずに済む。火災警報器の設置は、確実に意味があるものだということがお分かりいただけただろう。

火災警報器の電池が切れるとどうなる?

 火災警報器の本体寿命が10年だと言っても、やはり一般的に多く遭遇するのは、電池切れ。とはいえ、人の生死を左右しかねない機器だけに、黙ってそっと電池が切れることはまずないので、安心してほしい。だが、実際に電池が切れるとどうなるか、ご存知だろうか。

 電池が切れる前になると、本体から「電池切れ警告音」が鳴る。この警告音は2007年ごろの製造分以降で順次、電子音から音声メッセージに変化しているという。電子音の場合「ピッ」という音だが、警告メッセージの場合「電池切れです」という音声が流れる。とはいえ音の鳴り方は、メーカーや製品によってかなりのバラツキがある。鳴り方の例としては、以下のようなものがある。

  ・「ピッ」という警報音を8秒おきに繰り返す
 ・「ピッ」という警報音を100秒おきに繰り返す
 ・「ピッ」という警報音を50秒おきに、10秒おきにライトが点滅する
 ・「ピッ」をいう警報音を50秒おきに、「ピッ 電池切れです」というメッセージを1時間おきに3回繰り返す
 ・「ピッ 電池切れです」というメッセージを3回繰り返した後、40秒おきに「ピッ」が鳴る、という動作を1時間おきに繰り返す

 例えば、あまり在室しない部屋に、電池切れ警告音のみが100秒ごとに鳴る製品があった場合、電池切れに全く気づかない可能性もある。また警告音に気づいたとしても、天井に設置されているために音が反響し、どこで鳴ってるのか分からないといったケースもあるという。

 いずれにせよ「電池切れ警告音」は、電池が本当に切れてしまうと鳴らなくなってしまう。そして「電池切れ警告音」が鳴り続ける期間は、約1週間程度とのこと。警告音に気づいても「何の音だろう?」と思っている間に慣れ、1週間後に鳴らなくなると「うるさくなくなった」とホッとしてしまい、そのままになってしまうというケースさえあるのだという。

 日本火災報知器工業会のページには、各社の主要機種について実際に「電池切れ警告音」「火災警報音」「故障警告音」を視聴できるページがある。また、各社の主要製品について「製品写真」「警報・警告音の説明」「電池の取り外し方法」などを記した一覧をダウンロードできるページもある。

各社主要機種の「電池切れ警告音」「火災警報音」「故障警告音」を視聴できるページ
各社の多くの製品について「製品写真」「警報・警告音の説明」「電池の取り外し方法」などを記した一覧をダウンロードできるページ(写真は丸形の一覧)

 この機会に、ご自宅の火災警報器について

  ・製造メーカー
 ・警報・警告音の音声、鳴り方
 ・電池の取り外し方法

を確認してみてはいかがだろうか。電池切れ警告音はもとより、火災時の警報音を知っておくことは大切だ。

 またダウンロードできる一覧には、電池の交換方法も掲載されている。しかしここで注意したいのは、製品の多くが「本体寿命」も10年程度であること。火災警報器は「いざというとき」ときのための製品なので、たとえ正常に稼働していたとしても、10年の本体寿命を機に交換することを、強くおすすめしたい。

 というのも、全米防火協会(National Fire Protection Association)の「米国の住宅火災における煙探知器(Snoke Alarm In U.S. Home Fires)」という2015年の調査によれば、1970年代後半から火災警報器の設置が義務化されていたアメリカでは、火災警報器義務化前にあたる1977年の住宅火災による死者数が6,000人だったという。これが、設置義務化から30年以上経った2013年は2,470人と半数以下にまで減少。しかしこの2,470人のうち、510人は火災警報器が設置済みの住宅での死亡者だという。

全米防火協会の2015年の調査では、住宅火災死亡者のうち、約20%の住宅には火災警報器が設置してあったという

 つまり火災警報器は、設置していれば大丈夫というわけではなく、正常に稼働して初めてその役割を果たす。普段から点検しておくだけでなく、本体寿命がきたら交換し、いつ起こるか分からない万が一の場合に備えたい。

 日本火災報知器工業会では、火災警報器の本体寿命である10年経過時に、本体交換するメリットなどを説明する「10年たったら、とりカエル。」というページを運営している。ここでは、警告音や警報音を視聴できるほか、火災警報器の使い方などを記したマンガも掲載されている。

日本火災報知器工業会による「10年たったら、とりカエル。」ページ

火災警報器を交換するなら、おすすめは「無線連動型」

 火災警報器の製品寿命を機に交換する場合、どんな点に注意したら良いのだろうか。知っておきたいキーワードは以下とおり。

  ・設置が義務付けられている部屋
 ・感知方式:熱式と煙式
 ・電源方式:電池式とAC式
 ・発報方式:単独型と無線連動型

 どの市区町村であっても、火災警報器の設置が義務付けられている部屋は、寝室・階段。だが、それ以外の台所・居室なども、市区町村によっては設置が義務付けられている。どの部屋がマストなのかは、市区町村ごとの条例で異なるが、これは日本火災報知器工業会のページで簡単に調べられる。とはいえ火災警報器は、もしものときに身の安全を確保するための装置なので、設置義務のない部屋にも取り付けたいところだ。

東京都千代田区で、火災警報器の設置が義務付けられている部屋の例

 感知方式は、火災警報器に搭載されるセンサーの違いで、熱式と煙式は、その名の通り「熱で火災を検知するタイプ」と「煙で火災を検知するタイプ」ということ。熱式の場合はセンサーが約65℃になると警報を発する。煙式の場合は、火災警報器内で発光ダイオードが発した光を受光部が感知するという仕組みで、煙が充満すると受光部に乱反射した光が届く原理を利用している。減光率15%の濃度で警報を発する。

 基本的には、煙式を寝室・階段などに設置する。しかし、台所に煙式を設置すると、調理の煙を検知する可能性があるため、熱式を設置できる場合もあるので、市区町村の条例を確認しよう。

 電源方式のうちAC式は、電池交換の手間のない点がメリット。しかし電池式は、電気工事が必要なく、取り付けしやすいため、採用されることが多い。

 発報方式のうち単独型と無線連動型は、各火災警報器が別々に動作するのか、連携動作するのかの違い。単独型では、例えば台所と寝室の火災警報器は別々に動作しているため、台所で火災があり報知器が警報を発していても、寝室の火災警報器は無反応のままだ。

 これが連動型となると、無線による連携動作をしているため、台所で火災警報器が警報を発すると、寝室の火災警報器も連動して警報を発することとなる。

無線連動型の連動イメージ

 パナソニックが2階建ての住宅を想定して行なった実験によれば、1階で火災が発生した場合、連動型の火災警報器は1階と2階が同時に警報を発したのに対し、それぞれに単独型の火災警報器を設置している時に2階の警報が鳴ったのは、1階の約7分後だったという。

 これは煙が2階に上るまでに時間がかかるためだが、実は7分というのは気温の低い冬の場合で、気温が高い夏には約10分程度もかかるという。空気よりも温度の高い火災の煙は、気温が低く煙との温度差が大きければ早く上昇するが、気温が高いと温度差が少なくなり上昇が遅くなることに起因する。

 住宅が木造だった場合などは、火災発生の10分後に警報が鳴っても、すでに1階へ降りられず逃げ遅れてしまう危険性もある。

パナソニックが行なった実験では、1階の火災時に2階の単独型の警報機が鳴るのは7分後だという

 これらの違いから、基本的には煙式を選択し、配線不要の電池式でできるだけ多くの部屋に設置し、可能ならば単独型ではなく無線連動型を採用するといいだろう。

無線連動型の火災警報器親機、パナソニック「SHK79021P」

岩崎 綾