家電は共働き家庭を救うか!?

無印を愛しすぎる夫と学食のない高校に通う息子、しわ寄せを受けるのは私

息子が中1のときに初めて結婚した著者が、家電偏差値35ながらに、時短家電を使いこなす日々を綴ったコーナーです

 突然ですが、数年前に全国仲人連合会がまとめた「40代の未婚の女性が結婚できる確率は1%」というレポートをご存知でしょうか。私は42歳のとき、6歳年下の未婚男性と結婚しました。

 28歳で未婚の母となり、「一度も結婚したことのない子持ちの40代」だった私は、婚活市場では絶望的なプロフ持ち主。その私が結婚したとき、周囲からは「9回裏満塁逆転ホームラン」とか、「希望の星」など言いたい放題言われました。その友人の一人が、この仲人連合会のレポートを引き合いに出し、「高齢独身1%の勝ち組に入りましたね」と言ってきたのです。余計なお世話だわ。

【脚注】仲人連合会のデータ
http://www.ii-omiai.com/mikon.html

40代にして結婚、修行のような「他者との共生」

 しかし結婚によって私は本当に「勝ち組」に入ったのか。実際には、この3年間、禅僧のように自問自答を繰り返しています。いまだ悟りは開けません。

 未婚で出産し、子どもは既に中学生(この原稿を書いている現在は高校生)。どうにか経済的に自活し、ライフスタイルが確立していた40女にとって、他の個体との共生は、修行以外の何物でもありませんでした。

 ここでまずもって言いたいのは、夫が大の無印良品好きだということです。大事なことなので二回言います。夫は無印良品が大好きダー! 無印のトイレブラシを購入したけど、未使用のまま自宅に保管し、引っ越し先にも持って行くほどの無印愛は、常軌を逸していると言わざるを得ません。

 中国で出会った私たちは、3年前に帰国するタイミングで同居・結婚することになりました。

 私は夫に、「新生活はお金がかかるから、家電はとりあえず(中国製の)ハイアールでいいよ」と言ったのですが、夫は「せっかく日本で暮らすのだから(※夫は日本人です)、大好きな日本のブランドに囲まれて暮らしたい」と、無印に直行しました。そして無印で売っているものは全て、無印でそろえました。ダイニングテーブル、扇風機、オーブンレンジ、洗濯機、冷蔵庫などなど。

帰国後の新居への引っ越し。組み立て前の無印の家具が大量に送られてきて、数日格闘する羽目に。写真に写っている家電も無印

夫婦の亀裂の引き金になった無印事件

 そして事件は数週間後に起きました。

 買い物ついでに家電量販店に何気なく入った私は、自宅にある無印の冷蔵庫と非常にデザインが似ているハイアールの商品を発見したのです。パンフを手に取り、スマホで調べたところ、製造元は何と、夫が否定したハイアールやんけーーー! そう無印は、ハイアールが製造した冷蔵庫を、無印というブランドで付加価値をつけ、数万円高く販売しているのです。

 その夜、私は鬼の首を取ったように夫をいじりました。「お前は無印というブランドに数万円つぎ込んだのだ」「ハイアールは嫌だけど、ハイアールが作った無印ブランドの冷蔵庫ならなぜいいのか、150字以内で述べよ」

 夫は笑うと思いきや、烈火のごとく怒りました。愛する無印と、無印を選んだ自分自身の両方を否定されたことは、彼にとって屈辱以外の何物でもなかったのです。

 その日を機に、私たちのカルチャーの違い、価値観の違いによる亀裂は、日々抜き差しならぬものとなっていきました。

3人暮らしになって一気にピンチに

 お互いあと10歳若ければ、「無印離婚(ハイアール離婚とも言う)」に至っていたかもしれません。そういう意味では、年を取って喧嘩する体力もなくなっていたことが、私たちの結婚生活を長持ちさせているとも言えます。

 しかし、無印尽くしの生活が、徐々に私のメンタルをむしばんでいるのも、疑いのない事実なのです。

 我が家はガチの共働き世帯で、家計は基本的に別々。新婚旅行も含め、ほぼ全ての出費を折半しています。その分、家事も手分けしているのですが、得意不得意があるため、料理は私が担当し、食器洗いや掃除は夫。洗濯は在宅業務が多い私が平日にやり、週末は夫という分担になっていました。

 それで我が家は何とか回っていたわけです。夫婦2人暮らしだった今年春までは……。

 今年4月、祖父母宅から九州の中学に通っていた息子が、東京の高校に進学することとなり、結婚後初めて、家族3人の生活が始まりました。

 前述したとおり、私は長らくシングルマザーだったので、息子との2人暮らしが長かったし、夫との2人暮らしも2年半が過ぎ、徐々に慣れつつありました。

 しかし親子3人の生活は、全く未知の領域であり、想像以上に大変だったのです。

高校生の息子も当然のごとく動員しているのだが、家事が全く追い付かない

家事に追いつめられていたとき、友人から受けた助言

 息子の高校は学食がないため、毎日弁当が必要になりました。

 さらに息子は野球部に入ったため、毎日泥のついたユニフォームを持ち帰るようになりました。家族の人数は1.5倍にしかならなかったのに、洗濯ものは倍以上に増えたのです。土日は練習試合があり、平日と変わらぬ洗濯と弁当のダブルパンチで。

泥だらけのユニフォームの洗濯も重労働なのだが、9月の3連休はゼッケン付けの負担が加算された。喜ばしいことではあるのだが、地味に時間を食う

 さらに夫が、何を覚醒したのか4月から夜間の大学院に通い始めました。平日も土日も図書館にこもって午後11時すぎまで帰宅しなくなり、家事の面ではほぼ戦力外に。そればかりか、原田龍二の車中不倫のニュースを見た息子が夫に、「(勉強してると言って)本当は浮気してんじゃないの?」と突っ込んだおかげで、夫が潔白証明のためか、どんなに遅く帰宅しても、家で夕食を食べるようになってしまいました。

 そして今年は、なぜか私の出張も多い。息子は比較的手伝いをしてくれるのですが、部活の大変さに加え、1学期の成績が目が点になるほど悪く、家事をさせている場合ではなくなりました。もはや全員が満身創痍の野戦病院状態です。

 1学期は、親が九州から3度手伝いに来てくれましたが、高齢の両親の手を借りるにも限度があります。八方ふさがりで家事代行を使ってみようと考えたときに、友人にふと言われたのが、「とりあえず、家電をアップグレードしなよ」という言葉でした。

シンプル家電より家事をシンプルにしてくれる家電

 これまで、私は家電へのこだわりが一切ありませんでした。海外も含めて引っ越しが多い生活だったので、家具・家電はその時その時で買い替えるスタイルが定着し、とりあえず安いものを選んでいました。

 だから無印を愛しすぎる夫が、家のものを無印で固めたときも、「まー、夫が金出すなら好きな物買えばいいか」とお任せしていたのですが、高校生の息子が我が家に合流したのが決め手。無印のような必要最低限の機能しかついていないシンプル家電(特に洗濯機!)は、共働き&野球部の子供がいる家庭が抱える家事タスクを支えきれないと、実感しつつあったのです。

 息子の弁当作り、大量の洗濯は今の我が家の設備では効率化に限界があります。夫はこれまで週末の午前に掃除をしていたのですが、平日のプチ片付けが追い付かないため、だんだん回らなくなってきています。

作り置きでしのいでいる弁当も、しんどい。子どもには弁当作ってるのに、自分は出前を取ることもあり、実は非効率

 しかしこれまで家電を深く吟味したことがなかった私と、無印で思考停止している夫は、友達に言われるまで「家電で家事を軽減する」という解決策が全く思いつかなかったのです。

 言われてみれば、我が家には無印の豆からひけるコーヒーメーカーより、乾燥機つきの洗濯機が切実に必要だ。

 そう、我が家に本当に必要なのは、シンプルなデザインのライフスタイル家電ではなく、日々のタスクを直接的にシンプルにしてくれる時短家電に違いない。

 別の友人には「共働きなのに食洗機を置かないのは、洗濯板で洗濯してるのと同じことですよ」とまで言われ、家電量販店に食洗機を見に行ったのですが、家電 Watchの編集長には、「でも、食洗機を買ったけど使わないっていう家庭も半分くらいあるんですよ」と嫌なデータを提示されました。

 そうなんですよね~。私もこれまで、奮発して買ったけどすぐに使わなくなった経験が結構あります。だからみんな、買うに買えないんですよね。っと再び悩んでいると、編集長がささやいてきました。

 「お試ししてみます?」
 「いいんですか?」
 「レビュー記事を書いてくれれば」

 ああ、ただより高い物はないと知っているのに、また引っかかってしまった。学習しない45歳。

 しかし増税を前に、「あの家電欲しいけど、使わなくなるのが怖くて買えない」といった声が周囲からちらほらあがっているのも事実。じゃあこの私が、「家電は共働き家庭を救うのか」検証、やってやろうじゃありませんか。ほんとに時短になるなら、原稿一本分の時間を捻出するのはたやすい、に違いない。

 ちょいちょい愚痴をはさむことになるかとは思いますが、次回から時短家電の実力を、私目線でレポートさせていただきます。

浦上 早苗

新聞記者歴12年。2010年に小1の息子を連れ中国に博士留学。その後現地での大学教員を経て2016年に帰国。息子が中1のときに初めて結婚し、シングルマザー生活に終止符を打つ。フリーランスで経済ジャーナリスト、翻訳、MBA教員など。公私ともに何でも一人でやってきたので、効率化とマルチタスクは得意分野ですが、家電偏差値は35くらい。取扱説明書を読む時間ももったいないので、直感で動かせる電気製品、デバイスであるかは購入の重要な決め手。 息子に、「公式戦のユニフォームと練習用のズボンとはだしで超ダサい」と言われた写真。