家電製品ミニレビュー

パナソニック「チャージパッド」

~将来はみんなコレに? 置くだけで充電できる無接点充電セット
by 正藤 慶一
チャージパッドで充電しているところ

 携帯電話などのモバイル機器が外出先でも充電できる便利なグッズといえば、モバイルバッテリー(モバイル電源)だ。あらかじめ充電しておき、バッテリーの電力を携帯電話に供給することで、コンセントに接続しなくても、電池残量が回復する。モバイル機器の普及に伴って、注目を集めているジャンルだ。

 ただ、その「あらかじめ充電」が意外と面倒。モバイルバッテリーの充電には、USBでパソコンやACアダプタにしばらく接続しておく必要があるが、ついつい忘れてしまい、容量がカラっぽのモバイルバッテリーを持っていってしまうこともしばしば。これでは無用の長物だ。

 そんな折、面白い製品がパナソニックから登場した。モバイルバッテリーを専用のパッドの上に置くだけで充電できてしまうという「チャージパッド」シリーズだ。

今回はパッドと大容量モバイルバッテリー、単三/単四の充電ケースの3点を購入した

 このチャージパッドシリーズは、現在のところ4製品が用意されている。まずは、ベースユニットとなる、充電用のパッド「QE-TM101」。この上に乗せるバッテリーユニットとして、容量5,400mAhと2,700mAhのモバイルバッテリー「QE-PL201/QE-PL101」と、単三/単四のニッケル水素電池が充電できる電池ケース「QE-CV201」が用意される。

 今回は、QE-TM101、QE-PL201、QE-CV201の3製品を購入して、使い心地を試してみた。なお、カラーは全製品に白と黒が用意されているが、これまでのモバイルバッテリーではあまり見られなかった黒で統一してみた。



メーカーパナソニック
製品名無接点充電パッド
QE-TM101-K
USB対応モバイル電源パック
QE-PL201-K
単三・単四形ニッケル水素
電池専用充電機能付
キャリングケース
QE-CV201-K
希望小売価格オープンプライス
購入店舗Amazon.co.jp
購入価格4,084円4,980円1,981円


ベースユニットとバッテリーという2段構成。やっぱり三洋電機製?

 まずは、ベースユニットとなる「QE-TM101」から見てみよう。本体サイズは146×170×20mm(幅×奥行き×高さ)で、パッと見は厚めのマウスパッドといった印象だ。本体は250gと軽め。パッドのカバーを表面に貼りつけ、付属の電源コードを接続すれば、後はバッテリーをマット上に載せるだけで、充電が自動的に開始される。充電面積はだいたい140mm四方といったところだ。

“充電台”となるQE-TM101。写真右側のカバーを取り付け、写真左のACアダプタで通電すれば、いつでも充電可能カバーを取り付けたところ。充電用の面積は約140mm四方といったところ
モバイルバッテリー「QW-PL201」のパッケージ内容は、本体(右)とUSB充電用ケーブル(左上)、それと家庭用のコンセントで充電するためのACアダプタ(左下)

 続いて、モバイルバッテリー「QE-PL201」を見てみよう。本体サイズは63×70×24mm(同)で、重量は150g。電源はリチウムイオン電池で、容量は5,400mAhと、モバイルバッテリーの容量としては、かなり大きめだ。

 このQE-PL201については、いろいろ説明するよりも、三洋電機のモバイルバッテリー「eneloop mobile booster(エネループ モバイルブースター。通称モバブー)」とほとんど同じ、と言い切った方が伝わりやすいかもしれない。モバブーの大容量モデル「KBC-L2BS」と比べると、見た目はカラーと社名表記以外、ほとんど同じ。給電する際には、USBで機器と接続し、本体のボタンを押すだけ、というのも同じだ。

 実は、チャージパッドの全製品の取扱説明書には「パナソニック株式会社」という社名の下に、「三洋電機株式会社 エナジーデバイスカンパニー 充電システム事業部」と明記されている。三洋電機は4月よりパナソニックの完全子会社となったが、三洋の充電池技術がこのチャージパッドに活かされているのは間違いない。

 とはいえ、モバブーとは異なっている面もある。まずは容量が、モバブーの大容量タイプの5,000mAhより大きい5,400mAhである点。次は出力で、モバブーは最大1A(アンペア)だったが、QE-PL201では最大1.5Aとなった。また、モバイルバッテリー自体の充電用のコネクタも、モバブーのmini-USBとACアダプタ用の2つが用意されていたが、micro-USB(USB-microB)端子1つに変更された。microUSBを使用するスマートフォンが増えたことに対応するためだろう。付属品のケーブルには、mircoUSB⇔USB、microUSB⇔ACアダプタがそれぞれ1本ずつ付属する。

三洋のモバイルバッテリー「KBC-L2S」(写真下)と比べたところ。基本的なでデザインはまったく同じ従来の“モバブー”からの大きな変更点は、容量が5,000mAhから5,400mAhに増えたこと、充電用の端子がminiUSBからmicroUSBに変更されたところ。スマートフォンユーザーにはうれしい変更だチャージパッドシリーズの説明書には、パナソニックとともに三洋電機の社名も記されていた

 最後は、単三/単四の充電池に使用する「QE-CV201」だが、購入時に単三のニッケル水素電池「充電式EVOLTA(エボルタ)」が2本同梱されている。重量は電池込みでも約80gと軽い。単四をセットする場合には、プラス極にあるアジャスターを倒しておく。なお、説明書には「当社のニッケル水素電池以外は充電しない」との警告があるため、三洋の「eneloop」を使う場合は自己責任になると思われる。

「QE-CV201」には、パナソニックのニッケル水素電池「充電式EVOLTA」の単三型が2本同梱されているケースに入れたところ単四を投入する際には、プラス極のアジャスターをあらかじめ倒しておく。この構造のため、単三と単四の混合の充電はできない
 

青い光が自動で置き場所をサーチ

 説明が長くなったので、そろそろ使ってみよう。モバイルバッテリー「QE-PL201」を、コンセントに接続したパッド「QE-TM101」の上に置いてみる。

 すると、パッド左上に青くて丸い光が出現。この光は、モバイルバッテリーのある位置へ自動でズズーっと移動し、その後、パッド本体の青ランプと、モバイルバッテリーのランプが順番に点灯する。これが、充電が行なわれているという証だ。この充電の一連の流れは、単三/単四充電池用の「QE-CV201」でも同じだ。なお、QE-PL201の場合、充電中のランプの色は電池残量によって変わり、赤が残量約40%以下、オレンジが約40~70%、緑が約70%以上となる。

パッドの上にQE-PL201を載せると、パッド左上に青い光が現れ、QE-PL201の下へと移動、充電がスタートする。QE-PL201をパッドから離すと、青い光は元の左上に戻る

 しかし、なぜパッドの上に置くだけで充電できるのか? それは、電磁誘導で電気を発生する「無接点充電」方式を採用しているからだ。パッド上に現れた青い光の中央部には、送電用のコイルが搭載されており、受電用のコイルが入ったQE-PL201またはQE-CV201の位置を検出し、直下部へと移動。送電コイルと受電コイルの間で電磁誘導が発生することで、充電が行なわれるわけだ。パナソニックでは、この送電コイルが動く仕組みを「ムービングコイル方式」と呼んでいる。

 ちなみにパッドを使ったフル充電時間は、QE-PL201が約7時間、QE-CV201が約3時間(同梱の電池「HHR-3MVS」の場合)となっている。QE-PL201の場合は、ACアダプターで充電した場合と同じなので、「無接点だから充電時間が長い」ということにはならない。

パッドの上に2個置くと、左上に近いほうから充電を開始し、その後、次のバッテリーを充電するバッテリーは裏向きに載せると、パッドが反応しない。恐らく、コイルはバッテリー裏面近くにセットされているのだろう


置いておくだけで充電ができる。“充電し忘れ”の防止に効果

 仕組みは分かったが、では、実際の暮らしの中で使ってみた「無接点充電」の価値はいかほどのものか。これについては、「便利」の一言に尽きる。

 これまでのモバイルバッテリーの場合、外出で疲れた日には、いちいち充電のためにコードを繋げるというのは、たったそれだけのことでも面倒くさい。恥ずかしい話、私はケーブルやら充電器やらをいつもどこかに置き忘れるタチで、あっちでもこっちでもないと探しているうちに、「あーもう充電なんていいや」と諦めて寝てしまう。それで翌日、容量がすっからかんのモバイルバッテリーや電池を持って行ってしまい、外出先で結局新しいものを買ってしまっている。

分かりやすいようテレビの前に置いて使っている。帰宅したら置くだけで充電できるのはとても便利。充電のし忘れが防げる。テレビの電波障害も見られなかった

 それが本製品では、バッグから出してパッドの上にポンと置いておくだけで、次の日には満充電になっている。これはとてもラクだ。パッドは目につきやすいテレビの前に置いているので、迷うこともない。充電の影響でテレビの映像が乱れることも、まったくなかった。

 パッドは常に通電しているため、待機電力が気になるところではあるが、説明書によれば0.6Wと少ない。電源スイッチ付きのタップに繋いで、長期間家を開ける場合はOFFにしておけば、特に問題にはならないだろう。また、充電中はパッドが熱くなるが、直接手を触れても問題ないレベルだし、そもそも置いたままにしておくものなので、直に触れる機会も少ないだろう。

 ちなみに、バッテリー2台の充電にも対応する。2台同時充電というわけではなく、どちらか一方を最初に充電し、それが終わるともう一方を充電する、という順番制になる。充電は長時間になるので、2台同時にできればなお良かったが、ムービングコイルは1つしかないので、これは仕方がないかもしれない。

iPhone3GSに接続して使用しているところ。地図機能を使うと、電池がどんどん減っていくので、モバイルバッテリーは旅行には欠かせない存在だ

 なお、QE-PL201で充電できる機種については、説明書には特に明記されていなかったものの、iPhone3GS、iPad、auのREGZA Phoneなどが充電できた。充電スピードも早いようで、iPhone3GSの場合、5分間の充電で電池残量が6%増えた。従来のモバブーが5分で3%増なので、出力がアップした効果が出ているようだ。ただし、PSP Goの充電はできなかった。

 


モバイル機器自体が充電できればなお便利だが……対応機種の拡大に期待

 というわけで、これまでの充電の面倒さを省いてくれる点で素晴らしい製品なのだが、よくよく考えると「ちょっと物足りないかも……」と思う点が2つほどある。

「Qi規格」に適合していることを示すマーク。チャージパッドは同規格の製品なら何でも充電できるが、そもそもQi規格に対応した製品が現在のところ少ないのは残念

 1つは、充電できる機器のバリエーションが少ないこと。チャージパッドは、パナソニックらが提唱するワイヤレス給電の国際標準規格「Qi(チー)規格」に準拠しているため、同規格の製品なら何でも充電できるのだが、そもそもQi規格に準拠した製品は、日立マクセルがiPhone4用の充電機器を発売している以外は、国内ではほとんど見当たらない。単三充電池が4本充電できるケースや、デジカメの電池パック対応ケースなどがあれば、ストロボなどデジカメ機器の充電に便利なのだが……このあたりは今後種類が増えてくることに期待したい。

 もう1つは、携帯電話やデジカメなど、モバイル機器そのものを置いて充電できるようにできればもっと便利なのに、ということ。モバイルバッテリーはあくまでも補助電源。メインとなるモバイル機器本体に搭載されているバッテリーが充電できたほうがもっと便利になるはずだ。

 ただこれは、チャージパッドだけの問題ではなく、モバイル機器そのものが無接点充電に対応する必要があるため、すぐには解決できない問題だ。いずれは解決されていくだろう。

 モバイルバッテリーや充電池を持ち歩く人には、充電のし忘れの防止に有効な一手であることには間違いない。今は目新しさが先行しているかもしれないが、いつかはこれがスタンダードになりそうな、そんな可能性を感じさせる製品だ。






2011年7月5日 00:00