家電製品レビュー

アップル「AirTag」は、子供の見守りにも現状ベストな選択になる?

子供の見守り用途で使っている、Appleの「AirTag」

幼い子供・高齢者の見守りや、忘れ物防止のためのガジェットには、様々なものがある。

それらを大別すると、位置情報取得と通信にBluetoothを使ったものと、GPS+4Gを使ったものとがある。前者は、近くに連携スマートフォンが必要だがバッテリー寿命が数カ月以上と長い。一方、後者のGPS+4G端末は機器単体で取得した位置情報を連携させたスマートフォンに知らせてくれるのだが、バッテリー寿命が数日~1週間ほどと短い。

筆者の場合は、これらの機器を子供の見守り用途に使ってみたのだが、一長一短があって、なかなか継続利用できずにいた。

そんななか、アップル製のBluetoothタグ「AirTag」が発売された。価格は3,800円。本来の使い方は忘れ物防止タグであり、アップルとしては人の追跡に使うことを想定していないようだが、実際に見守りで使うとどうなるのか気になったので試してみた。

結論からいえば、子供の見守りには非常に有用だと感じている。もちろん(本来の用途である)大切なものを置き忘れたり、自転車や自動車などを盗まれたりするのを防止するのにも良いだろう。

今のところiPhoneユーザーしか使えないのが残念だが、もしユーザーであれば、1つは持っておきたい。

知らない街の人たちが、息子を見守ってくれている

箱を開けてから接続するまでは簡単。まずはiPhoneであればiOSのアップデートを行なう(iOS 14.5以上)。AirTag本体に付いているビニールを抜き取って通電させたら、連携させたいiPhoneなどに近づける。すると、iPhoneが自動で反応してAirTagを「接続」する画面が現れる。

画面に表示された「接続」をタップすると、接続設定が始まる。AirTagの名称を設定したり、iPhoneの「探す」アプリの地図上で、AirTagを指し示すための絵文字も指定できる。以上の設定後に「このAirTagをApple IDに登録」画面で「続ける」を押せば、すべての設定が完了する。

AirTagをiPhoneに近づけると、自動で接続設定画面が表示される。複数のAirTagを連携させた場合でも、アプリで見分けられるように、それぞれのAirTagに名称を付けられる
名称と同じように、アプリの地図で見分けやすいよう、それぞれ絵文字(アイコン)を指定できる

接続後は、大事なものなどに入れたり付けたりする。そしてiPhoneの「探す」アプリを立ち上げ、「持ち物を探す」画面を開くと、先ほど設定した自分のAirTagを示す絵文字が、地図上に表示される。

筆者はAirTagを、小学生の息子のランドセルの中に入れている。子供がどこにいるか心配になる機会はほとんどないが、「もしも」の時のために持たせている。AirTagを持っている息子が、どこにいるか気になったときには、メニューを開き「検出時に通知」をオンにすると良い。

「通知」の「検出時に通知」をオンにしておくと、自分のAirTagが検出された時にプッシュ通知で知らせてくれる。

普段は子供のランドセルの中に入れっぱなしにしている
「探す」アプリを開いたら、画面下部の「持ち物を探す」をタップする。AirTagが直近で検出された場所(住所)と時間が表示される。地図上の絵文字(アイコン)または矢印の場所をタップすると、さらに設定などが行なえる
絵文字(アイコン)などをタップすると、画面下部にメニューが表示される。そのメニューを上に引き上げるようにスクロールさせると、様々な項目が現れる
例えば「検出時に通知」をオンにすると、次回のAirTag検出時に、どこで検出されたかプッシュ通知が届く

息子に持たせたAirTagの「検出時の通知」をオンにしておくと、子供が自宅を出て学校に着くと、プッシュ通知で知らせてくれる。おそらく小学校の先生などの中に、iPhoneユーザーがいるのだろう。なお、「検出時に通知」は、一度検出されると自動でオフになる。

位置表示の精度は、それほど高くない。子供が小学校にいる間はAirTagも小学校内を示すはず。だが「探す」アプリでは、教室から直線距離で30~40mほどの、校外の道路を指している。

子供が小学校から学童クラブに移動すると、またAirTagが検出されることが多い。移動している間にも、iPhoneユーザーとすれ違うこともあるようだ。そして確実に学童クラブにいる間は、学童クラブの建物から40~50mほど離れた道路上を指し示していることが多い(ピッタリと学童クラブの建物を指すこともある)。

小学校でも学童クラブでも、指し示しているズレたポイントが、いつもほとんど同じ場所なので、建物の中にいる時にはこれくらいのズレ具合がデフォルトなのだと考えられる。ちなみに連携させた自分のiPhoneを近づけて検出させると、だいたい正確な位置を示していることが多い。

実際に居る場所(赤矢印)と地図上で示されている場所は、40~50mほどのズレがあることが多い

より正確な位置を知るには、iPhone 11以降である必要がある。それらのiPhoneでは「正確な場所を見つける」機能を搭載し、AirTagまでの距離と方向をアプリに表示してくれるという(筆者はiPhone 7を使用しているので、同機能を使えない)。

超広帯域テクノロジーにより、より正確な場所を見つけられるという

さらに切迫した状況になった場合には「紛失モード」に設定する。すると、ほかのデバイスがAirTagを検知すると、自動でAirTagユーザーへ通知が届くという。さらにiPhoneとAndroidを問わず、NFC対応スマートフォンを紛失モードのAirTagに軽く当てると、AirTagにあらかじめ設定しておいたユーザーの連絡先情報を確認できるとする。例えば、NFC対応のAndroidユーザーがスマートフォンを「紛失中モード」のAirTagに軽く触れさせると、あらかじめAirTagに登録しておいた電話番号などの情報が表示され、連絡が可能になる。

そのほか、メニューにある「サウンドを再生」をタップすると、AirTagから音が流れてくる。例えば、AirTagを財布などに付けておき、近くにあるけれど見つけられないといった時に音を鳴らすと良いだろう。

「経路」は、いま自分がいる(iPhoneがある)場所から、AirTagまでの距離が示されている。「経路」をタップすると「マップ」アプリが開いて、現在位置からAirTagまでの経路を教えてくれる。できれば「探す」アプリ上の地図で、経路を教えてくれたほうがうれしいのだが。

なぜ小さい子供の見守り用途にAirTagを推すか?

登下校を含み、我が家では、まだ子供が1人で街中を歩く機会はない。それでも、最近では自転車に乗れるようになり、週末には子供たちだけで公園で遊ぶ機会も増えてきた。

こうした時に、一般的なBluetoothタグでは、あまり用をなさない。自宅を出た直後から、子供(Bluetoothタグ)が、どこへ行ったのか把握できなくなるからだ。

そこで、GPSタグを持たせておくのも1つの方法だろう。これなら、気になった時に子供の位置をアプリで確認できる。ただし、Bluetoothタグよりもバッテリーの消耗が大きいので、毎日のように充電しておく必要がある。機器自体のバッテリーは数日〜1週間程度はもつ。だが、例えば実際に紛失した時に、充電してから数日が経ってしまっていては、意味がない。そのため、有用性を高めるためには、毎日充電する必要がある。これが非常に面倒。

その点、Bluetoothタグの一種であるAirTagは、本来は見守り用の製品ではないとはいえ、この目的にちょうど良いのだ。

AirTagの優れている点をまとめると下記のとおり。

【AirTagが優れているポイント】

  • 1つ3,800円~と、価格がリーズナブル
  • サイズや重さがBluetoothタグと同様に小さく軽い
  • バッテリー寿命がBluetoothタグと同様に長い(AirTagは1年以上)
  • GPSタグよりは劣るが、位置を特定できる頻度が高い

これまでいくつかの忘れ物防止用のBluetoothタグを使用した。これらは完全に自身の身の回りで使うもの。例えば、ノートパソコンや財布など、普段は手元にあるはずの大事なものに取り付けておき、自分のスマートフォンから離れた場合に「忘れてますよぉ~!」と、アラートを鳴らしてくれる。

そしてBluetoothタグが一旦離れてしまうと、基本は、その大事なものがどこにあるかは、全く分からなくなってしまう。単に自分(のスマートフォン)の位置を中心に、Bluetoothが届く範囲(約10m以内に)あるか、もしくはエリア外に離れてしまったかを、見分けるものだ。

「基本は」としたのは、10m以上離れてしまっても、もし同じ種類のBluetoothタグを使っているユーザー(スマートフォンに同じ対応アプリを起動しているユーザー)がいれば、そのユーザーのアプリを通して、自分のBluetoothタグの位置を掴むことができるBluetoothタグが多いからだ。だが、こうした可能性は宝くじに当たるくらいに低いといわざるを得ない。

一方のAirTagは、ほかのユーザーが、筆者のAirTagの位置を知らせてくれる可能性が非常に高い。

なぜなら、AirTagのユーザーではなくても、最新OSのiPhone(またはネット接続しているiPodやMac)が近づけば、その誰かのiPhoneが筆者のAirTagの位置を知らせてくれるからだ。

最新OS(iOS 14.5以上)が必要な点は、多少のネックになる。だが、昨年だけでも日本国内でのiPhoneの出荷台数は1,500万台を超えているといわれる。単純計算すれば、8人に1人は最新のiPhoneユーザーということ。さらに2015年発売のiPhone 6s以降であれば、AirTag対応のiOS 14.5以上にアップデート可能だ。今後もAirTag対応のiPhoneユーザーが着実に増えていく。

日本人の半数がiPhoneを使っているといわれる現状が続けば、近い将来、息子が(ランドセルを背負ったまま)迷子になった時に、知らない誰か2〜3人とすれ違いさえすれば、筆者が息子のだいたいの位置を把握できるということ。

もちろん海外でもiPhoneユーザーは少なくない。人が多い場所であれば海外でも、AirTagの位置を把握できる可能性は高いはずだ。

なお、アップルによれば「AirTagが持ち主から長時間離れたままになっていると、動いたときに AirTagで音が鳴り始める」とのことだが、今の時点では持たせているAirTagから音が鳴ったケースはないようだ。もし外出先などでAirTagが鳴った場合、近くの人がiPhoneなどを持っていれば、そのAirTagを無効にできるとのこと。

子供の手のひらにAirTagを乗せたところ
通信環境を考えるとおすすめしないが、筆箱に入れても、このサイズ感

子供の見守りだけでなく、様々なものに使いたい

結論としては、いまさらといわれてしまうかもしれないが、非常に素晴らしい製品だ。これでAndroidでも使える仕様にしてくれていれば、これ以上の製品はないだろう。

今回は、子供の見守り用途を中心に書いたが、少し使った今は、自転車用に追加で購入したいと思っている。自転車の盗難は、残念ながらよくあることだ。実際に紛失した後に、被害者がiPhoneユーザーであれば、自転車の位置がすぐに分かる(もちろん、自身で取り返そうなどとは思わないほうが良い)。

もちろん大事なビジネスバッグやスーツケース、自動車やバイクなどにも1つ載せておくと良いだろう。

そうしたことを考えると、我が家だけでも4~5つのAirTagを、揃えたいと思っている。

河原塚 英信