藤本健のソーラーリポート

消費税増税だけではない! 太陽光発電システムを導入するなら今すぐアクションを

「藤本健のソーラーリポート」は、再生可能エネルギーとして注目されている太陽光発電・ソーラーエネルギーの業界動向を、“ソーラーマニア”のライター・藤本健氏が追っていく連載記事です(編集部)
太陽光発電システムの導入を考えているなら、今すぐにでもアクションを起こした方が良い

 「いつか太陽光発電システムを自宅の屋根につけようかな……」と考えている人も少なくないと思うが、なんとなく考えている人も、今改めて急いで検討するほうがいいかもしれない。というのも、来年4月に入ると、現在と事情が大きく変わってしまうからだ。

 具体的には、売電単価が大きく下がり、補助金がなくなり、しかも消費税が上がるため、年度内に導入するのが圧倒的に得だからだ。ただ、設置工事も必要なため、一般の家電製品のように、お店にいけば、すぐに買えるわけではない。やはり実質的に数カ月間の準備期間がいるため、今がラストチャンスともいえる状況なのだ。そこで、改めて現状を整理するとともに、導入に際して必要なことを考えてみよう。

太陽光発電システムを導入するなら、売電価格をチェック

 大型家電でも、クルマでも、さらには住宅までも、現在、売れ行きが非常によくなっており、ものによっては品不足気味になっているという。それは、2014年4月から消費税が8%に上がるので、どうせ買うなら5%のうちに買っておこうという心理から売れ行きが伸びているのだ。

 太陽光発電システムも、やはり100~200万円近くする製品だけに、同様のことがいえる。100万円だと考えると消費税が5万円から8万円へと3万円も上がるから、これは大きな違いといえるが、今年度に買うか来年度以降に買うかの違いは、たった3万円どころの違いではないのだ。

 まず、大きく変わることが予想されるのが、売電価格である。太陽光発電を住宅に設置して発電した場合、発電した電気をまず自宅で利用し、余った電気を電力会社に売電することができる。そして今年度設置した人の売電単価は38円となっている。急に38円といわれてもピンと来ないかもしれないが、買う電気代がいくらくらいなのかと比較してみると、少し見えてくるだろう。
東京電力における従量電灯Bの料金表

最初の120kWhまで(第1段階料金)18円89銭(1kWh)
120kWhをこえ300kWhまで(第2段階料金)25円19銭(1kWh)
300kWh以上(第3段階料金)29円10銭(1kWh)

 これは東京電力の「従量電灯B」という、ほとんどの家庭が契約している現在の電気料金。電気を使えば使うほど電気代が上がる3段階方式になっているわけだが、第2段階の25.19円というのと比較しても、かなり高く買ってもらえることがわかるだろう。

 昼間は会社や学校に出かけているので、留守がちであるという家庭なら、発電した電気のほとんどを売電することができるため、かなり有利なのだ。最近設置している人の場合、4kW前後のシステムとなっており、年間発電量は4,000kWh前後。仮にその7割を売電することができたとすると、単純計算で

   4,000×0.7×38=106,400円

 が収入として入ってくる計算だ。もちろん、使った3割だって消えてしまうわけではない。本来なら電力会社から購入していた電気代を減らすことが可能。比較的電気を多く消費する家庭であれば第3段階に突入していることが考えられるが、その場合なら

   4,000×0.3×29.1=34,920円

合計すると

   106,400+34,920=141,320円

 ものリターンがあるということになる。これが10年間継続することを考えれば、140万円もの収益に繋がるわけで、投資した金額もそのくらいで回収できそうだ。

 ここでお気づきの方も多いと思うが、この売電単価の38円は、10年間の継続が約束されている。そして昨年度および一昨年度はそれよりも高い42円、その前は48円とさらに有利な単価が設定されており、それぞれスタートから10年間、この固定単価で売電することができるようになっているのだ。そこで気になるのは2014年度の売電単価がいくらになるのか、ということ。これは4月にならないと、発表されないので分からないが、これまでの経緯から考えると、38円よりも下がることが見込まれている。

 48円、42円、38円と来たことを考えると34円とか32円といった金額が想定されるが、新聞などの報道を見る限り、経済産業省の考え方は、これまでの太陽光重視の姿勢から自然エネルギーにおいては風力や地熱に軸足を移すようなので、売電単価はさらに下がることも考えられる。

 そうなると、先ほどの計算結果は大きく変わってしまい、太陽光発電を導入する経済的メリットはほとんどなくなってしまいそうだ。もちろん、太陽光発電は、CO2排出の抑制やエネルギー不足への貢献、ライフラインのストップなどの非常時への対応など、さまざまなメリットがあるのだから、元をとることだけが目的ではないが、導入を検討している人にとって経済的負担が大きくなることは、間違いないだろう。

国の補助金制度は2013年度で終了!

 そうしたことにさらに追い討ちをかけるのが補助金の行方だ。現在、住宅用の太陽光発電を導入する場合、表2のように1kWあたりのシステム価格が50万円以下なら1kWあたり15,000円、41万円以下なら1kWあたり20,000円の補助金が国から出る。現状、そのほとんどは41万円以下で購入できていると思われるため、4kWのシステムを導入すれば80,000円の補助金が出るという計算だ。地域によっては、この国からの補助金に加え、地方自治体からも補助金が出るケースもある。

1kWあたりのシステム価格1kWあたりの補助金額
50万円以下15,000円
41万円以下20,000円

 ただし、この補助金制度は2009年度より5年間の時限措置としてスタートしたものであり、2013年度をもって終了する。これまで毎年少しずつ減額されてきたが、来年度も続くのではという期待もあったことは事実。しかし経済産業省は来年度の補助金の予算を2014年度の概算要求としては提出していないことが明らかになっているため、補助金制度そのものが廃止されるのはほぼ確実だ。

 もっとも2013年度中であれば、誰でも確実にもらえるというわけではないらしい。補助金の受付そのものは2014年3月31日までとなっているが、その期間中であっても予算残額を超過することが明らかになった場合にはその時点で終了する。毎年1~3月にかけての駆け込み需要が発生してきたわけだが、今年はそれに拍車がかかる可能性も高く、早く終了してしまう可能性が濃厚なのだ。

 こうした状況を考えると、やはり太陽光発電システムを自宅に設置することを考えているのであれば、急いで行動したほうがいいだろう。普通に家電を買うのであれば、3月31日に店に行き、購入すればいいわけだが、太陽光発電の場合そうもいかない。

 この連載で何度も紹介してきたが、導入するにあたっては、まずは何社かに見積もりをとり、その中でいい業者を選定することからスタートする。詳細な見積もりをとる過程において、実際に屋根を見てもらったり、まわりの環境を確認したうえで、どの位置に、どんな太陽電池パネルを載せるかの設計を行なう。その後、1日かけて屋根に設置する工程を踏むため、やはり最低でも1カ月はかかる買い物となるのだ。いくら時間がないからといって、いい加減な業者に頼むと、それこそ大きなトラブルが発生しかねず、実際に問題が起きているケースも少なくない。ここは慎重に進めたいところだ。

太陽光発電システムの場合、1日がかりの工事が必要だ。年度内に設置を完了させたいなら早めの行動がカギだ

検討を考えているならすぐに見積もりをとった方がいい

写真は、パナソニックの屋根とパネルが一体になったタイプ。従来より軽量で、効率よく設置できるという

 さらに、ここに来て問題となってきているのが品不足と、工事ラッシュによる人不足。世界的にみると、ヨーロッパのメガソーラーの後退といった事情もあり、モノは過剰気味というが、国内においては一時的な品不足になっている。来年度から住宅用だけでなく産業用においても太陽光発電による売電価格が大幅に下がることが見込まれるため、ラストチャンスとばかりに設置が相次いでいるからだ。モノがなければ、当然工期も伸びてしまい今年度いっぱいという日程に間に合わない可能性も出てきているわけ。

 もちろん、すべてのメーカー、すべての業者が品不足というわけでもないらしい。メーカーによっては十分な在庫を持っていると公言しているところもあるので、ここは騙されないように気を付ける必要もある。

 いずれにせよ、年度内に設置するのであれば、急ぐ必要はある。もちろん来年度以降、システム価格が大幅に下がって、収支において今年度と大差ないということになる可能性も否定はできない。しかし、ほぼ確実に利益が出せるというようなことは、今年度がラストチャンスになる可能性が高いので、興味のある方は、まず見積もりを取るというところから始めてみてはいかがだろうか?

藤本 健