家電製品レビュー

【洗濯機4連続レビュー:2】ラクしたい人もこだわりたい人にも、パナソニック「ななめドラム」

 この春、息子の中学校への進学を機に、洗濯事情が激変し、洗濯機の買い替えを検討し始めた我が家。せっかくなので、ふだん取材や製品発表会で気になっていた洗濯機を試してみたい! と思い、メーカー各社の協力のもと、自宅に実機をお借りして試用させていただいた。

パナソニックのフラッグシップモデル「NA-VX9900」

 2機種目となる今回は、パナソニックが2018年10月に発売した 「ななめドラム洗濯乾燥機 NA-VX9900」。パナソニックのドラム式洗濯乾燥機としてはフラッグシップモデルにあたる。パナソニックのドラム式では、スタイリッシュなデザインの「Cuble」シリーズも魅力的だが、ここはやはり「メーカーが誇る最新・最先端の技術を体験してみるべき」と思って選定。お借りした実機を1カ月ほど自宅で試させてもらった。

ドラム式洗濯乾燥機「NA-VX9900」。デザイン性訴求の「Cuble」シリーズには見劣りするものの、シンプルで好みを選ばないデザインだと思う
メーカー名パナソニック
製品名ななめドラム洗濯乾燥機 NA-VX9900
実売価格278,000円

 というわけで、メーカーから届いた貸出機。デザイン訴求の「Cuble」にはかなわないが、シンプルで主張しすぎず、サニタリー空間にしっくりとなじむデザインで、個人的には十分合格点。お借りした"ノーブルシャンパン"以外にも、"クリスタルホワイト"も用意されており、ダーク調の木目など落ち着いた空間であればそちらがしっくりきそうだ。

 本体寸法は、600×722×1,009mm(幅×奥行き×高さ)。容量は、洗濯・脱水が11kgまで、乾燥が6kgまでと、日本市場におけるフラッグシップモデルのドラム式洗濯機としては、標準的なサイズと容量だ。

容量は洗濯・脱水が11kgまで、乾燥が6kgと各社のフラッグシップ機としては標準的な仕様。ドラム槽が上方向に少し傾いているので洗濯物の出し入れもしやすかった

液体洗剤・柔軟剤自動投入は一度使うと手放せない

 機能面での1番の特徴は、液体洗剤・柔軟剤の自動投入機能だ。2017年にパナソニックが日本で初めてドラム式洗濯機に導入した機能だが、前回レビューした日立のビッグドラム同様に、一度使うと手放せなくなる機能だと今回も実感。

 コースを設定してスタートボタンを押したあとに、洗濯容量に応じた量の洗剤を洗濯機が自動で投入してくれる。洗剤ボトルを毎回出したりしまったりする手間がなくて快適なうえ、常に適量の洗剤を使用するので、洗濯やすすぎの水量も含め、過不足なく最適に洗い上げてくれる安心感もある。手動用の洗剤投入口も別途設けられているので、洗濯物の種類や汚れに応じた使い分けや併用も問題なくできる。

 ちなみに、自動投入タンクの容量は液体洗剤用が約870ml、柔軟剤用が約580ml。メジャーな詰め替え用洗剤の容量はほとんどがカバーできるだろうが、種類によっては全部入りきらないものもあるかもしれない。とはいえ、手動用とともに投入口の位置が手前側にあり、洗剤をセットしやすいところはストレスがなく、個人的に気に入った点だ。

洗剤の自動投入機能用のタンクは左の手前側に。手を伸ばさなくても届く範囲で、手動用の洗剤投入口も手前に集約されているので動線がよい
タンクや手動投入口のトレーは、すべて取り外せてお手入れもしやすい
洗濯機能のメイン画面。ボタンを直接タッチすればよいので直観的、かつ次の画面が表示されるので操作が迷いにくい

豊富なコースを選びやすいタッチパネル

 "泡洗浄"と呼ぶ機能も特徴的だ。"泡生成ボックス"へ通した高濃度の洗剤液を高い水圧で泡立てたうえで衣類に振りかけることで、洗浄力をアップさせる。洗剤は泡状になることで表面に界面活性剤が密集する性質がある。これにより、汚れに接触する面積が広くなり、洗剤を繊維の奥まで浸透させ、汚れを包み込んで浮かび上がらせて洗い落とすという原理だ。この理屈のとおり、確かに標準コースで洗った際にも泡立ちが高いと感じた。

 本製品では、これに温水を組み合わせることで"温水泡洗浄"として、よりキレイに洗い上げることもできる。温度を15℃/30℃/40℃/60℃から選択できる温水洗浄のコースを用意している。その種類は、本製品で新たに追加された「約40 ℃おしゃれ着コース」を含め全部で7コース。おしゃれ着用のコースだけでも30℃/40℃のコースが別に用意されており、正直、どのコースを選ぶか最初は悩むが、マニュアルを取り出さなくても、操作部の液晶タッチパネル画面上で内容を確認できるところが親切だ。

「おまかせ」コースで洗濯。砂で汚れた程度であれば、予洗いなしでも十分キレイに
「温水コース」だけでも、7つのコースを備える充実っぷりだ

 同様に、乾燥機能などもコースが豊富に用意されているが、選びやすいのも高評価だ。風呂水の使用などオプションの機能設定に関しても、柔軟かつ設定方法が直観的でわかりやすい。多様な洗濯ニーズに対応でき、衣類や汚れの種類、目的に応じて、洗い分けができるため、自分なりのこだわりの洗い方があるという人には、このフレキシブルさが使いやすい。

乾燥運転のみのメイン画面。「他のコース」に進むと、こだわりの乾燥機能も選択できる

 操作・表示部は、スマホの画面のような5インチのカラーTFT液晶を備え、この位置も絶妙。正面から見ると、わずかに傾斜が設けられ、画面が見やすく操作がしやすい。画面自体の視野角も広い。細かいところだが、毎日のお洗濯を快適にするためにも重要な要素だ。

 操作手順も、選びたいボタンを直接タッチすると、画面が切り替わって次の操作へ誘導する仕組み。操作を間違えても"戻る"ボタンでひとつ前の画面を表示でき、電源を入れ直したり、一から操作し直さずに済み、ストレスが少ない。ただ1つだけ残念なのは、"戻る"ボタンが画面外に設けられていること。慣れれば問題ないのだが、できれば同じ液晶パネル内にあったほうが、動線よく迷わず操作ができてより快適だろう。

各コースを選択したあとも、水位や風呂水の使用などの機能を毎回カスタマイズして設定可能。各ボタンを押すと詳細な設定画面が表示される仕組みも操作性がよい
まさにスマホが洗濯機にすっぽり収まったかのような操作画面。高精細で視認性も反応もよく、ストレスがない
電源ボタンとスタートボタン、戻る、遠隔は画面外でボタン式。設定・選択時に使用頻度が高い「戻る」ボタンはできれば画面上にあったほうが使いやすいように思う。とはいえ、絶妙な傾斜が設けられた操作部は使いやすい

予約機能でスマホ機能の有用さを実感

 もう1つの目玉の機能と言えるのが、Wi-Fiに接続してスマホアプリ経由でさまざまな機能を利用できること。その1つが遠隔操作だが、本体の"遠隔"ボタンをセットしておけば、外出先からも運転や操作ができる。個人的には、洗濯物を入れてその場でスタートボタンを押すことが多いので、遠隔操作はほとんど使わなかったが、洗剤を投入する必要がないため、自宅の内外を問わず、いつでも洗濯を開始できるのはやはり便利だ。

 スマホ連携で有用さを実感したのは、予約機能だ。筆者は、帰宅時間や予定に合わせて出掛ける前にタイマー運転を設定しておくことが多いが、帰宅時間が変更になった場合にもスマホから変更できる。洗濯物は終わってすぐに干したほうが乾燥時のシワが防げるし、洗濯後に長時間放置したことによる雑菌繁殖の心配もなくなるので、とても助かる機能だ。

 洗濯が終わって一部の洗濯物を取り出してから乾燥運転を行なう場合も、タイマー運転にしておけば、帰宅時には洗濯までの行程が終わっており、すぐに乾燥をスタートできるので家事がとてもはかどる。運転中のステータスをスマートフォンで確認でき、終了時刻が近づいたときや、自動投入タンクの洗剤・柔軟剤が少なくなったり、エラー発生時などにも、スマホにプッシュ通知で案内してくれるので、タイムロスが少なくて済む。特に働く主婦にとっては大いに時短につながる。

Wi-Fi経由でスマホ画面からも遠隔操作が可能。個人的にはほとんど使うことはなかったが、洗剤をセットする必要がないため、使い方やライフスタイル次第で、サニタリールーム以外の場所から運転を開始できるのは重宝するだろう
予約運転機能は、「〇時間後」ではなく、終了時刻を分単位で設定でき、何気に便利と感じた
予約時刻は、スマホアプリによるリモート操作で変更できる。帰宅時間が変わった際に外出先から気軽に変更できるのがとても便利だった
運転状況や進行状況もスマホアプリで確認が可能。洗濯機の前にいなくても、残り時間や終了時間が把握できるので、時間を有効に使える

 洗濯機としての本質機能で、地味に便利だと感じて大いに活用していたのは、"ジェットほぐし"だ。毎回の洗濯時に任意で設定できる機能で、脱水後に10分間送風することで繊維をほぐしてゴワつきを低減してくれる。乾燥後の仕上がりの肌ざわりがよくなるだけでなく、衣類の絡みも軽減してくれるので取り出しの際のストレスが軽減された。

"ジェットほぐし"なしで洗った形状記憶シャツ
"ジェットほぐし"を設定しておくとシワが抑えられ、乾いた後も仕上がりがいい

「プレ洗浄コース」で靴下のニオイが気にならなくなった

 パナソニックの独自のイオン発生技術"ナノイーX"を活用した「プレ洗浄コース」も我が家では活用度が高かった。ナノイーXの力で皮脂汚れの主成分を分解し、落としやすくする予洗いの機能だが、このコースでケアをした洗濯物は、洗い上がりが黄ばみもニオイも確かに薄らいでいると感じた。

 洗濯機で洗っただけでは臭いが取れず、以前は洗濯機で洗う前に酵素系漂白剤で漬け置きをしてから洗っていた靴下もこのコースでケアするようになってからは臭わなくなった。運転時間+2時間ほどかかるが、寝ている間に運転しておけばよいし、毎回でなくても十分効果があった。

 その他、通常の2倍の高濃度の洗剤で長めに洗濯をし、ガンコな泥汚れにも対応する「どろんこコース」や、すすぎの回数・時間を増やし「おまかせコース」の約2倍のすすぎ能力のある「パワフル滝すすぎコース」、時間は長くなるが通常よりも音を抑えて運転する「ナイトコース」など、頻繁に使うわけではないが、あったら便利と思う機能が多い。

"ナノイーX"の運転コース。「プレ洗浄コース」は2時間かかるが、洗っただけでは臭いが取り切れなかった強烈な靴下臭にも効果があった
洗濯コースの一覧。プレ洗浄コースの後におまかせコースで洗濯してくれるコースなど、どれもそれなりに利用頻度が高い実用的なものが厳選されている印象
おまかせコースでは落ちにくい泥跳ね汚れは、通常の2倍の高濃度の洗剤で長めに洗濯する「どろんこコース」を活用。漬け置きはしていないが、まずまずキレイになった

省エネ性が高い乾燥機能

 乾燥機能については、除湿された空気を加熱器で温めて乾いた温風にしてドラム槽に送り込む"ヒートポンプ式"を採用。そのままでも普段着やタオル・靴下などの下着類ならシワを抑えて問題なく乾くが、後方から約4.6m3/分の大風量の風を当てて、ドラム槽内で衣類を大きく動かしながら乾燥する"ふんわりジェット乾燥"機能もオプションで設定できる。ヒートポンプ式はドラム内の熱を再利用する仕組みのため、消費電力を抑えることができ、洗濯乾燥時の定格消費電力量が約890Whと控えめで、それで軽減できる家事の負担の大きさを考えれば電気代もさほど気にならないレベルだ。

 軽い汚れで乾きやすい化繊衣類を洗濯~乾燥まで約60分で終了する「化繊60分コース」も、例えば学校の体操服や給食当番用のエプロンなど替えがない衣類で、急いで洗って乾かしたいケースには、あるとやはり重宝する。「おまかせコース」でも標準運転時間の目安が洗濯時約32分、洗濯~乾燥時約98分と十分早いので試用期間中は1度も使わなかったが、万が一の"保険"として安心感をもたらしてくれる。

"ふんわりジェット乾燥"をオンにして乾燥させた綿のTシャツとジーンズ。ノーアイロンだがこの仕上がり。ふだん着なら十分なレベルだ
左が乾燥機で乾かしたタオル。右は室内干し。乾燥機で乾かしたほうが、パイルが整い、肌ざわりはもちろん吸水性も良好
右が"ふんわりジェット乾燥"をオンにして乾燥させたバスタオル。オフにして乾燥させた左のタオルに比べて、よりふんわりと仕上がる

 およそ1カ月使用して、実感したのは"お手入れ"のしやすさだ。乾燥運転の終了後は、毎回乾燥フィルターにビッシリとホコリが溜まっているが、その除去作業がとても簡単。乾燥フィルターに丈夫で凹凸がなくホコリが絡みにくい微細なステンレス素材を採用しているため、ブラシなどを用いなくても、指先で軽くなでるだけで簡単にはがし取ることができる。周辺部分も凸凹がなくシンプルな構造なのでサッとゴミが取りやすい。

 乾燥フィルターユニット自体が本体の手前側にあり、手を伸ばさずに着脱できるため、毎回のお手入れも億劫に感じなかった。排水フィルターは、乾燥フィルターほどに手入れの必要はなかったが、クシ歯型の形状で、絡んだ糸くずなどをサッと取り除くことができた。

網目に微細なステンレス素材を用いた乾燥フィルター。指先でなでるだけで、付着したホコリが剥がれるように除去できる
洗剤用のタンクや手動投入口と同様に、乾燥フィルターも手前に備え付けられ、メンテナンスがとてもしやすかった
排水糸くずフィルターは、クシ歯型の形状で絡んだゴミが取り除きやすい

幅広いニーズに応えてくれる一台

 およそ1カ月間の試用で実感した本製品のよさは、バランスよく必要な機能やスペックを見極め、取捨選択された点だ。すべての機能が最高峰というわけではないが、搭載されている機能がどれも"使える"と感じる機能に厳選されている。

 家族構成やライフスタイルによると思うが、「あまり使わないかも」「手間がめんどうでそのうち使わなくなるかも」と言うような機能が少ないように思う。ユーザーが使いこなせる範囲で必要な機能が選ばれており、機能は豊富だが、多機能過ぎるということがない印象。

 「おまかせコース」ですべて全自動でも十分なレベルだが、カスタマイズ設定も融通が利くため、こだわりのお洗濯や、独自の洗い方にも柔軟に対応でき、手軽にお洗濯をしたい人から、洗濯を極めたい"玄人"まで幅広いニーズに応えてくれる一台だと思う。

自分流に細かく設定し直したり、こだわりの運転をしたい場合には「わたし流プラス」というコースも用意されている
初期設定のカスタマイズは、マニュアル参照や特殊な設定を経ずに、脱水の回転数といった細かい設定も気軽に行なえる

神野 恵美