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松下、世界最高の環境性能を誇る家庭用燃料電池システム


燃料電池コージェネレーションシステムの実物。左が燃料電池ユニット、右が貯湯ユニット
 松下電器産業株式会社 松下ホームアプライアンス社は、最高で39%(LHV)、500W~1kWの領域で38%(LHV)以上という世界最高の発電効率を持ち、4万時間の運転と4千回の起動停止の耐久性を持ち耐用年数10年以上を想定した、家庭用燃料電池コージェネレーションシステムを開発したと発表した。

 同社は、1999年より燃料電池の本格的な開発をスタートさせ、2005年より開始された大規模実証実験にも参加しており(1号機は首相公邸に設置)、今回発表されたシステムも当初は大規模実証機として出荷される予定だが、2009年からは一般販売も想定している。またそれに向け、草津に事業拠点となる新工場を整備、2008年6月より量産を開始するとしている。


松下電器産業株式会社 松下ホームアプライアンス社 副社長 石王治之氏
 今回発表された燃料電池コージェネレーションシステムの原理は、都市ガス(13A)と水から水素を取り出し、そこで取り出した水素と空気中の酸素を反応させて電気と熱を発生させる(水の電気分解の逆の反応)というもの。この反応で発生した電気は家庭で利用、熱は排熱回収装置で回収し、お湯を沸かすことに利用される。

 また、これまで大規模実証実験用として出荷されていた従来機と比較して、ガスと水から水素を取り出す「燃料処理器」と呼ばれる装置の効率化を高めるとともに、水素と酸素から電気と熱を発生させる「スタック」と呼ばれる発電装置の耐久性の向上、さらにスタックで発生した直流電気を交流電気に変換する「インバータ」の損失低減などを実現し、「実用商品レベルにまで信頼性と省エネ性を高めた」(松下電器産業株式会社 松下ホームアプライアンス社 副社長 石王治之氏)としている。


松下の燃料電池への取り組みは1999年に始まり、2005年からの大規模実証実験にも参画している
これまでの大規模実証実験の結果から、燃料電池が一次エネルギー削減とCO2削減に効果があることを実証
家庭用燃料電池コージェネレーションシステムの概要。都市ガスと水から水素を取り出し、水の電気分解の逆の反応で発電と発熱を行なう

スタックの実物。この装置で発電と発熱が行なわれる
 まず、システムの心臓部となるスタックについて、「電解質膜の破損」、「触媒の能力低下」、「生成水のつまり」という3つの性能劣化メカニズムを解明し、スタックの材料、構成、運転方法を改善することによって出力電圧の低下を長期にわたって抑制することに成功。

 また、水素を取り出す燃料処理器では、分離型であった従来までの構成による影響を検証するとともに、熱・流体・反応シミュレーションを駆使することで、一体型構成を実現。これによって、燃料(都市ガス)と空気、水の比率変動の幅が従来比1.7倍となる範囲で安定した水素の生成を可能となった。


「スタック」、「燃料処理器」、「インバータ」の効率を高め、システム全体の信頼性と省エネ性を向上
スタックの性能劣化メカニズムを解明し、材料・構成・運転方法を改善することで、長期間の出力低下抑制を実現

燃料処理機は一体型構成とし、従来比1.7倍の範囲で安定した水素の生成を実現
燃料処理機の実物。従来は分離型構成だったものを一体型構成にして効率化を高めた

 インバータでは、白物家電向けインバータで培った電力制御技術を応用し、全域でのソフトスイッチングを実現することで、効率化を大幅に高め損失を低減。これらによって、750W時で39%(LHV)という、家庭用燃料電池システムとして世界最高の発電効率を実現するとともに、発電時の一次エネルギー削減率は22%となり、従来の大規模実証器と比較して41%の環境性能向上も実現。ちなみに、コージェネレーションシステム全体では、100%出力時に発電効率が38%(LHV)、熱回収効率が55%(LHV)となり、トータル93%(LHV)という高い総合効率を実現している。

 実際にこの燃料電池コージェネレーションシステムを利用した場合、年間で一次エネルギーを3,262kWh、CO2排出量を330kg(全電源による試算)それぞれ削減できるとしている。この場合のCO2削減率は12%となる。ちなみに、火力発電のみとの比較では、CO2排出量は1,175kg削減となり、CO2削減率は37%に達する。


全域でのソフトスイッチングを実現したインバータを採用することで損失を低減
実住宅での発電出力の主体となる500W~1kWの範囲で38%(LHV)以上、最高39%(LHV)という世界最高の効率を実現
一次エネルギー削減率22%、CO2削減率12%(火力発電比37%)を実現する

 さらに、耐久性を向上させるさまざまな加速実験を行ない、10年以上の耐用年数を想定した、運転時間4万時間、起動停止4千回の耐久性も実現している。

 これら基本性能の向上だけでなく、設置性についても改善が実現されている。本体の奥行きが従来より37cm短くなっており、設置スペースを約30%削減し設置スペースの制約を低減している。また、本体重量も125kgと従来比約30%の軽量化を実現することで、設置工事もより容易に行なえるようになった。さらに、”際立ち”と”調和”というコンセプトのもと、校倉造りをイメージしたデザインを採用することで、日本の伝統的建築物の水平美を表現するとともに、本体カラーにウォームシルバーを採用することで、現代建築の外壁との調和と先進性を表現。これらによって、実用商品性も向上したとしている。


運転時間4万時間、起動停止4千回を達成し、10年以上の耐用年数を実現している
重量、設置面積とも従来比約30%減を実現
“際立ち”と“協調”をコンセプトに本体をデザイン

燃料電池ユニットの内部構造
2008年6月より草津の新工場で量産を開始し、2010年で数千台、2015年で数万台の事業規模を想定

 現在では、家庭用燃料電池システムはまだ実証実験段階ではあるが、同社では2009年より一般販売することを目標として事業に取り組んでおり、2010年で数千台、2015年で数万台の事業規模を想定。一般販売時の価格は未定だが、「まずは100万円以下をターゲットとし、将来的(2015年くらいを目安)には60万円以下を実現したい」としている。





URL
  松下電器産業株式会社
  http://panasonic.co.jp/index3.html
  ニュースリリース
  http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn080414-1/jn080414-1.html?ref=news

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( 平澤 寿康 )
2008/04/15 00:08

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